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第三話 被害妄想

七つの大罪を倒し、訓練を行いつつも平和な日々を送っていたフューエル達。その平穏を崩す息吹は、既にすぐそこまで迫っていた。

フューエルは休日に珍しく家のソファでスマホと睨めっこをしていた。

《(…以前、あのヒビに変化は無いし何事も起こらない。関東外での堕天使の発生はちらほら報告が上がるが…。あのヒビが出来てから関東圏で堕天使が一切無くなった。あの下にいる生物は…なんなんだ…?)》

ニュース記事をスクロールしていく中、一つの見出しに目が止まる。

《埼玉県内に多数の異常な濃霧の発生…。この辺りの地域は濃霧の原因となるものがある施設も何も無かったはずだが…。行ってみるか…。》

フューエルは自宅の隠し部屋へ入り、ヴァルキリーと戦闘装備の一式を手早く装着し地上へ降りて行った。個人的なパトロールの為、緊急時の飛行とは違いかなり速度を落として飛んでいく。

約一時間程飛行したが、現状濃霧は確認されていない。しかし、町の大通りの片隅に異様な大きさの影が一瞬だが視界に入る。フューエルがその方向へ向かって飛び着地した途端、急に濃霧が立ち込める。フューエルは辺りが煙に包まれた後の数秒で戦闘態勢を整え、ヘッドセットのソナーパルスを起動する。しかし、フューエルから発しているソナーは煙を無効化せず、フューエルから数メートル先は不明瞭なままだった。

《ソナーが効かない…まさかこの煙…極小量だが質量があるのか…?》

ソナーパルスの出力を切り警戒を解かず進んで行く。しばらく進み大きな十字路が見えた時、子供の泣き声が聞こえ始める。

《子供…親と逸れたか…?》

フューエルが銃を降ろし、子供に駆け寄る。

《君、大丈夫か?怪我はない?》

子供は答えることも困難な程に泣いているが、フューエルの問いに応じるように頷いた。フューエルは子供に視線を合わせるようにしゃがみ、続け質問する。

《良かった、お母さんかお父さんと逸れちゃったのかな?》

再び子供は頷く。鳴き声は収まってきたが、人見知りなのか喋りはしない。

《分かった。今とても霧が濃くて逸れやすいからね。でも私がいるからもう大丈夫。お姉さんがお母さん達のところまで連れてってあげるからね。》

そう言うと子供は安心したかのように涙を拭いながらフューエルの手を取る。

《(子守は苦手なんだがな…。)》

そう思いつつも、子供の手を引きつつ、警戒を怠らぬように濃霧の中を歩いて行く。


《(さっきよりも霧が濃い…。有毒では無さそうだがなるべく早く出たいところだが…。)》

「あやと!」

声を聞いた瞬間に銃を構えるも、すぐに上着の内側に銃を隠す。霧の奥に人影が映り、次第に影がはっきりと視認できるようになる。母親らしき人物があやとと呼ばれた子供に駆け寄ってくる。それと同時に子供も「ママ!!」と叫びフューエルの手を話し母親に駆け寄って行く。

「あなたは…」

《お母さんですか?今起きてる濃霧はまだ晴れそうにありませんから、取り敢えず霧の外まで出ましょう。私が案内します。》

「あ、ありがとうございます…。あやと、怪我はない?怖かったよね、ごめんね…。」

《お子さんから手を離さないでください。この霧ではすぐに見失ってしまいます。こちらです。》

ヴァルキリーが霧の発生前までの地図、そしてそれを元にした現在地と、霧の発生範囲の予測を表示している。フューエルはそれに従い、親子のペースに合わせゆっくりと歩いている。

《(ここの三連曲がり角を真っ直ぐで範囲外か…。今歩いてきた距離を考えると…範囲は相当だな…。)》

フューエルが親子を脱出させた後の事を考えながら進んでいると、突然背後から「キャアッ⁉︎」という悲鳴が聞こえた。すぐに振り返り上着内の銃に手をかける。そこには、興味津々といった様子で、背骨が蛇のように長く腰から下がない堕天使が子供を見つめていた。

《(撃つにしても奴から子供が近すぎる!あの子のトラウマになってしまう!)》

フューエルは銃から手を離しヴァルキリーからダガーを取り出しブースターで距離を詰めていく。

《(気配も物音も無かった!恐らくは上級!間に合え!!)》

手を伸ばしていた堕天使が子供に触れるのにフューエルは間に合わせ無かった。しかし、堕天使は子供を攻撃せず指の横部分を使って頬を撫でる。数秒前まで鋭かった指が、まるで人間の指のように柔らかくなった状態で。

【キ、君…マイ、マ…マイ、ゴ…?オカ、サンハ…?】

フューエルはその声を聞きギリギリで攻撃を止める。それに驚いたのか、堕天使は怯えた様子で防御姿勢を取っている。その姿勢は戦闘慣れしたものでは無く、素人そのものだった。

《…敵意が無い…なんだ、こいつは…》

【ヤ、メテ…】

《(拙くはあるが…言語の意味も理解して話している…。)》

フューエルは子供を庇うように立ち、ヴァルキリーを展開する。

「お母さん、お子さんを連れて今の道を真っ直ぐ走ってください、そっちが出口です。こいつは私が対処します!」

親子は恐怖心で腰を抜かしてしまっていたが、フューエルの《早く!》の声で走って行った。

フューエルはダガーをしまいヴァルキリーに搭載された銃火器を展開する。しかし、堕天使は自身の体をトグロを巻くようにして防御姿勢崩さずに震えて怯えている。

《この霧はお前の仕業か?》

【ソ、ウ…。ケ、ケド、止メ方ガ…ワ、ワカラ、ナイノ…。オ願イ…スグニ…カエ、ルカラ…イナクナル…カラ…。トモダチガ…欲シカッタ、ノ…。】

《……名前は?》

【…エ?】

《…お前の、名前は?》

フューエルはヴァルキリーを非戦闘モードに戻す。

【エット…オ、オボエ、テ、ナイケド…タブン…パラノイア…。】

《…パラノイア、ね。》

フューエルはヴァルキリーの一部を伸ばし、そこからホログラム状の光を出し一つのボタンが付いた端末を作り出しそれをパラノイアに投げる。

【コ、レハ…。】

《そのボタンを押せば、私に繋がる。そして、私から連絡する時は大人が鳴るから、その時もボタンを押しな。これは私からのお前を生かす為の条件だ。私の許可がある時だけ地上に出てきな。それ以外の時に出てきた時は容赦無くお前を駆除する。》

パラノイアは嬉しそうに頷いた後、円状に周りだす。その中心から黒い渦が現れパラノイアが頭からそこに飛び込み、最後には全てが渦に飲まれ消えた。それとほぼ同時に市街地を覆っていた濃霧が消えた。

《(…まぁ、発信機でもあるんだが…。後でクレスに付け直して新しい同じ装置もらわないとな…)》

フューエルがヴァルキリーに今回の出来事を記録させ、天界に戻って行った。

完全に忘れてました。申し訳ありません。第三話です。

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