ジブリのない夏
ジブリが版権管理会社になってしまった。もうアニメーション制作はおこなわないということだ。
「ジブリのない夏が、やって来る」
「え? マジ?」
マジ? で片づけられる友人が羨ましい。ジブリの新作が観られない夏は、夏じゃない。もちろん、過去作品はTVで放送されるだろう。「金曜ロードショー」あたりで。しかし、観たいのは過去の栄華極めし駿ワールドではなく、これからを築く若き才能の萌芽なんだ。新しい、まだ誰も観たことのないジブリなんだ。
「おれ、ジブリを復活させるよ。アニメ制作会社としての、ジブリを」
「どやって? うわッ」
友人がソフトクリームを食べ損なう。他人の将来設計より目先のスイーツが大事なんだ。これが、現代の薄い繋がり=友人。
「お前、一回『シビルウォー/キャプテンアメリカ』観てこいよ」
「何で? おもしろいん?」
「友情が何たるか、学びなおしてこいって言ってんの」
「それなら『千と千尋の神隠し』観るわ」
二の句が継げなかった。ジブリファンとして、おれは推奨作品のチョイスミスを犯した。
「ごめん、今の聞かなかったことにしてくれる?」
「え? ごめん、もうLineで『ジブリジブリうるせえヤツが俺にすすめたのマーベル作品やったわ ワロスwwww』って広めっちゃったわ」
「、、、」
「恥ずい?」
「うわぁぁぁああああん(泣)」
おれは、ゲラゲラ笑う友人を背に、駆けだした。さながら、屋上から跳び立った紺野真琴のように、、、って、コレは時をかける少女か。
「ジブリ、フォーエバーァァァアアア!!!」
おれの慟哭は、むなしく響き渡った。ジブリのない夏は、来るべくして来たのかもしれない。