ノリ突っ込み勇者
はいはい遅れてきてすまんね。とりあえずメニューをちょうだいよ。
そうそう、最近は疲れてるのかめっきり酒に弱くなってきてね。チューハイとかハイボールとか、そういう割ったやつがいいのよ。
今日は何にしようかな。じゃあ、この梅酒のソーダ・・・割りばしじゃねえかこれ。メニューじゃない!わーりーばーし!まだ何も届いてないのに、はしだけもらってどうすんだよ!
もう、今度こそメニューちょうだいよ。
ブーン。
そうそう、そういえば聞いた?隣の国のこと。大変なんだったね。どうもキナ臭いみたいで。このままだとおいしいものが食べられなくなるなあ。
よーし、いっちょ俺が救ってやろうか。ってこれ勇者召喚じゃねえか。メニューとぜんぜん違う!魔王を倒してほしい?ご注文繰り返します。魔王を倒してほしいでよろしかったでしょうか?って違う!
ぜんぜん注文できないし。喉乾いてきたわ。お水ちょうだい。
そうそう、けっこう近いところにあったんだね。ここをたどって北へ山行って、海を渡って森を抜けて。
指でなぞるだけならすぐなんだけどねえ・・・ってこれ地図!水じゃなくて、地図!しかもこれ魔王の城まで地図!姫さん!欲しいの水だから!
ボケっぱなしで疲れて汗かいてきた。おしぼりちょうだよ。
そうそう、この冷たいのがいいんだよね。汗がすっと引いて行く。
しかし本当によく冷えてるなあ。全身に冷えて、悪寒が走るっていうか・・・ってここ北の山!確かに汗はなくなったけどさ!というか姫さん!あんたも来るんかい!
もう来たばかりでノリ突っ込みさせられてコートも掛けれてないわ。ハンバーちょうだい。ハンガー。
そうそう、これに掛けて皺にならないようにしないとな。コートを着たままだと匂いが移っちゃうこともあるから。
しかしこのハンガー、何とも頼りないな。確かに角はあるから掛けられるけど・・・ってこれ剣と盾!伝説の剣の盾!剣の部分で穴空く!しかしやっと手に入ったな!?姫さん!
こんなにご飯食べられなかったらさすがに怒ったわ。もう帰る。お勘定ちょうだい。
そうそう、もう我慢できないよ。こんなのおかしいだろ。こんなの許されない!
相手が傷ついているのを笑うなんて生物として間違っている。これは怒り。これまでしいたげられた者たちの怒りの感情・・・ってこれお勘定と違う!いい加減にしろ!覚悟だ魔王!
お店を出たからってわけじゃないけど、本当にどんどん寒くなっていくな。あったかいコーヒー欲しいな。
そうそう、これが欲しかったんだよ。あったかいな。両手から幸せを感じるわ。
あったかいな。ほら姫さん見て笑ってるよ。ほんとあったかい、あったかい子―?この子、あったかい子じゃねえか。もう、がんばったな、姫さん。