摂政戦記 0042話 動かず
【筆者からの一言】
大きく変わります。
1940年夏 『日本』
欧州におけるドイツの躍進が著しかった。
昨年、ポーランドを降したと思ったら今年もフランス、ベルギー、オランダ、ノルウェーを降したのである。
あまりのドイツの強国ぶりに日本国内において日独同盟論が澎湃と沸き起こる。
それは軍内部にとどまらず、大衆からも広く声が上がっていた。
ドイツからも同盟の打診が来ていた。
軍内部や政府内にも同盟締結に向けて動き出そうとしている者もいた。
そうした中で皆が固唾を飲んでその動向を気にしていたのが閑院宮総長である。
下の者が何をどう言おうと全ては閑院宮総長の判断しだいである。
力による恐怖政治で陸軍内部を掌握している閑院宮総長には誰も逆らえない。
しかし、閑院宮総長が日独同盟論についてどう考えているのか、どう動こうとしているのか、誰もわからなかった。
閑院宮総長は誰にも何も語らず日々の職務をこなしているだけだったからである。
閑院宮総長の副官にそれとなく接触して聞く者もいたが、副官も「わからない」と言うだけである。
結局、日独同盟推進派の将校達が参謀次長に閑院宮総長のご意向を聞いてほしいと願い出た事から総長の考えが明らかになる。
「特にない。陸軍大臣に任せる」
それがおずおずと参謀次長が聞き出しだ閑院宮総長の返答だった。
これで日独同盟推進派が活気づく。
閑院宮総長は同盟に反対していない。
積極的に賛成してくれれば良かったが、それは贅沢というものだ。反対されるよりは余程いい。
ならば陸軍省から手を回し陸軍大臣をして日独同盟を推進しよう。
そう日独同盟論推進派は考えたのである。
これにより陸軍を中心とした日独同盟推進派が活発に活動を開始する。
その動きを閑院宮総長は興味なさげにただ見ているだけだった。
果たして閑院宮総長は何を考えているのか……
【to be continued】
【筆者からの一言】
筆者「なぜ総長はお動きにならないのですか?」
総長「いつもいつも能動的に動く必要はない。思うような流れが出来ている時には敢えて動く必要もない」
と、言う事らしいです。




