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第70話 護衛クエスト

 俺たちがウグマに滞在して一週間が経過。

 その間、新しい家を整理したり、街を案内してもらった。


 そして夕食の時間。


「アル、ここでの生活も慣れてきたわよね?」

「ああ、もう街でも迷わない。大丈夫だよ」

「ふふふ、二日目なんて、あなた帰って来れなくなっていたものね」

「ちょっ! それは別にいいだろ!」

「エルウッドがいなければ、ウグマで迷子になってたものね」

「うるさいな」

「ウォウウォウ」

「エルウッドまで! なんだよ!」

「ふふふ」

「ウォウォウォ」


 レイとエルウッドに笑われながら、夕食を食べていた。


「さて、明日はどうするの?」

「ギルドへ行くつもりだよ。どんなクエストがあるのか見たいからね。できそうなものがあったら受注しようと思う」

「そうね。そろそろクエストに手をつけてもいいわね」


 翌朝、俺たちはウグマの冒険者ギルドへ向かった。

 受付横にある大きなクエスト掲示板の前で、一つ一つクエストを見ていく。

 クエストはランクごとの掲示板に貼られている。

 俺はBランクまでのクエストが可能だ。


 何気なくクエストを見ていたら、フロアがざわついていた。


「あいつってダーク・ゼム・イクリプスを撃退した奴じゃないか?」

「ってことは、横の女はレイ・ステラーか。めっちゃ美人じゃねーか」

「噂では、あいつらギルド初のエンドース契約したらしいぜ」

「マジか! じゃあ装備も全部タダなのか!」

「お、おれ、サインもらってこようかな」


 様々な声が聞こえる。


「さて、アルどうする?」

「そうだな」


 Bランクはほとんど狩猟や討伐クエストだ。

 Cランクの掲示板を見ると、採取クエストもある。


「採取なんてどうかな?」

「ちょっとアル。あなた、Cランク以下のクエストは受注できないと思うわよ?」

「え? どうして? 自分のランク以下なら大丈夫でしょ?」

「普通はね。ふ、つ、う、は。あなたはもう普通じゃないから、下位ランクのクエストは許可されないでしょう。他の冒険者の仕事を取ってしまうことになるもの」

「ええ! それは困るよ!」

「ふふふ、実力に見合ったクエストをしろってことね」

「でもさ、そうなるとレイはAランクだから、Bランクのクエストは受注できないでしょ?」

「私は大丈夫よ。だって普通だもの」

「へえ、騎士団団長やってたAランク冒険者が普通なんだ」

「ちょっと何よ! あなたと一緒にしないでよ! あなたは正真正銘の化け物なのよ?」

「ウォウォウォウォ」


 俺たちのやり取りを聞いて、エルウッドが笑っていた。


 その後も掲示板を見て回ると、気になるクエストを発見。

 Bランクのクエストだ。


 ◇◇◇


 クエスト依頼書


 難度 Bランク

 種類 【至急】護衛

 対象 隊商

 内容 ウグマからモアまでの護衛

 報酬 金貨十枚

 期限 依頼者のスケジュールに沿う


 編成 Bランク二人以上

 解体 不要

 運搬 不要

 特記 詳細は契約書記載 冒険者税徴収済み


 ◇◇◇


「ねえ、レイ。護衛クエストは初めてだからやってみたいんだけど」

「そうね、いいわよ。至急案件だから、今日にでも依頼者と会えるでしょう」


 受付でクエストを受注し契約書にサイン。

 至急案件のため、すぐにギルドの連絡員が依頼者の元へ知らせに走る。

 しばらく待つと依頼者がギルドへやってきた。


 俺たちはギルドの個室へ移動。

 依頼者と顔合わせだ。


「あなたたちが受注してくださった冒険者の方々ですか?」

「はい、アル・パートです」

「レイ・ステラーです」

「隊商のリーダーをやってます商人のザール・マハールです」


 ザール・マハールは三十歳くらいの男性だ。

 痩せ型で褐色の肌をしている。

 身なりは良く、頭にターバンを巻いていた。 


「失礼ですが、まだ子供のようですけど? Bランク以上で依頼しましたし、それなりの金を払っていますが?」


 ザールは俺たちを見て、あまりにも若すぎると思った様子。

 あからさまに不機嫌だ。

 だが、レイは表情を変えず冷静さを保っている。


「ご安心ください。私はAランクです」

「え! Aランクの方が護衛してくださるのですか?」

「はい、ご安心いただけましたか?」

「ん? レイ・ステラーさんと仰りましたか?」

「ええ、そうですわ」

「ま、まさか、クロトエ騎士団の元団長という……」

「よくご存知で」

「な、なんということだ! ご高名はかねてから存じ上げております。ああ、この巡り合わせ、我が神に感謝します」


 ザールは空に向かって祈りを捧げている。


「まさか、かの有名なレイ・ステラー様が護衛してくださるとは。これは別途、成功報酬も支払わねばなりませんな」

「それには及びませんわ。ギルドから正当な報酬を受けますので」

「そうはいきませんよ。はははは」


 ザールは元騎士団団長が護衛ということで、機嫌を良くしながらクエストの説明をしてくれた。


 ウグマから国境の街モアまで、約五百キデルトの道中を護衛。

 隊商は馬車十台の中規模編成。

 隊商にも警備隊はいるが、モンスターの襲撃を考えて冒険者に依頼したそうだ。


 移動スケジュールは一日約三十キデルト。

 約十七日間の護衛だ。


 モアからウグマへ戻る日数まで考えると、一ヶ月の長期クエストになる。


「可能であれば明日にでも出発したいのですが、問題ありませんか?」

「ええ、大丈夫ですわ」

「ありがとうございます。それでは、明日の日の出とともに出発します」


 俺たちは自宅へ戻りクエストの用意。

 執事のステムにクエストのスケジュールを説明。

 すると、この日の夕食はクエスト成功を祈願して、豪勢な食事にしてくれた。


 翌朝、日の出前に自宅を出発。

 これほど朝早いのに、執事のステム、メイドのエルザとマリン、庭師で馬の世話係のミック、全員が見送ってくれた。


 俺は開発機関(シグ・ナイン)から提供された軽鎧(ライトアーマー)を着ている。

 今まで着ていた鎧より軽く、強度は高い。

 関節の可動範囲も広く動きやすい。

 さすが冒険者専用の装備を作るシグ・ナインだ。

 今回は護衛ということで、弓と矢も提供してもらった。

 エンドース契約の凄さに驚くばかりだ。


 俺とレイとエルウッドは、約束の時間より前に待ち合わせ場所へ向かう。

 すると、隊商はすでに待機してした。


「おはようございます。レイ様、アルさん」


 ザールが出迎えてくれた。

 挨拶をして、隊商はすぐに出発。


 日の出の祝福を受け、俺にとって初めての護衛クエスト開始となった。

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