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摂政戦記 0081話 他国の動向①  

【筆者からの一言】


チョビ髭おじさんのお話です。

1941年12月13日 『ドイツ 東プロイセン 狼の(ヴォルフスシャンツェ)


 ドイツ第三帝国…… 

 ポーランド、ノルウェー、デンマーク、オランダ、ベルギー、北フランスを支配し、今やソ連西部にまで支配圏を広げている陸の大国。

 日独伊三国同盟において陸では最強の呼び声も高い国。


 閑院宮摂政はともかく、日本が最も頼りにしている同盟国でもある。

 日本がアメリカに対し開戦すると、12月11日にはアメリカに宣戦布告をして同盟国として共に戦う姿勢を見せた国。


 そのドイツにおいてヒットラー総統が定例の会議を行っていた。


「つまり、我が同盟国の日本は強力な特殊爆弾を使用した可能性が高いと言うのかね?」


 ヒットラー総統は会議にて、アメリカの港湾大都市壊滅は、日本が強力な特殊兵器を使用した為らしいとの報告を受けていた。


「はい総統閣下。恐らくは原子爆弾なる強力な兵器に間違いはなく、これを我が方も開発してはおりますが、未だに完成してはおりません」


 フリッツ・トート軍需相が言葉を選びながら慎重に答えた。


「我が国ですらまだ完成させていない物を日本が先駆けて造ったというのかね?」


「はい、恐らくは……」


「東洋の友人もやるではないか諸君。イタリアよりよほど役に立つのではないかな?」


 ヒットラー総統のその言葉に会議に参加していた者達から小さな笑い声がわきおこる。


 鷹揚なところを見せてはいるが、実際にはヒットラー総統の心中は穏やかではない。

 それどころか荒れ狂っていた。


 あり得ない!


 ドイツでさえ開発中の物を東の果ての有色人種が完成させるなど、あり得ない!


 我がドイツが、世界で最も優秀なゲルマン民族が、他民族に遅れをとる事など、あり得ない!


 あり得ないのだ!! そんな事はあってはならんのだ!!


 だが、表向きはその不快感を表には出さず、一国の支配者たる貫禄と寛容さを皆に示そうとするヒットラー総統だった。

 何せ一週間程前にモスクワ攻略の失敗から大鉈を振るい将軍達三十余名を更迭したばかりで、軍部内の動揺が著しい。

 ここで感情の趣くままに怒りを爆発させて、主だった者達を委縮させては悪影響が各方面に出かねないと配慮したのだ。

 

「頼もしい同盟国ではないか。これでもはや勝ちは決まったな、諸君」


 そう言うヒットラー総統の言葉に同意する意見があちらこちらであがる。


「これでイギリスも大人しくなるでしょう」

「日本を同盟に引き入れて正解でしたな。流石は総統閣下、ご慧眼です」

「連合国の敗北はもうすぐですな」


 モスクワ攻略が失敗に終わったばかりなだけに、日本の大戦への参加は明るい話題となった。


 アメリカが参戦する事になりはしたが、これまでのアメリカのやり方を見ていれば、何れは参戦してきてもおかしくはないし、何より日本がアメリカを押さえてくれる。


 それにOKW(国防軍最高司令部)国防課の計算では、日本が参戦すれば、枢軸同盟の戦力はアメリカ、イギリス、ソ連よりも優勢になるとの推計が出ていた。


「レーダー元帥、対アメリカ戦の準備はどうなっているかね?」


 ヒットラー総統が海軍総司令官のエーリッヒ・ヨハン・アルベルト・レーダー元帥に問い掛けた。

 数日前の会議でヒットラー総統がアメリカへの宣戦布告を行う事を決定した時、レーダー元帥は直ぐにもUボートによる対アメリカ攻勢作戦を行いたいと許可を求め了承されていた。

 その事について尋ねているのだ。


「着々と準備は進んでおります、あと数日のうちには第一陣が出撃する予定です」


「うむ。いいだろう。期待しているぞ」


「はっ。必ずやご期待に応えてみせます」


 ヒットラー総統は期待しているとは言ったが、実際にはそれほど関心があるわけではなかった。

 海軍に疎いヒットラー総統は形だけの応答をしているに過ぎなかった。

 国の指導者として海軍にも目を配っているぞというポーズだ。


 数日後には、Uボート部隊がアメリカ沿岸に向け出撃を開始する。

 狙いは通商破壊戦。

 作戦名「パウケンシュラーク」

 ドイツ海軍が遂にアメリカに対し牙を剥く。

 

 それは日本により大打撃を与えられたアメリカにとり更に深刻な問題を引き起こす事になる。


【to be continued】

【筆者からの一言】


暫くは他国のお話しが続きます。

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