殺す
「はぁ……はぁ……」
落ちて行った柚希を見つめる二人。佐奈は痙攣する体を抑え、喜びが体の内に広がるのを感じていた。邪魔をするものは、これでいなくなった。
「鯨……」
薄い笑みを張り付け、佐奈が顔を上げると、細められた鯨の瞳が佐奈を射殺した。
「え?」
離された手。届かない手。離れていく手。
「く、くじらあああああああああああああああ!!」
柚希とは違い、悲鳴を友に堕ちていく。
その様子を、鯨はただ黙って見ていた。
二人の女生徒が変死した。最初は飛び降り自殺かとも疑われたが、絶望に打ちのめされた醜い表情が、誰かに殺されたことを物語っており、捜査のメスが入る。
二人のクラスでは、すでに葬式の雰囲気が漂っており、一人の男子生徒が、一目も憚らず泣いていた。周囲の友人たちも慰めるが、彼の気持ちを知っていたため、なんと言葉をかければいいのか解らず、遠巻きに見る事しかできない。
その中に、一人の女生徒が割り込んでくる。二人の共通の友人であり、同じく悲壮な表情を浮かべる女生徒。女生徒は優しく語りかける。
「ありがとう……二人のために泣いてくれて……」
「ふっ、ぐぅ、う……うぁああぁあぁ」
「泣いていいの、ううん、泣いてあげて」
自身も辛いであろうに、優しく慰める姿は誰もが涙を誘われる光景。
「う、うぅ……ごめん」
「いいよ、私も、同じ気持ちだから……」
「鯨さん……」
『おまじない』は、叶った。
END:おまじない効果