お前ら、働いてくれ【ガラーヌ編3】
翌日。ピグマは妙な夢を見た。
青白い光に満ちた空間。遠くに浮かぶ巨大な目。その瞳は星々でできていた。
「……ピグ=マリオ……カギを、返しに来てください…」
声が、直接脳に響く。呼吸が苦しくなるほどの重圧。目覚めたとき、額は汗でぐっしょり濡れていた。
「……なんなんや……星母って…?」
だが疑念は確信に変わりつつあった。
自分が何か中心に近い存在だとあの団体にとっての。
その夜、ピグマはもう一度、洋館へ向かった。
信者たちの集会が終わったあと、ガラーヌの目を盗み、裏手の鍵のかかった部屋に忍び込んだ。
中には古びた祭壇があり、中央には一冊の黒革の書物が置かれていた。
〈星母降臨ノ記録〉
その第一章には、こう記されていた。
「大封印ノ地ニ、観測者〈ピグ=マリオ〉アリ。彼ノ記憶、封印ノ鍵ヲ宿セリ。鍵ハ血ニヨリ開カレ、光ヲ呼バン。」
「……ハァ!?なんでワイ、勝手に鍵にされとんねん……!」
その瞬間、背後からふわりとした声が響いた。
「やっぱり来ちゃいましたねェ、ピグマさん。」
振り返ると、そこにはローブ姿のガラーヌ。
いつもの柔和な笑みは消えていた。
その目は、ぞっとするほど澄みきっていてどこか、人間味がなかった。
「……星母が言ってるんですよ。
鍵が近づいた。そろそろ扉を、開くときだって。」