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摂政戦記 0041話 好景気

【筆者からの一言】


本日は第36話を午前4時に投稿。

第37話を午前5時に投稿。

第38話を午前6時に投稿。

第39話を午前7時に投稿。

第40話を午前8時に投稿。

第41話を午前9時に投稿となっております。


1940年 『日本とアメリカ』


 日本は好景気に入っていた。

 その理由は大きく分けて四つあった。


1.中華民国からの賠償金が入り国内投資が行われ公共事業を中心とする景気底上げ策が行われた事。



2.阻塞気球の大量生産による経済的波及効果があった事。


これはまず気球関連の施設(工場や保管庫、工員の寮や放球基地等)の建設で北関東の建設業界が忙しくなった。

気球生産に必要な物資の調達で東北の農家や和紙製造業者が潤い、更には蒟蒻糊製造工場や気球製造工場で働く工員の大量雇用もあった。そうなれば工員向けの飲食店や娯楽分野のお店も近場にできる。

東北から北関東にかけては一種の気球特需とも言うべき状況が生み出されていたのである。



3.第二次世界大戦の勃発。ドイツが欧州全体を巻き込む戦争をしたおかげで日本からの輸出が増えた事。


 これはドイツのUボートが活躍した結果、イギリスやオランダの植民地は本国との海上交通路を乱され物不足に陥った。その穴を埋めたのが日本からの輸出だったのである。

 第一次世界大戦でも同様な経済現象が起きており、その当時も日本からの輸出が激増している。所謂、戦争特需である。

 その戦争特需が再び発生したのだ。


 また、第一次世界大戦と同様に船舶の需要が増えると見越して大型船舶を発注している船会社や企業も少なくなかった。

 そのため造船業界は活況を呈していた。

 ただ、これについては閑見商会が30年代半ばから継続的にかなりの船舶を造船業界に発注しており、そういう意味では、これまでにも活況だったものが更に活気づいたと言える状況であった。



 4.欧州諸国のアジア植民地から安い資源が入って来た事。


 これは主にオランダの植民地「蘭印インドネシア」からの輸入である。

 オランダ本国はドイツに征服され、オランダ政府はイギリスに亡命した。

 今はイギリスと力を合わせ祖国奪回を目指している。

 そこで問題となるのは先立つものである。何をするにしてもお金はかかる。軍資金の問題である。


 幸いな事にオランダには蘭印インドネシアがあり石油を始めとする資源があった。

 ただし、オランダ本国から蘭印インドネシア向けの輸出が途絶えた結果、蘭印インドネシアでは他国からの輸入が増え戦前より外貨の流出が急増していた。 


 そこでオランダ亡命政府は蘭印インドネシアからの資源輸出の増大を目論む。

 石油等の増産に力を入れる。

 増産はよいとして、その資源を大量に必要とし、輸入してくれそうな国はどこか……

 そこで白羽の矢が立ったのが日本である。

 蘭印インドネシアに近い発展途上の工業国で、年々、石油の消費量も増大している。


 ただし、問題はこれまでの日本は、その石油の殆どをアメリカから輸入している事である。

 そこで石油価格を引き下げ日本に石油を売り込む事にした。


 アメリカの石油よりも安い価格での取引きを持ち掛けられた日本はこの話に乗った。

 石油の価格だけではない。これには距離も関係していた。

 アメリカに比べれば蘭印インドネシアは遥かに日本に近い位置にある。

 その分、石油タンカーの燃料代も安くてすむ。

 航海日数の短縮は、現地との年間往復数も増やした。


 こうして日本は、これまでよりも安い石油を入手する事になる。

 それは日本での車両や艦船の燃料費がこれまでよりも安く済むという事であり、他の石油製品の価格も安くなるという事であった。

 それは消費を刺激し、更にそれが生産拡大に繋がり、景気上昇の一因になったのである。


 これらの要因から日本は好景気に沸いた。

 世界経済は繋がっている。

 欧州での戦争に日本は参加していない。

 しかし、その影響はアジアにも及び、それが日本の経済へ良い方向に働いたのだ。


 この好景気は日本の産業構造にも徐々に影響を与えつつあった。

 新たな外貨の獲得により、これまで軽工業中心だった日本の工業界は、緩やかに重工業の分野へも力を入れ始めたのである。



 日本以外にも好景気が到来した国があった。

 アメリカである。


 アメリカも戦争特需に沸いていた。

 主にイギリス連邦への輸出である。

 ドイツと戦争しているイギリス連邦各国からアメリカに注文が相次いだ。

 航空機、車両、その他軍需物資の輸出が増加した。

 石油等の戦略物資の輸出も増えた。 

 ニューディール政策により世界大恐慌から一息ついたアメリカは、更にこの戦争特需をスプリングボードとして完全な景気の回復を目指していたのである。


 未だ戦争の惨禍に巻き込まれていないアメリカの好景気が、あとどれだけの期間続くのかは、今はまだ神のみぞ知るであった……


【to be continued】

【筆者からの一言】


気球爆弾の生産は日本の経済に良い影響を齎したようです。

総長はこの経済効果をも計算に入れて気球爆弾の製造に乗り出したのでしょうか?

ちょっと聞いてみましょう。


総長「当然だ」


と、総長は言っていますが本当でしょうか? 我々取材班は真実を探るべく今後も……


総長「……」(総長の無言の圧力+冷たい視線)


シュタタタタタタタ(筆者が逃亡する足音)


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