表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/34

第十五話 愛製人形

七つの大罪を倒し、訓練を行いつつも平和な日々を送っていたフューエル達。その平穏を崩す息吹は、既にすぐそこまで迫っていた。

馬の堕天使を倒した後、フューエルは本部の団長室に報告書類を持って来ていた。

《…なるほどね。あの馬型の堕天使は今までの記録に無い個体で、もし放置してたら都市は壊滅だった、と…。》

《はい。それに、私のヴァルキリーを暴走させるマルウェアのような電磁波も放っていました。》

《まるでフューエルちゃん対策の堕天使だね。》

《…と言うと?》

《前に七つの大罪がいたように、彼らには知性が高い個体が少ないとは言えない。大罪はリーダーみたいに堕天使に指示を出していたようだしね。》

《…なるほど。七つの大罪ほどかは不明としても、堕天使共を動かしている奴がいるかもしれないと。》

《そう。君は功績が他の子達よりも目立ってるし、その強さに目を付けて消そうとしてる者がいてもおかしくないね。》

フューエルの表情が少し暗くなる。

《…可能性として、ですが心当たりはあります。》

《…》

エデンは黙っているが、静かな笑顔でフューエルの目を見ている。

《恐らく、先日逃走してから今日まで行方不明になっているカオス。私と彼女は一度戦っているので、私の戦い方もメインウェポンも知っている。それでいて、狡猾に事件を起こす事が出来る知能を持っている。この条件をクリアしているのは彼女のみです。天使の中に裏切り者が居なければ、ですが。》

《…確かに、あり得なくはない…と言うより今一番可能性が高いのはあの子だね。》

エデンは机の引き出しから一つのクリアファイルを取り出し、すっとフューエルの前にスライドさせる。

《…これは?》

《馬の件でもそうだけど、フューエルちゃん対策の敵がこれ以降出て来ないとも言い切れない。もし本当に司令塔がカオスなら尚更ね。だから、この子に会って来てくれないかな。きっと力になってくれるよ。》

《…ラヴァーズ…ドール…。確か、能力の使いようによっては天界一つを簡単に転覆出来るが故に自ら監獄にいるという…。》

《そう、その子だよ。この子の詳細はこのファイルにある。監獄にいるとは言え、罪を犯したわけじゃない。なに、良い子だから安心してよ。》

《(この人の《安心して》はたまに安心出来ないんだよな…。)》

《承知しました。失礼します。》

エデンはひらひらと手を振りながら、団長室を出ていくフューエルを見送った。


数日後、フューエルはエデンの提案に従い天界のメインとなる場所から少し離れた場所にある監獄に来ていた。

《ご苦労様です!》

《相変わらずしっかり者だな。》

フューエルは警備兵の天使に軽い挨拶をした後、そのまま入って行った。

《書類によれば…この奥の…これだな。》

罪を犯した一般の天使や天界を裏切った天使がジャッジメントにより裁かれ、収監される監獄。その殆どは特殊強化ガラス貼りとなっており、奥に行けば行くほど罪は重くなる。しかし、今回は自ら望みそこに入っている。そして、責任者であるジャッジメントとエデンがそれを許可する程の能力。

《ラヴァーズドールの檻はここの中で合ってるか?》

フューエルが重大な警備で守られている扉の前に立ち、それを守る警備の天使に話しかける。

《はい、彼女に面談ですか?》

《まぁ、そんな感じだ。》

《内部は更に扉があります。そこのもう一人がパスワードを知っていますので、ご案内します。おい》

《はっ!では、フューエル様、こちらへ。》

最初に話しかけた方の天使が金庫のような扉をゴゴゴという音と共に開けた後、二人目の警備と内部に入っていく。

その二人目がもう一枚の扉を開け、部屋には入らず扉前に待機する。

《私はここで見張りをしております。ガラス越しでしか会うことは出来ませんが、制限時間等はありませんので。》

《あぁ、分かった。》

フューエルが薄暗いガラス張りの部屋に入って行く。ガラスの前にも奥にも、部屋中に棚が張り巡らされている。その棚には綺麗なケースに梱包された人形がびっしりと、丁寧に並べられていた。しかし、それでも入りきらないのか至る所に人形が散らばっている。その部屋の中心に、一人の女性が座り込んで人形を編んでいた。

《…聞いてたよ。フューエル。だったよね。始めまして。》

壁に設置されたスピーカーから低くも透き通るような声で挨拶をした彼女は立ち上がりガラスに右手を当てる。片目は赤く、もう片目は灰色に縫い目のような模様が複雑に現れている。

《エデンからは通達済み、か。君が私の力になるだろうと聞いていたんだが。》

《うん。そうしろって言われてるよ。だから…はい。》

彼女が棚の一部から二つ箱を取り出し、ガラスの前に持ってくる。すると、箱を持った腕がガラスを透過し、フューエルに箱を手渡す。

《…これが…?》

《君の戦い方は聞いてる。私も…この生活が無くなるのは困る。だから、君専用に作った。危ない時に使って。》

渡し終えた瞬間には腕を引っ込め、再び人形を編み始める。

《…あぁ、知ってると思うけど。一応名乗っておくわ。ラヴァーズドール。スペルは、Lovers_Doll。その人形は、ちょっと癖が強いかもね。頑張って。》

《…ありがとう、感謝する。》

《………メンテナンスは私しか出来ないから、壊れたら持って来て。》

フューエルが部屋を出て扉が閉まる直前、ラヴァーズはそう呟いた。

第十五話。実はこの子以前ちらっと出て来てたりする

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ