表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/52

お前ら、働いてくれ【ガラーヌ編】

ある日、ピグマはガラーヌが宗教団体を立ち上げていることを知った。

「なんや、ガラーヌ。カルトやっとるんか。別にエエけど家庭壊したりするなよ。揉め事起こさんようにな。細々ツボ売るくらいにするんやぞ。」

「うちはそんなんじゃないですよォ~。もっとこう……心の居場所、みたいな……ほら、癒しの場ってやつですゥ~。」

その口調はいつも通りのゆるさだったが、目の奥に何かしらの確信を秘めていた。

ガラーヌが主宰するその団体の名は〈内奥醒神会〉(ないおうせいしんかい)」。

パンフレットには、あなたの中に眠る星の記憶を目覚めさせましょうと書かれている。

週に二回、ニコシアから少し外れたレンタルスペースに信者が集まり、蝋燭の炎を囲んで星母への祈りを捧げる。

「星母は見ておられます。私たちの周波数が整えば、星母の導きが現れます」と、ガラーヌは真剣な顔で語る。

会の活動内容は、一見するとスピリチュアル系の自己啓発に近い。

だが、その中にはいくつか不可解な儀式や用語が存在した。

たとえば、入信の際には「魂の名〈アースネーム〉」を授かる。儀式中には独特の言語での詠唱が行われる。ガラーヌ曰く、「高次元の存在と波長を合わせるための神語」らしい。

さらに最近では、信者の間で「聖なる水」なるものが密かに販売されているという噂もある。

一本金貨800枚で、「飲めばカルマのしがらみが流れる」とのこと。

ピグマは、翌週の集会にふらりと顔を出してみることにした。

表向きは「興味本位」で、内心は「どんなアホなことやっとるんか確認しとかなあかん」という警戒心からだ。

場所は、郊外にある古びた洋館。

もともと画家のアトリエだったらしいが、今はガラーヌが借りている。

館の中には、白いローブ姿の男女が十数人。年齢も性別もばらばら。

皆が目を閉じ、低くうねるような声で詠唱していた。

「アール・ヴァル・セーレ……ナミア・コル……」

なんやこの呪文、ピグマは思わず眉をひそめた。

そのとき、壇上に立つガラーヌが、ゆっくりと手を広げる。

「星母は今夜も、私たちを見守ってくださっています。どうか、自分の内なる光に耳を傾けてください…カルマは溶け、記憶は目覚め、魂は巡るのです……」

信者たちの顔が恍惚とするなか、ピグマはそっとガラーヌに近づいた。

「あのな、ガラーヌ。お前これ、もうツボ売る段階越えとるやろ。なんやねん星母て。カッコつけるなァ‥。」

「ピグマさん……ちゃんと感じてくださいよォ。星母の存在、あなたも分かるはずですって……。前世、あなたは光の観測者だったんですから。」

「はァ?ワイ前世コンビニ店員やった気ぃするけどな?」

ガラーヌは微笑む。その顔には、まるで狂気も悪意もなかった。

あるのはただ、信じきった者の、まっすぐな確信だけ。

ピグマは背筋に微かな寒気を覚えた‥。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ