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9 食事は獲りたての魚

 大漁だった。

 九匹も魚を獲ったサリアには労いの言葉を惜しみなく贈った。


 そしてそのうち六匹は俺が食った。

 本人が三匹でいいと言ったからで、決して俺が横取りしたわけじゃない。


 さすがに獲りたての魚は美味かった。

 一瞬で平らげてしまった。


「足りなかったらまだ獲ってくるけど、どうする?」

「サリアは足りたのか?」

「うん。もうお腹いっぱい」


 意外だった。

 あれだけ動き回るのだから、沢山食べないと帳尻が合わないような気がする。


「俺ももうこれ以上は食えない。ごちそうさま」

「わたしもごちそうさま」


 そう言う顔は確かに満足そうで、嘘をついているわけではなさそうだ。


 確かに、女の子なら三匹も食べれば満腹になる大きさではあるけれど。

 ま、本人が満腹だと言うのだからそうなんだろう。


『さあて、食い終わったんなら、片付けてとっとと先に進もうぜ』


 俺たちの食事が終わるのを待っていたツァルが急かす。  


「あ、じゃあ、水を汲んでくるね」


 言うが早いか、サリアはさっさと水袋を手に腰を上げる。


「ああ、頼む」


 出遅れた感のある俺は、またしてもサリアに任せることになった。   


『おんぶに抱っこだな、おい』

「本人がやるって言ってるんだから任せておけばいいだろ」

『まあな。で、あの子はいったい何者だと思う?』


 ツァルの声が一段低くなる。


 赤い影が俺の視界を横切った。

 サリアは川辺に屈みこんでいる。 


「ルークから買い出しにきた十六歳の女の子、なんだろ?」

『信じてるわけじゃないだろうな?』


「さっきも言っただろ。俺はサリアが何者かなんてどうでもいいんだ。おまえがサリアを連れて行くって決めて、俺はそれに従ってるだけだ」

『おまえはもうちょっと危機感を持ったほうがいいんじゃないのか』


「どんな危機感だよ」

『……命の危機、とか?』


「今まさに、サリアのおかげで飢え死にという命の危機から脱したところだけど?」

『そうなんだよな。あいつからは悪意が感じられない。でも、普通の女の子じゃないのは確かだろうが』


「精霊を見るのが普通じゃないって言うなら、そうなんだろうな」


 結局のところ、ツァルにわからないものが俺にわかるわけがない。


 俺には圧倒的に知識が不足しているし(大半を記憶と共に失った)、他人のことをあれやこれやと詮索するのは好きじゃない。


 というか、正直他人にはあまり関わりたくない。


 サリアが立ち上がるのが見えた。

 白金色の髪を揺らしながら、こちらに駆けてくる。


『そうじゃない。あの体力のほうだ』

「じゃあ、置いていくか?」


 ぐっ、とツァルが詰まる。


「ま、考えてても始まらないだろ。どうしても気になるならおまえが本人に直接訊けばいい。さあ、後片付けをして、出発だ」


 会話を切り上げて、腰を上げる。


「お待たせー」


 サリアは笑顔で水をいっぱいに入れた皮袋をあの細腕で掲げてみせる。

 俺は苦笑を浮かべながら、サリアと協力して片付けを始めた。

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