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『それでも私は話したい』

「伝染病でツノが生えてしまう日本人の話で」

「じゃあ主人公は鬼みたいなの?」

「いや主人公はツノがないんですよ」

「なんで?」

「気になりますよね!それがこの話の肝なんです」

「まぁ、気になるというよりはどういう設定なんだろってくらいよ」

「またまたぁ」

「またも何もないんだけど、で?」

「この伝染病は日本人の持つある因子に反応してツノが生えるもので、伝染病を作った会社はツノが生えない人を探すために作ったって流れです」

「うん、で?答えになってないけど?」

「焦りなんさんなお嬢さん……主人公3人はとある因子を持っていて、その伝染病に打ち勝ってツノが生えなかったのです!」

「主人公3人いるの?」

「そうですよ、3人います」

「なんで?」

「これは語るも涙話すも涙の物語なんですが」

「絶対泣けよ?」

「いやだなぁ先輩、言葉の綾じゃないですか。でですね、2人は超健康みたいな因子のために伝染病が効がながっだんですぅぅぅ」

「ああ。で、その健康な因子を欲しがる人が黒幕みたいな感じ?」

「すっご!なんでわかるんですかぁ!?!涙引っ込みましたよ!!」

「王道っちゃぁ王道でしょ」

「いーえ、絶対に邪道ですぅ!で、残り1人はなんで効かなかったと思います?」

「ええー……なんも効かない身体だったとか?」

「ぶっぶー!!!最後のひとりこそ、主人公であるレイシです。彼は病全般を殺してしまう因子持ちだったんです!」

「だったと言われても、はいそーですかになるね。あとなんで3人なの?ってのに応えてもらってないんだけど?」

「バランス良くないですか?男男女!」

「そのバランスは今初めて聞いたけどね」

「またまたぁ!お上手なんだから!」

「お前はどこを切り取って褒め言葉と認識してるの?男男女で主人公、ライバル、ヒロインみたいな感じで安易ね」

「あれあれ?そんなこと言っちゃって大丈夫ですか?」

「全くもって無傷だから大丈夫よ」

「つっよ、ハート激強め、編集者ってそんな感じで結婚相手見つけて結婚するんですか?」

「あ?私一度も結婚してないけどなに舐めた煽りかましてんの?捻り突くぞ」

「世代出ちゃってますよー!あ、それ!が!と!つ!あ、それ!が!と!つ!」

「よし、打ち合わせ終わり、私帰るわ」

「ああごめんなさい、ごめんなさい、ちょっと興が乗ってしまって」

「興が乗ったら相手を侮辱したり煽ったりしたいいわけだね。それじゃあ言わせてもらうけど……どんなにいい設定考えついて、話もワクワクして、これは売れるなって思って、なんなら思いついた人間がクソほど性格悪くても、最終的に文章AIに書かせてるようじゃ売れるもんも売れんし反吐が出るわ殺すぞ」


「……ちょっと、言葉、つよすぎません?」

「あ?」

「い、いえ、そうですよねぇ、おっしゃる通りだと思います」

「まぁ、言うて本音は8割くらいよ」

「ほぼ本音じゃないですがあああ!!なんですか2割の創作活動!?どこにファンタジーありましたぁ!?!」

「話もワクワクしてこれは売れるってところがファンタジー」

「もうやだッ!!!!この人ッ!!!!袈裟斬りの角度えげつなッ!!!!」

「はいはい、それはもういいやフジオ。とりあえずAIに書かすのやめなね」

「……わかりました、新しいのは自分で書くことにします。あ、今までのはそのままでもいいですか?」


「ん?」


「え?」


「ん?」


「え、あ、ツノの話の前に書いた作品はそのままにしていいですかって意味です?」

「フジオ……あなた他にもAIで作品書いたの?」

「いいいいや違うんですよ!これがね、ほら私活字読むの好きじゃないですかぁ!もういろんな小説読んでたらもうどこもかしこも同じ内容、焼き直し、リメイク、アレンジ、オマージュ、焼き直し、リメイクばかりでもうもう本当に嫌になってしまって……で、なんか面白い設定作ってAIに書かせた小説読んだ方が楽しいんじゃないかなぁって思ったんですよ」

「で?」

「書いてもらったら、なんか絶妙に足りないのになんだろう、味はあるというか」

「ん?」

「そこに作者という個人はいないのに、全世界の集合知から、それっぽいこと書くんですよ。世界中の人が考える王道的な展開だったり、今流行りの持ってき方だったり、粗削りではあるんですけど私が尖った指示を出すと絶対NOと言わず改善修正ブラッシュアップをして提出してくる……私、こいつの作者になろう、そう思った瞬間でしたね」

「お前はなんの注意書きもなくただただAIに書かせた小説載せてんのか!最近ではAIを使ってる場合は注意書きも添えるくらい気をつけてる人がいるってのにッ!?」

「そんなに怒らないでくださいよ、大丈夫。もう完結してますから」

「完結してんのかよッ!!」

「世界……頑張りましたよね、マジで」

「何が頑張ったんだよ、AIを勝手に人格化して一人称に世界当ててんじゃねーよ!連載中だろうが完結だろうが、問題はそこじゃねーよ!!」

「おこらなーいおこらなーい、ひとやすみひとやすみ」

「それじゃお前との関係はこれで終わりということで失礼いたしま」

「あああ!!本当にごめんなさいいい!……ひぃぁッ!……ま、真面目に、真面目に話しますから!」


「……で?」

「ゴクゴク。すみませーん、アイスコーヒーおかわりください」

「帰るわね、お勘定よろしく」

「いやこれは喉が乾いただけで、えっとあれです!もう一つの話の方ですよね?!」

「そうよ。何投稿したの?」

「ダンジョンを掃除する人の話です」

「ふーん、普通にありそうだけど何書きたかったの?」

「ええ!結末言っていいんですか!?ネタバレですよ?!」

「読まないからいいんだよッ!舐めんな!そんな駄作読んでる時間ないんだよ」

「心外です、駄作ではないと思います!ちょっと人物像が伝わり難いのと、何話か重複表現が多めなのと、ちょっと文才のなさが伝わるくらいなんで、全然改善の余地があると思うんですよね。あと視点も三人称と一人称の合わせ技という小賢しい執筆ですよ?なかなか見込みがあるなぁって」

「駄作of駄作の説明ありがとう。それ完結させちゃってるのよね?反響は?」

「……はん、きょう?」

「何よその人工ダイヤモンドみたいな綺麗な目は」

「誰がモアサナイトですか!やめてくださいよ恥ずかしい」

「どちらかといえばキュービックジルコニアね」

「ひどいどれだけ私を下げれば気が済むんですか……」

「はいはい、モアサナイトモアサナイト。で、反響あったの?」

「……その反響ってのは何から得るものですか?」

「え」

「投稿はしましたけど、反響?みたいのは特に。あ、メッセージは何もきてないですよ!こういうのすぐに書籍化の話が来るかと思ってました。やはり今の時代は持ち込み、持ち込みすればいいのか!よし!善は急げだ!出版社の編集に突撃だぁ!」

「ボツね」

「何であなたがそんなこと言う権……利……ある…のか編集者だもんなぁ先輩」

「はぁ」

「?……ため息は幸せ逃げますよ?なんか昔すれ違った人が言ってました」

「あなたの相手をしていたら自然と出ただけよ、気にしないで。あと何よそのすれ違い」

「そもそもッ!!先輩は今日何しに来たんですか?私という才能の塊に嫉妬して、直接文句を言いに来たようにしか思えません」

「もうそれでいいわ。とりあえずお前をうちの出版社でお抱えとして推挙しようかと思って、最近の動向を聞いてみたら、まさか自分の作風捨ててゴリゴリにAI使用したヤバいやつになってたってのは理解したから本当に残念だわ、もう会うことはないと思うけど、健康と多幸を心より祈ってるわね」

「ぜんばいぃぃ!見捨でないでくだざい!私何でもやります!書きます!お願いいたします!」

「フジオ……あなたは小説書いたことあるの?」

「あるわけないじゃないですか?こちとら俳人ですよ」

「俳人がAIに小説書かせて悦に浸るならまだしてもネットに投稿して遊んでるわねよね?そんな人材うちが欲しいと思う?思わないわよね。貴重な時間を無駄で生産性のない話で埋めるの嫌いではないけど、今は必要ないの。そういうわけで、ご縁がなかったと言うことで」

「せんぱあああい!!ここのお勘定だけでも、お勘定だけでもおおお!!じゃあ私も帰りますから、一緒にレジに──あっ、お代わり、はい注文しました……けど、そのえ、あ、はいお連れ様はお帰りみたいですね、そのあの今カランコロンカランって出てった人にお会計をお願いしたいなぁなんて思、あ、はい……もういないです、はい。うるさくしてごめんなさい、静かに飲みます、ごめんなさい」


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