第二十話 初夏
七つの大罪を倒し、訓練を行いつつも平和な日々を送っていたフューエル達。その平穏を崩す息吹は、既にすぐそこまで迫っていた。
羊の堕天使を撃破した後、人間界と天界に安眠が帰ってきた。影響を受けていたフューエルも例外ではなく、警備団本部にある部屋では無く自分の家で眠りについていた。ちょうどお昼を過ぎた頃、フューエルはふらふらと起きてコーヒーを用意する。いつも真面目なフューエルにしては珍しく寝癖もそのままにぼーっと椅子に座りこむ。もうすぐ夏が来る時期。《(衣替えもしないとなぁ…)》などと考えていると、家のチャイムが鳴る。フューエルが寝起きそのままといった様子のガラガラ声で
《はい…》
とドアを開ける。そこにはエデンの姿があった。
《や、フューエルちゃん》
《…どうしたんですか、ヴァルキリーで確認した限りまだ堕天使も出てないはずですが…》
《今日は違う用で来たんだ♩お邪魔しまーす》
エデンはその小柄な体を駆使しフューエルの腕の下を通り抜け家に入って行く。
《あ、ちょっと…》
唖然とするフューエルをよそにエデンは勢いをそのままに二階に上がっていく。フューエルはため息を吐きつつも、その背を追いかけた。
フューエルが二階に着いた時、エデンはウォークインクローゼットのドアの前に立っていた。
《…それで、用事ってなんですか…》
《フューエルちゃん、そろそろ夏だね。》
《…?はい、そうですね》
《いつもの服、厚手に制作したから普段暑いよね。》
《まぁ、そうなるでしょうね》
《だから、私からプレゼントだよ》
エデンが一冊の分厚い本を取り出し、それを開く。すると魔法陣のようなものが展開され形の違う服が新たにいくつも出現する。
《これは…》
《メッシュ素材とか色々使って、涼しく過ごせるようにしたよ。形は同じマント型もあるけど、他のもあるから好きに使ってね。ちょっと…特殊なのもあるけど…》
《ありが…特殊?》
《…まぁ、制作に紅煩ちゃんも関わってると言えば分かると思うよ》
《うっ…》
《兎に角、これからも頼りにしてるよ。私も、皆も。後、その格好でピンポンには出ないほうがいいと思うよ》
エデンは出した服を渡し、閉じた本を肩掛けポーチのようにして出て行った。
《…まずは整理からだな。》
フューエルはクローゼットの中に入り、スイッチを押す。すると、冬物の服を掛けた左右の長いハンガーラックが作動音と共に縦一列に並び収納され、入れ替わるように空っぽの夏用のハンガーラックが出てきた。フューエルはそこにエデンに渡してもらった服をかけていく。
《…これだな、紅煩デザインのもの…》
手に取った服は、紅煩がいつも着ているインナーのような腹だしの服だった。
《あの野郎背中開くようにしてやがるな…ほくそ笑んでる顔が容易に想像できる…》
[貴方は嫌がっているような言動をしていますが、内心ではそうは思ってませんね。]
《お前はいつから私をおちょくるようになったんだ》
[事実を述べたまでです。]
《はいはい…》
フューエルは数の多い服を手際良くかけていき、そのうちの一つを身に付けた。
二十話です。最近暑くなって来ましたね。何気に二十日に二十話というね。




