七色の月
僕は一人で月を見ていた。細く頼りない三日月を。永久の景色は僕の心模様。
君に出会えて良かったと。僕はそれだけを後悔せずに生きて行こうとした。ただ切なくて、忘れられない思い出がぶり返す度、僕の頬を涙が伝う。月が水面を優美に流れるように、ただ僕の記憶を鮮明に照らし出すように、空に咲く一輪の黄褐色は僕を濡らす。
ただただ切なくて、君を思うだけで切なくて悲しくて。
楽しかったよ。確かに楽しかったよ。僕の記憶がそう告げる。僕が君を思う一秒一秒を、あなたはどうお過ごしですか?決して止まらぬ時の渦の中で、僕はそれを無駄にしていませんか?
暗闇に咲く花は群青色。
君に出会ってから僕は少し変わりましたか。君に何か変化はありましたか。あなたは楽しい時を過ごせましたか。僕といて楽しかったですか。僕の愛はあなたに届きましたか。
暗闇に咲く花は水白色。
愛していました。愛していました。あなたに出会ったその日から。ええ、愛していました。
暗闇に咲く花は橙色。
君は覚えているだろうか。共に泣き、共に笑い、共に駆け抜けたあの日々を。僕達が持つ様々なエネルギーをぶつけ合ってきたよね。水銀に輝く月を覚えているかい。見ながら君はこう呟いたね。生きるって何なの、死ぬのって何なのって。その時は何も言えなかったけど、今ならわかる。僕達があの場所あの時間を過ごした瞬間が答えだって。もしも君が忘れても、僕は永遠を誓うよ。たとえ冥府を彷徨おうとも。
暗闇に咲く花は赤褐色。
君に出会えて幸せでした。君と過ごした日々は幸せでした。僕は今でも幸せですか?君は今でも幸せでしょう。
君は僕と同じ月を見上げていますか?僕の希望が叶うのならば、僕の最後の言葉を聞いてくれるのならば。幸せって何?僕の願いを聞いておくれ。もう悲しませたりしないから。僕の傍にいて。満月のように僕を照らしてよ。
君の笑顔。君の仕草。君の言葉。夜空に煌く無数の星達のように、僕の心に咲く花びら。
暗闇に咲く花は紅蓮色。
僕の心は紅蓮色。
君の心は紅一点。
夜空に咲く桜。水面に下る紅葉。
僕は君との場所に立っているけど。思い出の場所に立っているけど。君の姿は闇の中。もう帰らないよ、帰れないよ。君と再び唇を交わすまで、僕は闇に立ち向かう。そうだよ。
暗闇を照らす花は虹色の月。
はじめまして。初となるこの作品は非常に切なく仕上げてみました。
さて、今回は月をモチーフにしたということで。月は見る人それぞれによって表情を変えるといいます。それは人個々が持つ感性と繋がっていると、わたしは思います。
闇に浮かぶ月は皆さんにはどう映っていますか?一度見上げてみてください。颯爽と輝く星空と共に。
あなたの空の月は何色に輝いていますか?