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鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜  作者: 犬斗
第十章

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第159話 史上最高額のクエスト

 寝台荷車(キャラバン)に戻ると、シドが俺の背中を軽く叩いた。


「アルよ。ヴェルギウスの素材は私たちで使用したいのだ。これは空を飛ぶ乗り物の建造に使用する。金貨十万枚はレイが言った通り王国で全て使う。王国経済は潤うだろう」

「金貨十万枚全部使うの?」

「そうだ。我々は火山の近くに基地を作る。ヴェルギウス討伐には、恐らく何度もアタックする必要があるはずだ。それに軽い空気を発見した時のことも考えねばならん」

「ヴェルギウス討伐のアタック基地は分かるけど、軽い空気はどういうこと?」

「では質問するが、軽い空気を発見したらどうする?」

「え? そ、そうだな……」


 軽い空気を探す目的は空を飛ぶことだ。

 空を飛ぶためには採取が必要……。


「あ!」

「気付いたようだな。軽い空気を帝国へ運ぶのは不可能だ。イーセ王国内へ運ぶのも無理だ。発生地に最も近い場所で、軽い空気を取り扱うための施設が必要なんだ」

「そういうことだったのか」

「ああ、そのためにもヴェルギウスを狩る必要がある。ヴェルギウスがいたら、施設なぞすぐに襲撃されるだろうからな」

「なるほど。ヴェルギウス討伐は素材確保、施設保護、王国への恩を売ると一石三鳥か」

「そうだ。さらにこの基地は将来的に街になるぞ。そこで航空会社を作るのだ。まあアルの国を作ってもいいのだがな」

「俺の国って何?」

「空を飛ぶとなると様々な問題が発生する。国家間の交渉が必要なのだ。だが、ただの会社が国家に交渉を持ちかけても話にならない。だから君は国を作った方がいい」

「お、俺の国? 何言ってんだよ! 嫌だよ! 俺は自由な冒険者で生きていければいいんだって」

「ハッハッハ、その意見はもっともだが、まあいずれ分かるだろう」


 突然、国を興す話になった。

 あまりにも突拍子すぎる。

 それに竜種討伐が現実的なものとなった今、本気で集中しないと一瞬で命を落とすだろう。

 俺たちが死ねばシドはまた一人になってしまう。

 それだけは避けたい。

 俺はヴェルギウス討伐に気持ちを切り替えた。


 その後、オルフェリアが作った夕食を取り、寝台のベッドで就寝。

 レイは戻って来なかった。

 相当忙しいのだろう。


 ――


 翌日、改めてヴィクトリア陛下の執務室へ向かった。

 騎士団の要人、そして女王陛下が見守る中、正式にイーセ王国とクエストの契約を締結。


 ◇◇◇


 クエスト依頼書


 難度 Sランク

 種類 討伐

 対象 竜種ヴェルギウス 

 内容 竜種ヴェルギウスの討伐

 報酬 金貨十万枚 及び 各種条件(別途契約書記載)

 期限 なし


 編成 アル・パートパーティー

 解体 アル・パートパーティー

 運搬 アル・パートパーティー

 特記 本件ギルドは関与せず 冒険者税免除


 ◇◇◇


 金貨十万枚のクエスト。

 シド曰く、歴史上最も高額なクエストになるそうだ。

 そもそも竜種の討伐クエストが人類初とのこと。

 ネームドの比ではない超超高難易度。

 成功するか分からないクエストだ。


「アル以外なら間違いなく失敗するクエストだ。そもそも人類が竜種に適うわけないのだからな」


 シドは帝国のギルド総本部へ連絡用の大鋭爪鷹(ハースト)を飛ばした。

 このクエストに限って、報酬面は我々が全てもらい受ける。

 だが、当然ながら成功報酬だ。

 ヴェルギウスを討伐しなければ報酬はない。

 そのため、討伐に必要な基地の建設費などは、先に全てシドが建て替えるそうだ。


「私が現在すぐに動かせる現金は金貨二十万枚が限度だ。それ以上となると、ギルドで保有している土地や会社などの資産を売却しなければならない」

「に、二十万枚!」

「今回の基地の建設予算は、報酬と同額の十万枚以内に抑えたい。他にも使う予定があるからな」

「数字が大きすぎて、想像もできないよ」

「ハッハッハ、そうだろう。私は別に資産が欲しいわけではない。だから親友となった君たちが生きているこの時代で、全てを使っても構わないと思っている」

「嬉しいけどさ、無理はしないでくれよ?」

「ハッハッハ、分かっておる。だがな、これまで生きてきて今が最も楽しいのだ。アル、ありがとう」


 シドにまっすぐ見つめられて、照れてしまった。

 二千年もの悠久の時を生きているのシドの言葉には重みがある。


 俺とシドは王国とのクエスト契約後、寝台荷車(キャラバン)へ戻ってきた。

 現在の俺たちは、街の中心部から少し外れたところに寝台荷車(キャラバン)を停めキャンプを張っている。

 

 レイは王国の人間たちと打ち合わせがあり、そのまま本部に残った。

 ここ最近のレイは、全く寝てないはずだ。

 昨日も寝台荷車(キャラバン)に戻って来なかったし、俺はレイの体調が心配だった。


「レイのことが心配だと思うが、この緊急時に彼女の能力は騎士団に欠かせないからな。今は仕方がないだろう」

「そうだね。……分かってるよ」


 俺なんかより遥かに優秀なレイだ。

 俺は俺にできることをやろう。


 オルフェリアはエルウッドと一緒に、瓦礫の中からヴェルギウスの鱗を探している。

 シド曰く、ヴェルギウスの鱗は討伐の際に使用できるとのこと。

 そのため一枚でも多くの鱗を探してた。


「じゃあ、俺たちもオルフェリアに合流して鱗を探そうか」

「うむ、そうだな。行くか」


 俺が寝台荷車(キャラバン)を出発しようとしたところで、物見やぐらから鐘の音が聞こえた。

 音は共鳴するかのように瞬く間に広がり、街中の物見やぐらから鐘の音が鳴り響く。

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