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第十話 因縁

七つの大罪を倒し、訓練を行いつつも平和な日々を送っていたフューエル達。その平穏を崩す息吹は、既にすぐそこまで迫っていた。

リミッターを捕らえ、蛇の大型堕天使を討伐してからはや数日。いつもの訓練場で部下達が鍛えている中、フューエルは珍しくあぐらでぼーっと空を眺めていた。それに気付いたスモークはフューエルの頭を軽く銃身で小突く。

《珍しくぼーっとアホヅラしてんな。お前らしくない。》

《ここ数週間…堕天使だのリミッターだの連戦が続いた…。流石に疲れた…。》

《異常事態が今までに比べりゃ軽く少なめだしぼけーっとすんのもいいけどよ、やる時はちゃんとしてくれよ〜》

《分かってるよ。》

軽いため息と共にフューエルは立ち上がり、スモークは休憩室へ戻って行く。

《(確かに最近の事象は予兆が多いし…今のところは地上が壊れるレベルの災害ではない…。考えすぎも良くないとは思うが…何か引っ掛かるんだよなぁ…。)》

フューエルはもやもやした気分のまま、部下達の訓練の指揮を再開した。



その頃、あの騒ぎとは無縁な町にて。目の独特な模様を隠し普通の人間として地上で生活するカオス。いかなる理由があろうと一切の戦闘行為を行わず、平穏に暮らす。それがカオスが地上で暮らす条件だった。

《…今日は冷えるわね。鍋にでもしようかしら。…冷蔵庫何にも無いんだったわ…。買いに行かなきゃ…。お金無い…。あいつらの支給額少なすぎるのよまったく…。》

などとぶつぶつ言いつつも準備を整える。

《(野菜関係はいつもの八百屋さんにでも行こうかしら。あの人割引してくれるし…あとは…)》

色々なことを考えながら歩いていると、カオスの視線の先に黒服にネックウォーマー、赤と灰色のツートンウルフの髪型の少年が見える。それが誰なのかを認識した瞬間に目の模様が戻り少年に気付かれないように隠れる。

《(カタストロフィ…なんでこんなとこにいるのよ…。もうこのルート使えないじゃない!!)》

カオスは渋々引き返し、本来向かっていた方とは反対のスーパーに入って行く。

数十分かけ、店からカオスが出てくる。

《(やっぱりスーパーだと高いし…八百屋さんより遠いからしんどいわね…。カタストロフィさえいなければいつも通りだったのに…。彼に気付かれでもしたら戦闘はきっと免れないわ…。)》

少し猫背気味になりつつもエコバッグと入りきらなかったビニール袋を持って家に向かう。

《(にしても食費がギリギリ…本当に最低限しか渡してきてないわね…。どんだけ信用ないのかしら。)》

家の近くの曲がり角を曲がった瞬間、カオスは走ってきていたカタストロフィと鉢合わせ、そのままぶつかった。

「いつつ…すんま…せ……」

カタストロフィが言い切る前に目の前にいるのが誰なのかを認識した瞬間、普通の瞳だった彼の目に紋様が浮かび上がる。それと同時に右腕が黒く染まり鋭い爪がカオスを襲う。カオスは腕でガードしたが、大きな切り傷を負った。

「やっと…何十年何百年も探してた…。光壊し、カオス!今ここで!!故郷の仇を!!!」

《はぁ………最悪だわ。本当に争う気なんてもう無かったのに…。結局こうなるのね。》

カオスの髪が伸び、触手のようにうねうねと動いている。そのどれもが刺突の構えをとるように一斉にカタストロフィに向く。カタストロフィの足が黒く染まり、歪に変化する。

「俺はあの時とはもう違う!!」

カオスは髪でカタストロフィの攻撃をいなし続ける。しかし、次第に速度が上がっていく攻撃を対処しきれなくなり、髪で作っていたシールドが一瞬だけ緩み、その隙を突かれ胴を肩から切り裂かれる。

カタストロフィがその勢いのまま着地し、その一瞬の硬直時間に強く蹴りを叩き込み吹き飛ばす。カオスは態勢を崩し、地面には血溜まりができる。

《随分成長したじゃない…。昔はあんなに弱かったのに見違えたわね。》

「今更師匠気取りか?言っただろ、俺はあの時とは違うんだ。」

カタストロフィの腕や足からは赤黒いオーラが出続けている。カオスに与えた傷が少しずつ治っていっている。

《あら、勘違いしないで欲しいわ。あなたの…いや、私達の実家を滅ぼした時から、私だって成長してるのよ?》

カオスの胸のベルトに付いていた帯状のパーツがベルトからパージされ、空中で分解され再構築されていく。

次第にそのパーツ達は、禍々しい剣と盾になった。

「なっ…」

《さぁ、休憩はできたかしら?ここから…。》

カオスが剣を構えた。その目付きは、先程までと違い異様な冷たさを帯びていた。

《ラウンドツーよ。》

言い切った瞬間、目にも止まらぬ速さでカタストロフィに斬りかかる。カタストロフィはギリギリで反応し腕でガードする。しかし、能力使用によって跳ね上げた防御力でさえ砕き、ダメージを与えた。その連撃は止まることを知らないかのようにカタストロフィを襲い続ける。防戦一方のカタストロフィは追い詰められ、腕での攻撃はできないほどにダメージを受けてしまった。そこでやっとカオスの攻撃が止まり、カタストロフィは片膝をつく。

《ここまでみたいね。私が戦い方を教えた時は、もうちょっと根性あったと思うのだけど。》

カオスはそう言いながら盾の中心に剣を納める。

《けど、反射神経は相変わらず高かったわね。全ての攻撃で急所へのダメージを防いでた。…そうね、私がいなくなった後もサボらずに鍛えてた事…それに免じて最期に一撃だけ受けてあげるわ。かかってきなさい。いつでもいいわよ。》

カオスは左手に持っていた盾と剣を投げ捨てる。

「あぁそうかよ……だったらここで………」

カタストロフィの砕けた黒い腕に破片が集まり、エネルギーの塊を作り出す。

「大人しく死ね」

カタストロフィが自身の全てをかけ飛びかかる。しかし、もうどうにも避けられなくなったのを見てからカオスが不気味な笑みを浮かべた。その瞬間、痛烈な音と共にカタストロフィの視界が血で染まる。その拳がカオスに届くこともなく。

《私も言ったように、成長してるのよ。騙し討ちだって生存の鍵よ。》

最初の攻撃でカオスが流した血と、いくつも切り落とされた束の髪が音も無く集まっており、攻撃を仕掛けたカタストロフィの足元にいた。その塊は磁石に反応した磁性流体のように、茨となってカタストロフィを串刺しにしていた。その茨は声帯まで貫いており、もう喋ることも叶わない。

《あらあら、遺言が大人しく死ね、だなんて可哀想ね。けれど、あなたを哀れむような家族は…もういなかったわね。》

カオスが自身を睨み続けるカタストロフィの顎を撫でながら語る。カタストロフィの腕が次第に人間の腕に戻っていく。

《もう限界かしら。安心なさい?貴方は私が綺麗に埋めてあげるわ。》

カタストロフィの瞼が落ちていき、聴力までぼやけてきた中で、うっすらと、聞き覚えのあるエンジン音が鳴り響いた。

第十話。因縁の対決ですね。

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