摂政戦記 0075話 抗議
【筆者からの一言】
そんな事知るか。知った事か、というお話。
1941年12月11日 『日本 東京』
ジョセフ・グルー駐日アメリカ大使が閑院宮摂政に対し抗議していた。
開戦初日からアメリカ本土で行われている日本軍の蛮行に対し、ワシントンより厳重に抗議せよとの指示が来たからである。
ジョセフ・グルー駐日アメリカ大使もワシントンから本国の状況を聞き驚愕していた。
まさか日本軍が無差別大量殺戮を行っているとは!!
すぐに日本政府に閑院宮摂政との面会を申し込んだ。
そして今、静かなる怒りを胸に閑院宮摂政と逢っている。
「セッショウ殿下、これはどういう事でありましょうか?
本国からの連絡によると日本軍は無辜のアメリカ市民を虐殺しているとか。
また我が国の複数の大都市を市民ごと壊滅させたとも聞いております。
これは明らかな国際法違反です」
怒りを抑え、まずは冷静に問い掛ける。
だが、閑院宮摂政の返答はジョセフ・グルー駐日アメリカ大使の想定をこえるものだった。
「あなたの国が我が国に突き付けた条件は我が国民に死ぬか奴隷になるかを選択させるものだ。
ならば我が国は誇りある死を望む。
だが、ただでは死なん。
あなたの国の国民も道連れだ。
今、あなたの国でそれをやっておるのだよ。
あなた達が選ばせた我が国の選択だ。
最期まで付き合ってもらうぞ」
戦争にはなった。それは悲しむべき事だ。だからと言って、まるで両国双方の滅亡を望むかのような閑院宮摂政の言葉に、ジョセフ・グルー駐日アメリカ大使は驚きを余儀なくされる。
しかし、驚いてばかりもいられない。
「殿下、戦争にもルールがございます。それをこうも破られては……」
「あなたの国とて国際法を破って来た常習犯ではないか。そのような国の言う事を聞くとでも」
耳の痛い点を突かれた。アメリカが国際法を蔑ろにしているのは周知の事実だ。
だが、非人道的な事をして来た事はない。
故にジョセフ・グルー駐日アメリカ大使も一歩も退かない。
「しかし、これでは、まるで絶滅戦争ではありませんか……」
「そうだ。絶滅戦争だ。
あなた達の国だって過去の歴史でやって来た事があるだろう。
どれだけのインディアンの部族を絶滅して来たか。
今度はアメリカ国民が滅ぶ番が来たというわけだ」
ジョセフ・グルー駐日アメリカ大使は小さく首をふる。インディアンの件は事実だが、それは昔の話しでしかない。
「インディアンについては過去の話しでありましょう。現在の倫理観に沿うものではありません」
「我々有色人種は、いつもその白人の倫理観とやらを押し付けられ白人の作った法を押し付けられる。
我々はもう飽きたのだよ。白人の支配する世界観にはな」
優れた文明を持つ白人が世界をリードするのは当たり前の事ではないか。
ジョセフ・グルー駐日アメリカ大使はそう思わずにはいられない。
それが、この時代の殆どの白人の考えでもあるだろう。
「そう、もうされましても……」
「ルーズベルト大統領にお伝え願いたい。
日本国民が死に絶えるのが先か、それともアメリカ国民が死に絶えるのが先か、勝負だと」
実際にそうなるとは発言した閑院宮摂政も思ってはいない。
はったりである。
日本はそれだけの覚悟をして、この戦いに臨んでいるのだとアメリカ政府に伝えさせたいのだ。
「本当によろしいのですか、そのような事を伝えて」
「構わない。これはそういう戦争なのだ」
ジョセフ・グルー駐日アメリカ大使には、もはや言うべき言葉がみつからなかった……
【to be continued】
【筆者からの一言】
グルー大使はまだ本国の本当の被害状況を知らないようです。
知ったらどう思うのやら……




