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鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜  作者: 犬斗
第二十章

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第335話 アルと六人の女性たち

 俺はシドの珈琲カップにおかわりを注ぐ。


「シド、通常の狂戦士(バーサーカー)は超高音の咆哮が発動のきっかけだったんだろう? 狂戦士毒(バーサルク)の発動条件はどうなんだ?」

「発動のきっかけはない。感染したらすぐに発動する」

「そうか。……そういえば、ノルンは命令を聞くと言っていた。それにウルヒ国王陛下に聞いたことのない言葉を発していたよ」

「ふむ。何か命令できる言語があるのかもな。狂戦士毒(バーサルク)感染者相手に命令できると厄介だぞ」


 感染したらすぐに発動、そして停止することはない。

 さらに命令も聞くとなると、確かに厄介だ。


「レイの狂戦士(バーサーカー)は血清で治ったよね。狂戦士毒(バーサルク)はどう? 解毒剤って作れる?」

「いや、それがな……無理なのだ」

「え? 無理? ノルンは解毒剤を作れると言っていたぞ?」

「ふむ。もしかしたら私の想像を超える技術があるかもしれぬ。だが、私の予想だとブラフだ」

「なるほど。解毒剤をほのめかして、こちらの動きに制限をかけているのか」

「その可能性が高いだろう。束縛すると解毒剤が手に入らないとか、ノルンに脅されたのだろう?」

「その通りだよ」

「現状では狂戦士毒(バーサルク)は回復しない。仮にだ、仮に回復しても助からない。ノルンの意図は分からないが、デ・スタル連合国はもう終わりだ」


 なぜ国を捨てるのだろう。

 ノルンは古代王国を建国した初代国王だし、その古代王国の滅亡も見てるはずだ。

 また繰り返すのか。

 俺には理解できない。


 俺は珈琲を飲み干した。


「いずれにしても、ノルンと話さないと分らないことばかりだ」

「そうだな。明日には最も深き洞窟(エルサルド)に到着するだろう」

「ノルンはいると思う?」

「分からんが、他の場所は考えられない」

「実際行って考えるか。じゃあ皆のところへ戻ろうか」


 シドとの話を終え食堂へ戻る。

 扉を開けた瞬間、葡萄酒の芳醇な香りが俺を包み込んだ。


「ど、どうした? 葡萄酒でもこぼしたか?」


 食堂に入ると、床に葡萄酒を撒き散らしたような強烈な匂いが広がっていた。


「マルコしゃん! どうしてもっとアプローチしないんれすか!」

「そ、そんなこと言われても……マリンさん」

「もっと積極的に行くべきでしゅ! あれほどの女性でしゅよ! 今逃したら二度と出会えません! いや、それどころかマルコしゃんはもう二度と結婚できましぇん! 今どき奥手なんて流行りませんよ! 弟に先を越されてるんですよ!」


 呂律が回っていないマリンに説教されて、背中を丸めているマルコ。

 マルコって、世界に影響力を持つほどの大臣なんだけど……。


「そうです。行くべきですマルコ。ユリアは待ってますよ」

「オ、オルフェリアさん」


 オルフェリアは酒に酔わないはずだ。

 それなのに、こんな会話に参加している。


「実は今まで彼女に本気でプロポーズした男性はいないのよ。皆ユリアの能力に尻込みするの。だからねマルコ、彼女は意外と恋愛を知らないの。押しに弱いわよ。本人は強がっているけどね。ふふふ」

「レ、レイ様。ありがとうございます」


 レイまでアドバイスしている。

 しかも恐ろしく的確だ。


 マルコたちの様子を見ていると、ローザが葡萄酒のグラスを片手にこちらへ歩いてきた。


「ユリアにプロポーズしないマルコが、女性陣に説教されていてな。見ていて面白いのだ」


 ローザの隣には弟のアガスがいる。


「アガス、お兄さんを助けてあげないの?」

「今行くと、ローザさんと結婚できた僕は嫌味を言われそうで……」

「アハハ、確かにね」


 俺に気付いたエルザが、葡萄酒とグラスを持ってきた。


「アル様も飲まれますか?」

「ありがとうエルザ。じゃあ、一杯貰おうかな」

「かしこまりました」

「それにしても、マリンは面白いなあ」

「あの……本当に申し訳ございません」

「なんで謝るの? ああいうところもマリンの魅力じゃん。アハハ」

「うふふ。はい、そうです」


 エルザが笑顔で応えてくれた。


「でも、少しだけマルコを助けてあげようかな」


 女性陣に囲まれ、背中を丸めているマルコ。

 俺はそんなマルコの前に立ち、マリンを指差した。


「マリン。人のことはいいんだよ。君はどうなんだ?」

「アアアア、アル様! 嘘でしょう! それはダメれす! 今のはダメれす!」

「え?」

「酷い! 信じられない! アル様酷い! うわああああん!」


 マリンが大声で泣き始めた。

 嘘泣きだ。

 どう見ても嘘泣きだ。

 目が笑ってる。


「そうだ! アル君! 今のはダメだ!」

「アルは幸せすぎて周りが見えないようですね」

「アル、私は何も言わないわ」

「国王になって、世界一の美女と結婚しても、未だに女性の気持ちが分からぬとはな」

「アル様、マリンを泣かしましたね」


 嘘でしょ、ローザやエルザまで?


「うわああああん」


 さらに大声で泣くマリン。

 このマリンをなだめる方法はただ一つ。


「分かった! 分かったよ! ごめん! ごめんって! 帰ったらマリンが欲しがってたバッグ買ってあげるから!」

「え? 本当でしゅかあ?」


 一瞬で泣き止んだマリン。

 いや、マリンはそもそも泣いてない。

 満面の笑みを浮かべている。


「アル君! マリンだけ特別はずるいぞ! アタシも欲しい」

「フフ、アル。私も欲しいです。シドは何も買ってくれないので」

「ねえ、私も欲しいわ」

「なんだ、皆に買ってくれるのかアルよ」

「じゃ、じゃあ、私もいいですか?」


 女性陣全員が俺を見る。

 どうしてこうなったのか。

 これもマリンの策略か。


「も、元はといえばマルコのせいだ! マルコ! 半分出すんだ!」

「え? 私がですか!」

「そうだ! マルコがはっきりしないからいけないんだ!」

「わ、分かりました!」


 すると、レイがマルコの背中に手を置いた。


「ふふふ。マルコはダメよ。そのお金でユリアに買いなさい。とっておきのものをね。大丈夫、きっと上手くいくわ。私たちはアルに買ってもらうから安心して」

「そうれす! アル様一人で私たちに買うんれす! 悪いのはアル様でしゅ!」


 くそ、マリンに酒を飲ませたのは誰だ。


「分かったよ! 皆欲しい物買ってくれ! 全部俺が払うよ!」


 まあ俺には使わない金があるから別にいいし、皆が喜んでくれるなら、それはそれで嬉しい。

 今回も命の危険がある遠征だ。

 特別ボーナスのつもりで買ってあげよう。

 だけど一つ納得できないことがある。


「でも、オルフェリアはシドに買ってもらってよ!」

「ア、アルよ。それは酷くないか? 愛する妻をないがしろにしないでくれ」

「愛する妻なら自分でやれっての!」

「いや、ここは国王陛下を立ててだな」

「あーもう、うるさいな! 分かったよ! 買うよ!」


 六人の女性が一斉に立ち上がり、歓声を上げ拍手している。


「……本当にもう」


 こんなに楽しいのに、どうして国を捨てるのだろう。

 俺には全く理解できない。

 捨てるどころか、俺は命をかけてでもこの国と、そして仲間たちを守りたいと思っている。

 ノルンだって素晴らしい仲間がいるはずだ。


「さあ、じゃあアル君の奢りでもっと飲むぞ!」

「「「「おお!」」」


 リマの音頭で全員がグラスを掲げた。


「マリン、俺も飲むぞ!」

「もちろんれす! アルしゃまバンザイ!」


 俺は六人の女性の輪に入った。

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