表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜  作者: 犬斗
第十章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

162/414

第156話 ヴェルギウスの力

「丸い岩? 空から降ってきのか?」

「うむ、そうだ。これもヴェルギウスの仕業だ」

「え! これが?」

「ヴェルギウスの住処が火山ということは説明したな。ヤツは溶岩を体内に溜めることができる。攻撃時にはそれを丸く固めて吐き出す」

「溶岩を吐き出す?」

「そうだ。火球となった超高温の岩を吐き出すのだ。家屋に当たれば火災が発生するし、人間に当たれば一瞬で死ぬ。私もそれで殺されたことがあるからな」


 シドは以前、ヴェルギウスに殺されたことがあると言っていた。


「ヴェルギウスは火球や鉤爪の他にも、強力な尻尾の攻撃も繰り出す。そして奴の身体は、溶岩でも溶けない頑丈な鱗で守られている」


 それを聞いたオルフェリアの表情が、恐怖で青ざめていた。


「そ、そんなモンスターを倒せるのですか!」

「倒すしかないのだ。竜種と和解なぞないからな」


 オルフェリアは黙ってしまった。


「今は何も思いつかない……。だけど、俺はヴェルギウスに負けないよ。そのために調査をしっかり行おう」

「そうだな。アルの言う通りだ」


 その夜、レイと合流し情報の擦り合わせを行った。

 今回の襲撃は深夜に行われたそうだ。

 寝ていた人々は逃げ遅れ、人口二万人のサルガ市民は約一万七千人が死亡。

 冒険者ギルドのサルガ支部も壊滅。

 街に滞在していた冒険者約三千人はほぼ全員死亡していたそうだ。

 ここまでの被害は千年の歴史を持つ王国史にもないとのこと。


「レイ、やっぱりヴェルギウスの襲撃で間違いないよ」

「本当に竜種の襲撃なのね……」


 俺はレイに調査結果を伝えた。

 レイの表情は重く、少しうつむいた状態でシドに目を向ける。


「シドはどうするつもりなの?」

「もちろん予定通り火山へ行く。だが、今すぐではない。補給をしなければならないからな。現状では無理だろう」

「そうね。サルガの復興は時間がかかるわ。それに現団長が来てから相談するけど、この街をどうするかも決めなければならない。しかも女王陛下までこちらに向かってるそうよ。警備のことを考えると頭が痛いわ」

「なに? ヴィクトリア女王陛下が! それは大変だな」

「シドだって大変じゃないの? サルガのギルドは壊滅したでしょ?」

「ふむ、そうだな。ギルドも建て直さなければならないが、まあそれは私の仕事ではない。とはいえ、総本部へ指示は出すし協力はするがな」


 翌日も入念に調査。

 レイは相当忙しく、寝る暇もないほど動き回っていた。

 シドはギルドの総本部へ連絡を取り、ギルド復興を指示。


 そのため、俺とオルフェリアとエルウッドで調査を進めていた。

 ひたすらヴェルギウスの痕跡を探し回り、拾った鱗の数は十枚、火球を二つ発見。


 サルガ到着から九日が経過。

 予定では明日、王都からヴィクトリア女王陛下一行が到着する。

 日が落ちたところで、レイが寝台荷車(キャラバン)に帰ってきた。

 ここ三日ほど戻って来なかったので、余程忙しかったのだろう。


「アル、お願いがあるの」

「どうしたの?」

「お風呂を準備してもらえるかしら。明日はヴィクトリアが来るから少し身だしなみを整えないと」

「分かった。でも、レイ大丈夫? 寝てないでしょ?」

「ありがとう。緊急事態だもの仕方がないわ。ただ、今日はイゴルが休めって時間をくれたの。明日まで少しゆっくりするわ」


 救援物資は豊富にあり、水も十分確保できていた。

 俺たちキャラバンも水を補給されており、二日に一回は風呂に入っている。

 この復興中に最も怖いものは疫病とシドが言っていたからだ。

 風呂嫌いのシドでさえ風呂に入っていた。


「私は疫病でも死なないが、他人に移す可能性はあるからな」


 シドの言葉を思い出しながら、荷台で組み立て風呂を準備。

 風呂が沸いたのでレイに声をかけようとすると、寝台で寝ていた。


「レイ、風呂が沸いたよ」

「え、あ! ご、ごめんさない。寝てしまったようね」

「風呂に入ったらすぐ寝て。後のことは全部やっておくから。俺はレイの身体が心配だよ」

「ふふふ、ありがとう。アルは優しいわね。好きよ」

「あ、いや……」


 レイが軽くキスをしてきた。

 レイが弱音を吐くことはないが、今の姿を見ると精神的に相当疲れているのだろう。

 俺にできることなら何でもやろうと思った。


 風呂から出るとレイはすぐに就寝。

 翌朝、朝食も取らずに騎士団の本部へ向かった。

 折りたたみキッチンで朝食を作っているオルフェリアが、心配そうな表情を浮かべている。


「レイは大丈夫ですかね」

「ほとんど寝ないで様々な案件を指示してるみたいだよ」

「騎士団団長ってもっと華やかな世界だと思っていましたが、レイの姿を見ると本当に大変な職業なんですね」


 すると珍しく寝ていたシドが、寝台のベッドから起きてきた。


「まあ、レイの処理能力は特別だからな。冒険者ギルドで最高と呼ばれる人事機関(シグ・フォー)ユリア・スノフ局長や、格付機関(シグ・エイト)マリシャ・ハント局長の能力を超える。人類でもトップレベルは間違いない」

「それほどなんですか? ユリア様はギルドの頭脳と呼ばれてますし、マリシャ様は若くして天才集団のシグ・エイトの局長になるほどで、悪魔のペンと呼ばれてますが……」

「そうだな。彼女たちも恐ろしいほど優秀だが、それでもレイが上回っているだろう。若干二十一歳で王国騎士団団長になったのだぞ? その年齢で厄介な元老院や貴族、宮廷の猛者共を圧倒していたのだからな。ハッハッハ」


 レイの優秀さは十分知っている。

 だが、優秀だからといって不死身ではない。

 睡眠は人の生活で最も大切な要素だ。

 不老不死のシドですら、三日に一回は寝なければ辛いというのに。

 未曾有の事件とはいえ、レイが倒れてしまったら竜種どころの話ではない。


 俺にとって、レイとエルウッドは何よりも大切な存在だ。

 レイがいない世界なんて考えられない。


「エルウッド、レイは大丈夫かな」

「クゥゥン」


 エルウッドも心配していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ