(11)
視界は豊かな緑で埋め尽くされている。
もう少しで日が沈む緑の景色は、西日に照らされてとても綺麗だ。目の前に広がる景色に、子供は感嘆の声をあげる。見慣れた景色でも、こうして違った一面を見せることに興奮しているのだ。
子供がいる場所は、小さな山の中だった。
子供の周りには、数人の子供たちがいた。彼らは一様にして、服を汚している。
「そろそろ帰ろーぜ」
「うん、そうだな!」
「大地ーっ!」
一人で西日に照らされる山の斜面を見ていた子供に、他の子供が声をかけた。
「あぁ!」
振り返った先には、満足そうな顔の子供たちがいる。服を汚れまみれにして、足もくたくたになるほど遊び回っていたにも関わらず、子供たちからは疲れの色は見えない。
「明日も来る?」
「そうだな。夏休みはまだいっぱいあるんだ」
完全に太陽が沈む前に帰らないと、家族に心配される。その不安があった子供たちは走って山を駆けおり始める。木々のすき間から見える景色はやはり綺麗で、子供たちには見たことのない場所に冒険心をくすぐられる。そうして、また明日もここで遊ぼうとみんなで笑い合うのだ。
誰が作ったのか分からない山道を、子供たちはあっという間に走り抜けた。山を降りた先に続く田んぼ道を歩きながら、
「なぁ、大地」
「ん?」
「ずっと、こっちで暮らせよ。俺たち友達だろ?」
「もちろんだよ! でも……」
その先を言うことはできない。
顔を俯かせた子供は、幼いながらにはっきりと口にできない事情を理解しているようだった。
話しかけた子供もまた、なんとなく俯く子供の状況を理解している。していても、これからもずっと友達だと信じて疑わない。クラスで一番仲が良いのは目の前の子供だと信じているのだ。いや、この町で一番仲が良い、だ。
「そっか。……でも、今は一緒に遊べるよな」
俯く子供に見せた笑顔は、とても無邪気なものには見えない。子供ながらに見せる精一杯の作り笑顔だった。




