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鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜  作者: 犬斗
幕間

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第192話 戦士たちの休息4

 ついに開催を迎えたアフラ在住者による釣り大会。

 出場は全五チーム。


 アルとレイのSランク冒険者チーム。

 シドとオルフェリアの夫妻チーム。

 マルコとアガスのトーマス工房チーム。

 ジルとリマの騎士団チーム。

 ジョージとローザの師弟チーム。

 そして、審査員はユリアとエルウッド。


 ルールは単純明快。

 正午までに最も大きな魚を釣り上げたチームの勝利。


 賞品はローザとマルコが作り上げた、ヴェルギウスの素材で作った竿とリールのセット。

 この世でたった一つの竿とリールだ。

 金貨千枚は下らないだろう。


 ◇◇◇


「ねえアル。あなたは虫が苦手でしょ?」

「うん、でもこれをつけないと釣りできないからさ。レイは平気?」

「私は大丈夫よ。ただの虫でしょ?」

「アハハ、心強いよ」

「はい、つけたわよ。じゃあアル。教えてもらってもいいかしら?」

「ああ、任せて」


 レイは人生で初めて釣り竿を握る。

 アルに教えてもらいながら投げ釣りを開始。


 だがそのアルも釣り歴は二週間で、まだ一匹しか釣ったことがない素人だった。


 ◇◇◇


「そういえば、ジョージ様の釣り歴は六十年と言っていましたね。強敵ですよ?」

「ハッハッハ、オルフェリアよ。私の釣り歴は千五百年だぞ。歴史が違うのだよ」

「……その割にさっきから釣れてませんが?」

「な! 何を言っておる! 私はこれからなのだ!」


 このチームはオルフェリアがすでに十匹釣っていた。

 だが、まだ大物と言える魚は釣っていない。


 ◇◇◇


「アガス、このリールは少し抵抗が大きいな。少し調整しよう」

「兄さん、この竿はしなりが大きいかもしれない。布を巻いてしなりを抑えよう」


 このチームは釣りよりも道具の調整に余念がなかった。


 ◇◇◇


「ローザよ、どうだ?」

「ダメだ。日が上がって渋くなってきた」

「フォフォフォ、まだまだ若いのう」

「ジイさんはどうなんだよ?」

「儂か? 見てみろ」


 バケツには溢れるほどの魚がいた。


「す、凄いな。さすがだ」

「魚もモンスターも一緒じゃ。習性を理解して、自然に逆らず釣るのじゃ」


 白い髭をなでながら説明するジョージ。

 その姿はまさに釣り仙人だった。


 ◇◇◇


「ねえ、アル。これでいいのかしら?」

「そうそう、浮きが沈んだら釣り上げるんだよ」

「アル! 釣れたわ! 嬉しい、ふふふ」

「初めてでもう釣ったの! 凄い!」

「でもちょっと小さいかしら?」

「これからだよ。時間はまだある。全然大丈夫さ」


 この時のアルは、レイが初めて釣ったことをただ喜んでいた。


 だが、アルは忘れていた。

 レイが神速と呼ばれる人類最速の剣士だということを。


 ◇◇◇


「オルフェリアよ! レイが釣り始めたようだぞ!」

「神速のレイに当たりが出ましたか! 私も負けませんよ!」


 相変わらずシドは釣れていないが、オルフェリアが尋常ではないスピードで釣り上げていた。


 ◇◇◇


「アル! また釣れたわ!」

「凄いじゃないかレイ!」


 レイは浮きが沈むと同時に反応していた。

 恐ろしいほどのスピードだ。


 そのため餌だけ取られるようなことはない。

 それどころか魚にとっては、釣られたことすら理解できていないほどのスピードだった。

 いよいよ、レイの本気が見えてきた。


 ◇◇◇


 観戦している騎士たちがどよめいている。


「おい! レイ様のスピードが凄すぎるぞ!」

「俺の実家は漁業をやってるが、あんなに速い竿さばきは見たことない。竿先が見えない……」

「レイ様って今日が初めての釣りなんだろ?」

「才能がある御方は、何をしても凄いんだな」

「ジル団長の釣りも凄いぞ!」

「それに引き換え、うちの隊長はまだ一匹も釣ってない……」


 ◇◇◇


 トーマス工房の職人たちは大爆笑していた。


「ひーひっひっひ、うちのボスたち釣りしてないぞ!」

「がっはっはっは! ゴホッゴホッ! ダメだ! 笑いすぎて息ができない!」

「あの人たちすぐ開発しちまう。ギャハハハ」

「ひゃはははは! 最高だぜ! あれこそ職人だ! あー、腹いてー!」


 ◇◇◇


「リマ、あなたさっきから何も釣ってませんよ?」


 ジルはすでに二十匹ほど釣っていた。


「アタシは大物狙いだっつーの!」


 次の瞬間、リマの竿が折れるかと思うほどの勢いで曲がった。


「来た来た来たあああっ!」


 リマは力一杯竿を立てる。

 だが竿を引く力は凄まじく、リマの身体が引っ張られていた。

 騎士団でトップレベルの筋力を誇るリマですら引きずられる。


「こ、これはヤバいぞ!」

「リマ! 頑張ってください!」

「ジル団長! これを釣ったら優勝間違いないぞ! 給料上げてくれ!」


 リマはパワーだけの剣士ではない。

 スピードやテクニックも持ち合わせている。


 巧みに竿を動かし、小刻みにリールを巻く。

 竿先の角度を調整し、即座に踏み込む足を切り替える。

 その姿は完全に騎士の一騎打ちだった。

 騎士団からも応援が飛ぶ。


「リマ様! 頑張ってください!」

「隊長! もう少しです!」


 リマは必死でリールを巻く。 


「ぐおおお!」


 大声を上げ、ついに釣り上げたリマだった。


 ◇◇◇


「ローザ! 超大物が来たのじゃ!」


 凄まじい勢いでジョージの竿が曲がる。


「こ、これは凄いぞ! ジイさんでかした!」

「儂らの優勝じゃ!」


 ジョージは一気に竿を立てた。


「グガッ!」

「ジイさん大丈夫か! どうした!」

「こ、腰が……」

「ジイさん! ジイさん!」


 ジョージの竿に超大物がかかったのだが、ジョージの腰は耐えられなかったようだ。

 ジョージは身動きが取れなくなってしまった。


「ユリア! 救護班を!」

「はあ、そんなものないわよ。全く……歳なのに無理しちゃって」


 ローザが叫ぶと、審査員のユリアがジョージの元へ歩み寄る。

 ジョージの腰をさすりマッサージするユリア。


「あとでオルフェリアに診てもらいなさい」


 ◇◇◇


「シド! 今日一番が来ましたよ!」

「いいぞ!」

「レイには負けませんっ!」


 オルフェリアは持てる実力を全て発揮。


「解体師の私を舐めないでいただきたい!」


 世界一の解体師であるオルフェリアは、魚の習性も熟知していた。

 恐らくジョージ以上の知識だろう。


 竿の引き具合や逃げる方向などから瞬時に魚種を特定。

 魚種に合わせた動きで釣り上げた。


 ◇◇◇


「きゃっ! アル! これ大きいわ!」

「レイ! 頑張れ! 糸を緩めると切れるから慎重に!」

「分かったわ!」


 アルもレイも素人過ぎて気付いてないが、凄まじい竿の曲がりに強烈な引き。

 間違いなく超大物だ。


 だが、コツを掴んだレイの敵ではない。

 魚の動きを完璧に読み、呼吸を整え一瞬で釣り上げた。


 ◇◇◇

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