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勇者と王女のワールドエンド  作者: 小来栖 千秋
第二章 クルニカ王国、伝承の地編
48/83

(30)

 

 広大な大地を踏みしめながら歩いていると、この世界はどこまでも続いているのだろう、と錯覚してしまう。けれど、世界は巨大な一つの大陸で形成されていて、大陸には必ず端がある。そこまで行けば、あとはさらに広大な海が広がるだけだ。

 かつて、人々はこのあまりに広い海へ視線を向けた。数多くの調査団が見果てぬ世界を求めて海を航海したが、そのどれもが新大陸の発見には至っていない。それどころか途中で引き返してくる者がほとんどだった。針路を同じ方角に取っていても、どこまで行っても見えるのは青い景色ばかりだったのだ。疲労に()えきれなくなった調査団が、そうして引き返した歴史ばかりが残っている。

「……それが世界の秩序なのだ」

 ぽつりと言葉が(こぼ)れた。

 目の前に広がる海に穏やかな視線を向けているのはベルトーネ。首筋に『第四』の刺青(いれずみ)を入れた『執行者(エスキューター)』。ノーラン教が唯一認めたオーブの番人――『グランツマイスター』である。

「世界が戦争にまみれても、世界を裏より守るのが使命。それがお前たちには分からないのだ」

 言葉は途切れない。

 語りかけるような口調は、この国の反対側で起こっている悲惨(ひさん)な争いに対してか。統一大陸であるパンゲアを裏から支える者として『執行者(エスキューター)』は存在している。表舞台に登場することなく、世界に忍び寄る危機を何度も排除してきた。パンゲアで何度も起こった戦争をはるかに超えると予想された幾度もの危機を。

 ゆえに、ベルトーネにとって戦争などくだらないものでしかない。『執行者(エスキューター)』として彼が気にかけるべきことは他にあるのだ。

「課せられた任務をこなして、即刻ノーランに帰るとしよう」

 ベルトーネに与えられた任務は簡単なものだった。この国を数日も回れば達成できる程度のものだ。

 彼が気にかけていることは別のこと。

 もっと大きなこと、である。

「他国の姫と勇者が何をするつもりなのか、この目で判別しなければならない」

 クルニカ王国の東海岸を後にして、ベルトーネは再び広大な大地を歩きだした。



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