お前ら、働いてくれ【冒険者たち編2】
奈良。
そこはかつて、穏やかな神鹿と修学旅行生が共存していた地。
今は、鹿が統治していた。
「ん?なんか鹿、デカい?」
ガラーネの言葉に、ガラ乃が携帯端末のズームを最大にする。
神社の楼門を突き破って出てきたのは、推定身長2.8メートル、目が完全に据わった暴君系の神鹿だった。
「鹿王・ナラマルク……」
「それ神話のやつ?本当に?」
「地元の古文書。〈シカと文明の終焉〉って本に載ってた」
ナラマルクは神々しくも目の焦点が合っておらず、口からはせんべいがポロポロ落ちている。
背後にいるシカ兵団もしゃべるし、腕組みしてる。
「異邦の者よ。せんべいか命か、選ぶがよい」
「言葉しゃべった!?!?」
「なあ、今これバグじゃない?いや、日本のバグじゃない?」
「ちょっと、これ配信続けたら運営に通報されるかも」
そのとき、ナラマルクの角が発光し、ズキュウウゥンという音とともに光線が発射される。
近くの土産屋が一軒、粉になった。
「……ヤバすぎ!どうする?!」
「タイトル変えた。【逃走中】奈良、鹿に支配されてた件でいく」
「強いなあんた……」
とりあえず命だけは惜しいので、冒険者一行は奈良公園を後にする。
「でも、今日の配信投げ銭すごい!叫びながら送金してる。」
「マジで世界、終わってんな……」
「……ところで次、どこ行く?」
「淡路島がいいってコメントにあった。」
「凄い所だね奈良って…」
旅は続く。




