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鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜  作者: 犬斗
第十一章

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第180話 予想できない展開

「さて、困ったな」


 倒れたティル・ネロを見つめるシドの眉間に、大きなシワが寄っていた。


「ティル・ネロの討伐なんて世界を揺るがす大事件だぞ。なにせクリムゾン王国の騎士団は、ティル・ネロの襲撃で壊滅寸前まで追い詰められたからな」

「シド。この完璧に残ったティル・ネロの死骸ですが、このまま持ち帰ればジョージ様も喜ぶでしょう」

「ふむ、モンスター学の発展や事典掲載のためにも、ティル・ネロは持ち帰りたいところだが……」


 レイがティル・ネロの鱗を触り「凄いわね」と呟いている。

 そしてシドの顔に目線を移す。


「貴重なモンスターですもの。一旦戻りましょう。サルガを出てまだ三日目の朝。進んだ距離は百キデルト程でしょう? こことサルガを往復しても一週間のロスにもならないわ」

「そうだな。ティル・ネロを放置するのはさすがに惜しい。戻るか」


 レイの提案を受けたシド。

 するとオルフェリアが嬉しそうな表情を浮かべた。


「では昨夜狩猟したティラキノクスの素材も持ち帰りましょう」

「分かった。ユリアに大鋭爪鷹(ハースト)を飛ばして、一旦帰還する旨を伝えておこう」


 ティル・ネロは解体せず、寝台荷車(キャラバン)の拡張した荷台へ積むことになった。

 シドが発明した複数の滑車を組み合わせたクレーンという装置を使い、ティル・ネロの巨体を運び込む。

 だがそれでも荷台からはみ出すほどの大きさだった。


 シドが荷台を見つめて苦笑いしている。


「このクラスの大型モンスターになると、拡張した寝台荷車(キャラバン)でも積み込みは厳しいぞ」

「ああ、いつもは解体するからな。シド、空を飛ぶ乗り物は大型モンスターも運べるの?」

「うむ、そのつもりで設計している。竜種クラスになると体長は二十メデルト近くあるしな。それにもしかしたら、私でも知らないモンスターに遭遇する可能性だってある」

「二千年も生きているシドが知らないモンスターなんている?」

「当たり前だろう。空を飛ぶなんて私でも初めてなんだぞ。世界は広い。空も海もそうだが、未知の領域なんていくらでもある」

「そうか。空を飛ぶ乗り物が完成したら、そういったところも行ってみたいな」


 シドですら知らないモンスターがいるかもしれない。

 もしそんなモンスターに遭遇できたら、モンスター好きなオルフェリアは大喜びするだろう。


 ティル・ネロを荷台に積み、昨日狩猟した暴王竜(ティラキノクス)の場所へ行く。

 残念ながら一晩で肉は食い散らかされていた。


 恐らく夜行性で腐肉を漁る腐食獣竜(スカベラス)の仕業だろう。

 だが骨は残っている。

 ティラキノクスは骨だけでも貴重ということで、全て持ち帰った。


 サルガへ戻る道は、シドがすでに地形やモンスターの出現状況を把握していたのでノンストップで進んだ。

 おかげで、たった一日でサルガまで戻ったのだった。


 ――


「こ、こ、これは……。ま、ま、まさか……ティル・ネロ?」

「そうだぞジョージ。君のために持ち帰ってきたのだ」

「ティル・ネロなんて世界的偉業ですじゃぁぁぁぁ!」


 ティル・ネロを見たジョージは喜びを爆発させていた。


 俺たちはサルガの商業区にある事務所兼住居に一時帰還。

 まだ早朝だが、ジョージは飛び起きたのだった。


「これほど完璧な姿で持ち帰るなんて……凄すぎるのじゃ!」

「アルとレイが簡単に討伐してしまったのです」


 オルフェリアが俺の顔を見る。


「そんなことないって! 苦労したんだから!」

「何を言うんですか。日の出開始から、太陽が完全に姿を現すまでに討伐したくせに。フフ」


 ジョージは俺たちの会話なんて耳に入ってないようだ。

 喜びで身体を震わせながら、すぐさま研究に取り掛かった。


「ジョ、ジョージ様、そんなに焦らなくとも……。もう私の声も耳に入ってませんね。フフ」


 オルフェリアも手伝いを始めるようだ。


「シド、私は可能な限りジョージ様のお手伝いをしています」

「うむ。明日の朝に出発する。それまでは自由時間だ。好きにしていいぞ」

「分かりました。ありがとうございます」


 さらに騒ぎを聞きつけたユリアが庭にやってきた。


「連絡はもらっていたけど、本当にティル・ネロの討伐なんて……。あなたたち非常識にもほどがあるわね」

「だって仕方ないでしょう? 襲われたんだもの」

「そうだけど……。襲われたからって、はいそうですかと討伐できるものではないでしょう……」


 レイとユリアが話す。

 そして、ユリアがシドの顔を見た。


「シド様、この死骸はギルドに売却しますか?」

「ふむ、困ったな。ギルドに売るとしても、もう値段はつけられないぞ」

「そうですね。ティル・ネロなんて規格外ですからね」


 シドとユリアが深刻な表情で話している。


「今後はどうします? もう始めますか?」

「そうだな……。始めるしかないか」


 何の話をしているのだろう?


「始めるって何を? なんか嫌な予感するんだけど?」

「君は本当に鋭いな。先日も言ったが、君たちはギルドを卒業するんだ。そして新しく組織を作る」

「組織? まさか……例の国ってやつか?」

「そうだ。まあ別にアルが代表の会社やギルドのような新組織を作ってもいいのだが、空路を開拓するには国という形態にしないと色々と都合が悪いのだ。他国と交渉を行うからな」

「空路のためか。それを言われると何も言い返せないよ。あぁ、全てが片付いてウグマへ帰ったら、またクエストをやると約束してたんだけどなあ……」


 俺は冒険者ギルドのウグマ支部長リチャードさんと、無事に戻りまたクエストをやると約束していた。


「仕方ないだろう? 想像以上に状況が変わってしまったのだ。そこもこれもアルがレアモンスターを討伐しまくるのが悪い」

「そ、そんなこと言われても!」

「それにな、我々には素晴らしい人材が揃っている。君たちに加え、私、オルフェリア、ユリア、ジョージ、ローザだぞ。国だって作れるだろう。ハッハッハ。アルが国王で、レイが王妃だ。ハッハッハ」


 シドが大笑いしている。

 ユリアも満面の笑みを浮かべていた。


「ウフフフ、世界で最も美しい王妃が誕生するのね」

「ねえユリア、あなた面白がってない?」

「人生で国を興すイベントに参加できる機会なんてないわよ! ああ、ゾクゾクするわ!」

「はああ、もう何を言ってもダメね」


 レイは諦めたように肩をすくめた。

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