001 クロン5歳VS悪徳商人01話
はじめましてNULL<ヌル>と申します。
初投稿&初物書きに挑戦です。
生暖かい目で見守ってくれたらうれしいです。
更新予定などは決めておりませんが、とりあえず一章終わるまでは続ける予定です。
良ければお楽しみ下さい。m(_ _)m ペコリ
◆クロン(5歳)王都で家の貧乏の原因を突き止める◆
俺の名前はクロン=フォン=ブラッディ。
早朝、15階にあった自宅のマンションから、エレベータ-に乗って出勤する最中に地震が起きてエレベーターが緊急停止。
すぐにエレベータに付いていた緊急通報ボタンを叩き押したり、スピーカらしき所に話しかけたりしてみたが全く反応無し。
スマホで110番してみるも不通。よく見たらエレベーターの中なので圏外だった。
じゃぁ自力で脱出するかと思い、映画なんかの知識を頼りに天井や床を調べていると、再度地震が襲って来た。さっきの地震よりデカイ。どうやら本震が来たみたいだ。頭を腕で守り壁を背にして床に座り込んでいると、ついには非常灯まで切れて真っ暗になった。
周囲からミシミシ、ベキベキ、ギィギィけたたましい音が鳴り響く真っ暗な中、唐突に体をフワッとした浮遊感が包み。鈍い衝撃音とともに意識を失うと、次に尻の激痛で気がついて大声を上げた時には、俺はクロン=フォン=ブラッディとして生を受けていた。ちなみに尻の激痛は、俺が生まれても産声を上げなかった為に、メイド長のローズにバシバシと尻を叩かれていたからだ。
そう、これまでの話からわかるように俺は前世の記憶を持っている。俺はこの体でこの世界に転生するまで、地球の日本で33歳まで生きていた。そしてこの世界で俺は生まれ落ちてから既に5年の月日が流ていた。
「マジか~…。うちの領地は、だ・か・ら・貧乏だったのか~…。」
今俺は5歳の誕生日に初めて王都にやってきていた。加えて言えば初めての領外への旅行でもある。
オブラートに包んだ言い方をしても家の領地、ブラッディ辺境伯領は田舎だ。
毎朝、日の出の2時間位前に起きて筋トレと持久走と素振り。
日が出たら朝食。その後は領民達に混じっての開墾作業や伐採作業。
昼には一旦屋敷へ帰り、昼食を食べてから雨なら勉強、晴れていれば騎士団に混じっての訓練か、森や山での魔物狩り。
日が落ちれば夕食の後に風呂に入って寝る。
これが俺はこの世界の普通だと思っていた。前世の日本を知っている俺としては、この世界はまだ、前世基準の中世初期から中期程度の文化しかまだ無いんだろうと納得して今まで日々を過ごしていた訳だが、王都に来て周囲の話に耳を澄まして情報収集していたら、どうやらは家はこのアース王国最強の田舎だったらしいということが発覚したのだ。
だがそれだけでは俺の先程呟いた言葉は出てこない。今回の俺の初めての領外への外出は、実は3日後に開かれるアース王国第二王女の5歳の誕生会に出席するためだ。だが知り合いのいる両親はともかく、初めてこういうパーティーに出る俺は、そのパーティーに出る以外はやることもないので、王都の別邸から抜け出して王都見物へ乗り出したのだ。ブラブラと彷徨いながら珍しいものを見ていると、家の御用商家の王都の『本店』の看板があったのでフラッとそこへ入った。
「おいっ!脳筋領からの荷物が届いたぞっ!」「了解です!すぐに会計済ませますっ!あれ?『ブラッディ領専用倍率表』ってどこっすか?」「最新のがソコに貼ってあるから確認しろっ!あそこの荷物は金の卵なんだから最優先で済ませろよっ?」「勿論わかってますよっ!」
俺はどうやら商品搬入口に間違えて入ったようだった。俺はすぐにしまったと思い、外に出ようとしたが、後ろから荷馬車が入ってきたので避けるために、たまたますぐ近くにあった既に停まっていた家の馬車の下に入った。すると俺の耳にこんな会話が飛び込んできたのだ。『ブラッディ家専用倍率表』そんなあやしい言葉を聞いては確認しない訳にはいかない。俺は店に入るのをやめてこの会話の主を探し、スキをついて見事に最新のブラッディ領専用倍率表を手に入れたのだった。
俺はそのブラッディ領専用倍率表を懐にしまい込むとすぐにその場を離れ、王都の別邸へ帰宅したのだった。
「家の絹がアース王国最高級品かよ…それに松茸も最高級品、うわっ!?ホワイトウルフの毛皮って本当はこんな値段なのかよっ!!ちょっと待てよピンクラビットの毛皮が超希少品扱いって…。……ハハハ。怒りが度を越すと笑えてくるって本当だったんだな…。」
俺はそのブラッディ領専用倍率表に書いてある事実を読めば読むほど怒りがこみ上げてきた。確かに商品の値段設定は商人の自由ではあるが、これは流石にひどすぎる。だがあまりの酷さに俺は逆に冷静になった。
「…これを家の家族に見せるのはまずい、いやまず過ぎる。…あの脳筋四人のことだからこの王都『王家のお膝元』であろうともあの商家を更地にする事間違いない…。そうなったら俺も含めて国家騒乱罪で一家まとめて全員死刑…。普通なら他の家に頼るって手もあるだろうけど、俺は今回が初めての社交界デビュー…。誰が敵で誰が味方なのかすらわからない…。」
俺はブツブツと呟きながら最善手を模索していく。
「…ん?っていうかあそこまで酷いことやってバレてないのはなんでだ?普通に考えれば御用商家を変更すれば済む話なんだが、そうかっ!?家の領地に出店してるのはサギード商家しか無いからいわば独占企業ってことだっ!!ってことは別の問題も出てくるな。あそこを潰したら潰したでうちの領内の商店が無くなっちまうじゃねぇか…。しかもこの家の特産品の本当の額を考えると、そこいらにいる商人じゃ家の特産品の支払いが出来るはずがねぇ、最低でも商家か御用商家じゃねぇと無理だな…。…ふぅ、これは仕方がねぇな。王家に一枚噛んでもらうしかねぇ。サギード商家には利子つけて完全に潰れてもらうのは確定として、しかしこれはライバルの商家に話持っていけば意外と楽に済みそうだな。王家の方々には家の脳筋四人の説得。ただし見返りは本来収められるはずだった税金の正常化は勿論、家の特産品の優先売買権ぐらいだな…。これだけじゃ王家に動いてもらうにはちと弱いな…。こりゃ王都見物どころじゃなくなったか、まぁ仕方が無いな…ハァ~。」
俺は愛する家族達と領民達を護るために、王都での情報収集を始める決意をした。
ブラッディ領の愉快な仲間達<クロンの両親・祖父祖母・家臣(メイドや庭師も含む)・騎士団・領民etc…>は基本的に全員脳筋です。(笑
クロンはまだ自覚してませんが一般人からしたら十分脳筋です。5歳でブラッディ領の騎士団の訓練を一通りこなせる時点でお察しですね(苦笑
ちなみにクロンは自分が脳筋側の人間だということを本気で理解していません。なぜならたった二人で一軍と戦える脳筋筆頭の両親と、祖父祖母がいるからです。(白目
この時点で5歳としては十分強い(王都の近衛騎士並)クロウですが、地球の科学知識と魔法を併用したりすることによって色々な意味で強さがインフレしていきます。
国内最強の田舎の跡取り息子が斜め上に暴走していく姿を楽しみにして下さい。