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第176話 未知なるモンスター領へ

 一週間が経過。

 予定通り俺達四人とエルウッドは、アフラ火山に向けて出発した。


 サルガの国境を越えると、そこはもう人が支配する土地ではない。

 モンスターの領域だ。


 寝台荷車(キャラバン)は起伏のある草原を進む。

 御者席に座るのはシドと俺だ。


「この地域に訪れるのは数百年ぶりだ。もしかしたら地形が変わっているかもしれない」

「それは仕方がないよ。自然災害で地形が変わることだってあるんでしょ?」

「そうだ。だから慎重に進む。寝台荷車(キャラバン)は三日間ノンストップで走行できるが、夜の移動は危険だ。夜はキャンプを張るぞ」

「分かった。今回は調査が目的だしな。慎重に進んでルートを開拓しよう」 


 初日はモンスターに遭遇することなく夜を迎えた。

 俺たちは草原にキャンプを張る。


 キャンプと言っても、寝台荷車(キャラバン)には折りたたみキッチンや全員分のベッドがある。

 そのため、寝台荷車(キャラバン)を停車させて宿泊するだけだった。


「キャンプ風情を出すために、寝台荷車(キャラバン)の外で焚き火をして食事を取っても良いがな。ハッハッハ」


 シドはのんきに笑っているが、ここはもうモンスターの領域だ。

 危険な行為は避けるべきだろう。


 オルフェリアがキッチンで夕食を調理。

 シドは地図に様々な情報を書き込む。

 俺とレイとエルウッドは、付近の見回りに出た。


「今のところ問題ないね」

「そうね。でも油断しないようにしましょう」

「ウォン」


 そして夕食を取り、見張りの順番を決め就寝。


 シドはサルガに滞在中寝台荷車(キャラバン)を改造し、寝台の屋根に見張り台を作っていた。

 屋根の高さは三メデルトもあるため、見張り台として最適だった。


 俺は深夜に目を覚ます。

 ハシゴを登り屋根に上る。


「オルフェリア、交代するよ」

「アル、ありがとうございます」


 小声で話す。


「異変は?」

「特にないです」

「そうか、じゃあオルフェリア、ゆっくり寝て……」

「ん、どうしました、アル?」

「いや、なんとなく気配を感じたような気がしたんだけど……。気のせいかな」

「アルの感覚は鋭いですからね。警戒しておきましょう」

「そうだね。ありがとうオルフェリア。おやすみ」

「はい、おやすみなさいアル」


 オルフェリアと見張りを交代。

 鉄製の焚き火台の前で、毛布にくるまりながら夜空を見上げる。


 星がこぼれ落ちそうな夜空だ。

 モンスターの領域であっても、自然の美しさは変わらない。

 むしろ人がいないことで、この自然が保たれているのだろう。


「人が自然を壊してるのか……」


 そんなことを考えながら、俺はモンスター領で人生初の夜を過ごした。

 結局、何事もなく無事に朝を迎え出発。


 壮大な草原を進む。


「アル! 見て! 大牙猛象(エレモス)の群れよ!」


 御者席に座るレイが俺に声をかけてきた。

 寝台の窓から外を見ると、約二百メデルト先に十頭ほどのエレモスが群れをなしている。


 エレモスはBランクの大型モンスターで、以前討伐したことがある。

 そのエレモス討伐がきっかけで、オルフェリアと知り合うことができた。


「エレモスが十頭もいると壮観だな。レイ、危険はなさそう?」

「そうね、大丈夫だと思うけど。オルフェリアどうかしら?」


 オルフェリアがエレモスの群れを観察。


「そうですね。こちらの存在に気付いてますが、放置しているようです。近付かずに進みましょう」


 今朝出発してから、モンスターに遭遇する頻度が非常に高くなった。

 戦闘はまだないものの、いつ襲われても対応できるように警戒している。


 ここまで見かけたモンスターはDランクからBランク。

 もし、Aランクのモンスターに遭遇したら、戦闘は避けられないかもしれない。


 二日目の移動を終えキャンプを張る。

 日はまだ完全に落ちておらず、夕焼けが薄い雲を真紅に染めていた。


「うわ、凄い夕焼けだ!」

「ええ、綺麗ね」


 キッチンではオルフェリアが夕食を作っている。

 まるで行楽に来ているようだ。

 しかし、俺は昨日から時折気配を感じていた。


「なあ、エルウッド。やっぱり僅かに気配を感じないか?」

「ウォウ」

「ちょっと見回りに行こう」

「ウォン!」


 レイが俺の肩を軽く叩いてきた。


「アル待って。私も行くわ」


 空はまだ明るいが、レイは燃石に火をつけランプの用意を始めた。


「ふむ、私は何も感じないが、アルが言うなら何かあるかもしれんな。エルウッドも否定しておらぬし」

「そうですね。アルは昨日も言っていたので、もしかしたら後をつけられているのかもしれません」

「となると、Aランククラスか。厄介だな。とはいえ、今のアルとレイならAランクなぞ瞬殺か。ハッハッハ」


 シドの話を聞いたレイが、呆れた表情を浮かべている。


「バカなこと言わないの。さあアル、エルウッド、行きましょう」


 ランプを持ちキャンプ地を出発。


 レイは新しい細剣(レイピア)を携えている。

 ヴェルギウスの鱗で作られた真紅の細剣(レイピア)だ。


 俺はこれまで通り黒爪の剣(レリクス)を腰に下げつつ、新武器である真紅のツルハシを背負った。

 このツルハシは対ヴェルギウス専用だが、慣れるために持ち出した。

 重量は三十キルクもある俺にしか扱えないツルハシだ。


 竜種の素材で作ったこのツルハシは、世界で最も高性能かつ高価だろう。

 ローザが特別に作ってくれたものだから価格は不明だが、竜種の素材ということで金貨数千枚の価値はあるかもしれない。


 せっかくなので、俺は採掘用のツルハシとしても使うつもりだ。

 この真紅の色も気に入っている。


「アル、何か感じる?」


 キャンプから二キデルトほど歩いたところで、レイが話しかけてきた。


「今は特に何も……。気配を完全に消してるのか……」

「ウォン!」


 すると、エルウッドがダッシュし、地面に向かって吠えていた。


「地面が光ってる?」

「夕日が反射してるようね」

「これは液体?」


 透明な液体が、三十セデルトほどの小さな水たまりを作っていた。

 革手袋の上から触ってみる。


「粘り気があるな。なんだろう。モンスターの体液? 涎か?」


 俺は辺りを見渡した。

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