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摂政戦記 0058話 開戦 幕開け

【筆者からの一言】


遂に明かされる宣戦布告の内容とは……

 1941年12月8日 『アメリカ ワシントンDC』


 コーデル・ハル国務長官は、自分が今、手にしている書簡を前に困惑していた。

 日本の外交暗号は解読済みだ。

 それ故に自分に面会を求めて来た野村吉三郎特命全権大使が、どういう用件でどの様な内容の書簡を持参して来たかは、前もって知っていた。


 日本の解読した外交文章の内容を知った時、二つの意味から我が目を疑った。


 まずは、日本が戦争という道を早くも選んだ事だ。

 テンノウが病気なため、代理人としてセッショウが立ったが、それが北方政策を重視するカンインノミヤ

だった為、まさか我が国との戦争という道を選ぶとは思わなかった。

 まだ、外交の余裕はあると思っていたのだ。


 もう一つは……

 何度、読んでも信じられない。


 それはルーズベルト大統領を始めとして主要閣僚のメンバーも同様だった。

 閣僚の中には不謹慎にも笑い出した者がいたほどだ。

 ルーズベルト大統領すらうっすら笑みを浮かべていた。

 そして、私に命じられた。


「ハル、日本の特使がこの書簡を持ってきたら内容に誤りが無いか重々確認してくれたまえ。何度相手に確認しても構わない。とても正気とは、いや本気とは思えないからね」


 流石に「正気」と言うのは言い過ぎだと考えたのか、途中で本気で言い直していたが、私も同感だ。

 全く正気とは思えない。


 そして、今、私は手渡された書簡の内容を確認している。

 何度読んでも文面は変わらない。

 内容は短く明確だ。


 そして既にニ度、確認しているが、また野村吉三郎特命全権大使に問い掛ける。

 いや、問わずにはいられない。


「特使、この内容は本当に間違いではないのですね?」


「間違いありません」


 野村吉三郎特命全権大使は真摯な表情と態度で答えを返す。


「本当に我が国を相手に宣戦布告をすると?

そして我が国に無条件降伏を求めると?」


「その通りです。間違いありません」


 ハル国務長官の問い掛けには、信じられないという思いが溢れている。

 我が国に比べ10%の国力しか持たない国が、無条件降伏を求めるとはどうかしていると、言葉の端々から聞こえてきそうであった。


 しかし野村吉三郎特命全権大使は動じず重々しく頷くだけである。

 

 ハル国務長官は溜め息をつくと、確かに日本からの宣告を受け、その意思を確認したと述べ、これを直ぐにルーズベルト大統領に渡すと述べる。そして野村吉三郎特命全権大使に握手を求め幸運を祈ったのである。



 日本からアメリカ政府への通知は僅か二行に過ぎない。

『大日本帝国は現時刻をもってアメリカ合衆国政府に対し国交断絶を通告すると共に宣戦を布告する。

大日本帝国はアメリカ合衆国政府に対し無条件降伏を求めるものである』


 この日、日本はアメリカに対し宣戦を布告した。

 そして無条件降伏を求めたのである。


 真珠湾攻撃を始めとするアメリカへの攻撃作戦が開始されたのは、この宣戦布告から一時間後の事であった。


 日本はアメリカとの戦争に突入した……


【to be continued】

【筆者からの一言】


いよいよ始まる日米戦。

世界史史上最悪の戦争が始まる!!

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