ラノベ没案ジェノサイド喫茶店【一杯目】
「呼び出しといて、居ないとか舐め腐ってるなあいつ……よいしょ」
「アイスコーヒーで、あと灰皿ください」
「はい、もしもし、あーお世話になっております。ええ、ちょっとお待ちいただけますか外に出ますので──」
「んー、あれ?先輩は………お、Hi-Liteみっけ、確実にここだな。まぁ、いいや今日はせっかくの新作だし気合い入れてプレゼンしよっと。の、ま、え、に!すみませーん!!パンケーキください!!」
「また、よろしくお願いいたします。……チッ、フジオお前呼び出しといて遅刻はないだろ」
「先輩、私いましたよ?ここに座ってたのにー先輩がー荷物置いてー電話しにーいくからびっくりして隠れちゃいました」
「あ?なんだそのイカれた時系列にイカれてる記憶は。一生来ないパンケーキを待ち続けてろボケが」
「ええ!!なんで!?どこから注文がバレたんだ!!解せない!!ん?なんで来ないんですか!!」
「はん、店に戻ったら店員の姉ちゃんがお連れ様のご注文はすぐお出ししてよろしいでしょうかって聞かれたからな、ちゃんと注文したやつが帰ったら出してください、私が食べるのでと伝えておいた」
「何勝手なことしてるんですか!!私のパンケーキ!!」
「お前のパンケーキなら、伝票同じにする必要ないな、分けてもらって再度注文しろよ」
「あ、ちょっと、それは色々あとあと面倒じゃないですか、先輩やめてお姉さん呼ばないで、ちょっと!」
「あ?てめぇ、伝票奪うなこら」
「先輩!!!いいですか?今日は真面目な話なんです」
「ただ話したいだけのお前が?」
「そんなわけありません。ビジネスですよビジネス」
「……はぁ、まぁいいや、で?」
「大変お待たせしました!新機軸、世界初設定です!」
「やなテンション、なによ」
「異世界料理×外科手術×深海生物の養殖ですよ!」
「成り立つの?」
「はい!主人公は魚類専門の外科医。事故で深海に転生!そこでは巨大な甲殻類や見たことない魚が人語を解し、治療を求めに来ます。毎回、彼らの病巣を“切開→調味→深海流グルメ”に昇華させる!」
「……ん?主人公はなんなの?人間?、登場するのは全部ナマモノ?」
「彼は深海生物ですね、人間ゼロです。医食同源、進化論、海洋環境保護までテーマに盛り込みました!」
「ふーん。世界初で、誰も追従できない設定ねぇ。で、肝心の物語は?」
「日常、オペ、そして料理バトル、たまに漁業組合の選挙が…」
「そこまで来て“客層がいない”って気づかない?あとそもそも魚類専門の外科医ってなに?人間ゼロで人語解する必要性ある?」
「え、あの、唯一無二を突き詰めれば支持されるかぁって、あ!魚類専門の外科医はそのまま言葉の如し!魚類専門の外科医ですよ!かっこいい!」
「唯一の場所には読者も来ないのよ。0人しか“共感”を得られない世界観を創れる才能は認める。でもゼロはゼロよ、没!」
「なぜですか!?」
「珍味すぎ。あと読者の胃袋が物理的に追いつかない、何より設定甘くてガバガバ過ぎる、なにこれ昨日寝ずに考えましたって言いながら8時間睡眠した朝に思いついた設定みたいなヤバさがある」
「そんなぁ、えへえへ、ありがとうございます」
「気味が悪い言語理解ね、俳人なのが信じられないわ」
「先輩、次も秀逸ですよ!“擬態”特化転生です!主人公は擬態の天才、転生後どんな物でも擬態・モノマネ可能、人間は通行手形に擬態して生き抜いたりします!」
「あー……生物どころか書類にもなれるの?」
「賃貸契約書・ランドセル・スマホカバーもOK!」
「ライトノベル史上初の書類主人公。いいわ、もう応援したくなるくらい誰とも被ってないわ。」
「じゃあ出版……?」
「没。物語の80%が市役所の書類棚で進む可能性もあるし、そんなの誰が読みたいの?」
「私です!」
「それでは趣味でその設定をAIに書いてもらってお楽しみください」
「先輩!AIの話を蒸し返すなんて、人間の考えることとは思えません、ホントに酷い、鬼畜、悪魔、AI」
「AIのカテゴリーがそこなの面白いわね」
「じゃあじゃあじゃあ“心拍数が物語に全て連動するファンタジー世界”はどうですか!?主人公が一拍心臓を止めるごとに世界が一回停止、利用して世界の時間犯罪を!未踏ゾーンですよ!」
「……すぅ」
「斬新・誰にもパクられない世界観!興奮しますね」
「……ふぅ」
「ゴホッゲポァッ」
「気持ち悪い咳ね」
「副流煙やめてくださいよ!!!!」
「いい?お前のはただ設定考えて面白そうって思うだけで、ラストここに繋ぐための仕込みみたいのが全く必要ない、よくわからん話なのよ。何よ、心拍数って。主人公が常に拍動してたら、世界コマ送りみたいな視点じゃない。それどうやって文字で表すの?仮に半角スペース多用でそれ表現したとして、読み難い以外に何の意味があるの?本当に残念だし、もう2度と会いたくないけど、お隣さんで幼馴染だから連絡がくればこうして会ってはみるけど、何の実りもない時間はただの時間泥棒よ。次回から私に対して時給を支払ってね5000円/1h」
「ぐはっ……!数字がリアル……え、ほんとに?」
「それじゃ、今回もご縁がなかったということで、あ!お姉さーん、パンケーキ持ってきてもらって大丈夫です、この方お帰りになるので」
「ぜんぱいぃぃぃ………」




