お前ら、働いてくれ【ガラ妃編2】
それからのガラ妃はすっかり不良貴族‥悪い子になってしまった。元々エセ貴族、ただの貴族気取りなので仕方ないのだが‥。
ちょっと悪さをして裁判になってもすぐ全裸になって無実を証明し戦勝率100%であった。
ガラ妃は密かに義賊を目指す事にした。見つからずにそのまま奪えればよし。捕まって裁判になっても全てを脱ぎ捨てれば勝つ。負けるはずのない勝負。スリリング!エキサイティング!楽しくなりそうだ!
「それにしても、義賊って‥‥とても良い響きですこと‥。」
ガラ妃は自分に酔いしれるようにうっとりと呟いた。
最初のターゲットはフランス王国、パリのロゼリア伯爵家の秘宝、〈夜泣きのルビー〉。
夜中に石の中で誰かが涙を流しているとか、見ていると赤子の泣き声が聴こえてくるとか来ないとか‥。そんなことはどうでもよく高価で美しい盗み甲斐のあるものだ。
「宝石といわれるものが無事で居られると思わないことですわ‥!」
黒マントに身を包んだガラ妃は、まるで舞台女優のようにひとり芝居をしながら、ロゼリア邸の屋根に忍び込んだ。
泥棒のくせに、マントはひらひら、ブーツはコツコツ、隠密性ゼロ。だが、なぜかバレない。
「貴族の警備なんて、見せかけですもの。ほら、寝てますわね、あの兵士。口を開けて。」
まっすぐ宝石の間へ向かう。
途中、絨毯に足を取られたり、調度品にうっとり見とれたりしながらついに〈夜泣きのルビー〉の眠るガラスケースの前に立った。
「見つけましたわ…! 今宵、あなたはわたくしのもの…。」
ガラ妃は、得意満面でケースに手をかけたその瞬間。カチッ。何かが起動し警報が鳴った。
「……え?」
兵士たちの怒声が飛び交う。
「捕らえろ!賊だ!」
「っ!」
ガラ妃、ミッション失敗のお知らせ。
「フッ‥仕方ありませんわね‥」
無駄な抵抗はせず大人しく逮捕されたのだった。