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おまじない  作者: 針山
9/11

殺さない


「……今、上げるね」

 鯨が佐奈を引き上げる。なんとか窮地を脱した二人だが、柚希の声が頭の中で反響していた。

 人殺し。

 何度も何度も、二人に襲い掛かる。

「……立てる?」

「……うん」

 鯨に促され、佐奈は立ち上がり歩き出す。螺旋階段はいつの間にか消えてなくなり、普通の学校の階段が現れていた。階段を上がり、儀式を行った部屋に辿り着く。周囲には相変わらず人の気配がなく、戸を開けると出た時と変わらない教室が広がっていた。

「……おまじない、早く、止めよ」

「………」

「……鯨」

「……うん、解ってる」

 鯨が魔法陣の紙を隅に置いて、準備を始める。

 佐奈は黙って見ていた。

 閉ざされた二人の世界。

 残された二人の世界。

 見回す周囲には誰もいなく、見渡す範囲に人はいない。

「鯨」

「ん、なに?」

 こちらを向く無垢な鯨。無垢だろうか。でも、邪魔はいない。たった二人だけの、世界。

「……おまじない、止めなくてもいいかも」

「え……?」

「もう、大丈夫だよ」

 優しく語り、甘く語る。叶った佐奈のお願い。

「もう、叶ったよ」

 艶美に笑う佐奈の口元が、淫靡に染まる。

 世界は閉ざされ、世界が終わる。


(END:佐奈の願い)



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