摂政戦記 0071話 錯綜
【筆者からの一言】
まぁこの時代なら仕方が無いね、というお話。
1941年12月8日夜 『アメリカ ワシントンDC ホワイトハウス』
日本軍の攻撃を撃退して守り切ったホワイトハウスにルーズベルト大統領は戻っていた。
まだ破壊された部分の傷跡が生々しかったがルーズベルト大統領は一顧だにしなかった。
大統領を守る特別警護班は当初ホワイトハウスに大統領が戻る事を渋ったがそれも押し切っている。
国民にホワイトハウスは健在であり安全である事を知らしめ、大統領は常日頃と変わりなくホワイトハウスから指揮をとっていると国民にアピールする為である。
だが、しかし、アピールするどころかアメリカ全土の状況が判然としない。
ホワイトハウスに続々と情報が入って来てはいた。
しかし、あまりにも情報が多く処理しきれない。
もはやどれを最優先に判断していいものかわからないぐらいである。
しかも、その情報一つ一つがどれだけの信憑性を持ち正確なのかさえもわからない。
「どうなっているのだ、これは? どこまで信じられるのだ?」
ルーズベルト大統領がそう言うほど、荒唐無稽と思われる情報まで入って来ている。
ニューヨーク市が壊滅した。シアトルが全滅した。サンフランシスコが消滅した。
そんな情報が入って来た。
その上、内陸部のアイオワ州のダヴェンポートやミズーリ州のセントルイスや南部のテネシー州のナッシュビルに日本軍が現れたという信じ難い情報が入って来る。
他にも沿岸部、それも大西洋側の東海岸に日本軍が上陸して来たと言う。
馬鹿な! 日本があるのは太平洋で大西洋では無い!
ルーズベルト大統領、いや閣僚も含め、ホワイハウス全体が情報の奔流に混乱し錯綜していた。
現代ならいざ知らず、この時代は情報発信や通信網が発達していない。
偵察衛星のような人工衛星は無いし、テレビの生中継、インターネットの動画、カメラ付き携帯電話といった物が無い時代なのである。
遠くの出来事をリアルタイムで知る手段は限られている。
しかも悪い事に「ウラン爆弾(原子爆弾)」の爆発した都市ではEMP効果が発生し都市近辺のラジオや無線を沈黙させている。
「ホワイトハウス」だからと言って、各地の正確な現状をすぐに知る術はなかった。
それ故に初動の態勢は遅れに遅れた。
救いだったのはホワイトハウスが日本軍に襲われた為、ルーズベルト大統領は全米に非常事態宣言を行うと共に戒厳令を発令し、全軍に対し適切な行動をとるよう命じた事である。
これによりある程度は軍が動きやすくなった。
しかし、通信網は混乱状態にあり全軍にその命令が行き渡るにはかなりの時がかかる事なる。
この日、アメリカは正に混沌と呼んでも良い状況に陥っていたのである。
この混乱状況は数日の間、続く事になる。
【to be continued】
【筆者からの一言】
真実を知るのはいつだ!?




