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第22話 弟子へ送る剣

 両手を腰に当て、少し呆れたように溜め息をつくレイさん。


「変な噂を流すな。まあよい。ちょうど私もアルとクリスを探していたのだ」


 今のレイさんは、騎士団隊長の口調に戻っている。

 これは俺もレイ様と呼んだ方が良さそうだ。


「アル! お前レイ様と知り合いなのか!」

「う、うん。俺が前回ラバウトに来た時、偶然レイ様と知り合ったんだ」

「そうだったのか。レイ様、大変失礼いたしました。して御用とは?」

「クリスよ。貴殿の腕を見込んで、私とアルに剣を打ってもらいたいのだ」

「アルだけじゃなく、レイ様にも? 騎士団用ではなく、あくまでもレイ様個人のオーダーメイドということですか?」

「そうだ。もちろんアルの剣もオーダーメイドだ」

「そ、それは……」


 クリスが少し考え込む。


「分かりました! ぜひやらせてください! 騎士団隊長様の剣を打てるなんて、鍛冶師として最上の喜びです!」

「ありがとう。よろしく頼む」

「ところで、素材はどうしますか?」

「それについては……」


 街中で立ち話する内容ではないので、クリスの店へ移動。

 クリスの店は高級店が立ち並ぶ区域の中心部にあり、とても人気が高く、訪れる客も多い。

 クリスはイーセ王国でも有数の鍛冶師で、工房では弟子たちが武器や防具を作っていた。


 俺たちはクリスの仕事部屋に入室。


「剣の素材だが、アルが持っている」

「そうか! アルなら希少鉱石を持ってますな! アル、見せてみろ」


 俺はバッグをテーブルに置き、取り出した鉱石をクリスに手渡す。


「こ、こりゃお前……。虹鉱石と黒紅石じゃないか! し、しかも……、こんな高品質な鉱石は初めて見たぞ! 今まで隠し持ってたのか?」

「隠し持ってたわけじゃないけどね。売らずに持っていたんだ」

「これはお前、市場に流すと金貨数五十枚はくだらないぞ!」

「価値があるのは俺も分かるよ。だからこれをクリスに打って欲しいんだ」

「お、お前……」


 クリスの瞳が少し滲んでいる。


「しかし、アルよ。オーダーメイドで、さらにこの素材ともなると、それ相応の時間と料金をいただくことになるぞ」

「一応金貨は持ってきたよ」


 金額は分からないが、一応俺にも蓄えがある。

 それを使うつもりだった、


「その支払いは私がする」

「「え?」」


 俺とクリスは同時に驚き、レイさんの顔を見た。


「クリスよ、金額は気にするな。貴殿の実力を存分に発揮して、この素晴らしい素材でアルと私に最高の剣を打ってくれ」

「そ、それはもちろんです!」


 クリスが胸を張っている。

 だが俺は自分で支払うつもりだった。


「レイさん! 自分の分は自分で払います!」

「レイさんだと? ア、アル、お前」


 驚いた俺は思わず素が出て、レイさんと発言してしまった。

 クリスが目を見開き驚いている。


 レイさんは、俺がレイ様と呼んでいたことにあえて同調してくれていたが、俺自身が失敗してしまった。

 レイさんも思わず苦笑いだ。


「まあよい。私とアルは友人であり、私が剣を教えた弟子でもあるのだ」

「アルがレイ様の弟子! だ、だって、レイ様は弟子を取らないことで有名じゃ」

「クリスよ、余計なことは言わなくてよい」

「これは失礼いたしました」


 レイさんは本来剣を教えないのだが、俺は無理やり教えてくれるように頼んでしまった。

 それより料金の支払いだ。


「レイさん、ありがとうございます。でも、自分の分は自分で払います」

「何を言ってるの? 元々素材はアルのものでしょう?」


 レイさんの口調が素の状態に戻っている。


「し、しかし……」

「いいのよ。だって、あなたは私の初めての弟子。師匠が愛弟子に剣を送るのよ? おかしなことではないでしょう?」


 これはもう断れない。

 ありがたく頂戴することにした。

 何より、レイさんに弟子と言ってもらえることが本当に嬉しい。


「分かりましたレイさん。本当にありがとうございます」

「弟子は素直に受け取ればいいのよ。ふふふ」


 そのやり取りを見ていたクリスは、驚きつつも感動している様子だ。


「レイ様! アル! 俺が最高の剣を打ちます! 期待してください! ガハハハ」


 そしてしばらくの間、三人で新しい剣の打ち合わせをした。

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