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ラノベ没案ジェノサイド喫茶店【ニ杯目】

「新作……トンテキ定食ね、じゃあそれひとつ、あと食後にコーヒーを」

「お待たせしました先輩!世界初ピュア100%のオリジナル案、仕込んできました!」

「……」

「先輩??」

「……」

「先輩ー!」

「お前はヒトノキモチって持ってないの?今日は待ち合わせしてないのよ、見てわかる通りの昼休憩。よし聞こう、過去被りは絶対許さないからな、なんて言うわけないでしょう?時給分、時間外労働、昼食代、諸々請求するわよ」

「今回のは相当の自信作です!!完璧です!!その名も──『横断歩道だけを延々と横断し続ける学校生活』!」

「…………詳しく」

「登校から下校まで横断歩道しか描写されない学園。先生も同級生もそこにしか現れず、ラブもバトルも全員横断歩道上で完結します!」

「へえ……今までにない。展開によっては興味を引く、か。交通法規の専門性が要求されるラノベね。それで?」

「連載一巻、全校リレー横断バトル!二巻では横断歩道妖精ヒロイン爆誕、三巻からクライマックスで無限に信号が赤に……!」

「……素材は良さそうだったのに残念ね。ストーリーを共感できる人間が作者ただ一人になりそう。唯一無二というより唯一人。読者ゼロの新境地、見事ね。登校から下校って言ったけど、授業中は?」

「そんなの車や人が通るに決まってるじゃないですか!」

「モブってこと?」

「物語を起こすもよし、起こさないもよし」

「決めとけよ」

「でもでも先輩、これはあれなんですよ!この決められ時間のみに主人公達が現れるワクワク感と、その隙間でしか物語が展開しない絶望感の合わせ技なんです!史上初じゃないですか!?」

「ずっと映像映してるライブカメラだから楽しいのよ、それ。どうやって文章で表現するの?」

「それを先輩が考えるんじゃないですか〜いやだなぁもう」

「物語の内容による絶望ではなく、物語の進行具合に対する絶望ってほんと最悪ね、ただ面白くなりそうな気はするから、練り直して再提出」

「え、そう言うパターンもあるんですか?」

「なんなの?全部没にしてりゃいいっての?」

「そういう流れかと思ってました」

「あのね、面白そうなのは面白そうでいいの。ただ本当に設定の一部分のみ極小に評価できそうな気がした錯覚を感じたから、全て宇宙の彼方に葬り去るのも残念かもって思ったのよ」

「詩的〜!じゃあ、宇宙スケールでチューインガムを噛み続けて味が消えなくなるまで人類が文明進化しない星とかは?」

「ガムと人の進化史。それ字面が面白いだけね、宇宙スケールってなによ。味が消えにくくなるの?文明進化しない、つまり日常ってことよ?没!」

「じゃあ、“呪いの枕カバー”が毎話主人公を変えて家財道具たちの陰謀劇が繰り広げ……!」

「枕カバー一人称の宅内群像劇。なんか何かしらの焼き直し感を感じるし、フラッシュアイデアをすぐ口に出すのやめて、不快だから」

「全部、全部オンリーワン……」


「トンテキ定食です」


「ありがとう、美味しそうね。貴女みたいな綺麗な子に持ってきてもらえるとより嬉しいわ」

「うぇ、先輩きっしょ」

「あ?」

「先輩!新案いきます!超斬新!“真逆”を極めた主役です!」

「食べながらでいいわね、どうぞ?」

「はいっ!主人公は“生まれつき全ての部位が透明マジックで塗られている”少年!」

「(モグモグ)生まれた瞬間から(モグモグ)全身マジック塗り、いや、見た目透明じゃ(モグモグ)なくて着色?」

「透明じゃなくて、触れたら透明化してしまう特殊体質で、見る者は彼を観察できず名前も呼べず、彼自身も透明人間を見つけようとする!」

「ん?」

「え?」

「ゴクン……透明マジックは何?」

「透明になるマジックです」

「触れたら透明化してしまう特集体質は?」

「触れたら透明化してしまう特殊体質です」

「それは、どういうこと?」

「何がですか?そのままですよ」

「いや、生まれつき塗られて透明なのか、元々そういう体質なのか」

「え?両方ですけど」

「つまり、どういう話?」

「触れたら透明化してしまう特殊体質を持つ、生まれつき全ての部位が透明マジックで塗られている少年が、透明人間を見つけようとする話です!」

「触れたらってなに?」

「そりゃ触ったらですよ」

「何に触るのよ」

「ちょ、先輩、そ、そんな直球で恥ずかしくないんですか?!まぁ下ネタとかに耐性があるのかもしれないですけど、私はまだそんなポロッと言えたりできないかもです」

「何意味わかんねぇこと言ってんだ轢くぞ?あ?」

「わかりましたぁ、ちゃんと説明しますけどぉ、なんかチンチンってコントローラーみたいじゃないですか?ジョイスティック??的な?だから頻繁に触るのかなって少年は。それで透明化しちゃうんですけど(笑)鏡に写らない自分を見て、もしかしてこのシャフトに触れることで透明化をオンオフできるのでは?ってことに気づくんです。そして、少年は考えた。オン状態の時、世界で私だけ見えない。逆説的に言えば世界には、自分ひとりしかいない。それなら同じオン状態の人が同じこの世界にいたとしたら、それはこの世にたった2人だけ存在しているアダムとイヴになれるんじゃないか、2人で新たな世界を創造し」

「ストップ!」

「??」 

「タイトルの真逆の意味はわかった、書きたいことも壮大で展開も面白いかもね」

「えへてへ」

「なんで塗ったの?」

「え?」

「生まれつき透明マジック塗る意味なんなの」

「さらに真逆をちょい足し!」

「わかりにく過ぎない?そもそも誰が塗るの」

「親です」

「親がマッドサイエンティストとか虐待じゃな」

「可愛過ぎたから」

「は?」

「少年があまりにも可愛くて誰にも見せたくないって思っちゃったんですよ、親の愛って偉大ですよね!」

「うーん、なんか面白くなりそう気もするから練り直しで」

「先輩今日どーしたんですか!!でも、2本も連載認めてくれて、正直嬉しいです!」

「練り直しだダボ、勘違いするな。──お姉さん、お会計お願い」

「あ、私何も頼んでないので、トンテキください」

「次はもう少しゆっくり味わって食べるわね、お姉さん新作美味しかったわ、ありがとう、この子のは別会計で」

「え、あ、せ、先輩……」

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