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鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜  作者: 犬斗
第八章

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第129話 アルの真実

「ちなみにアルよ。不老不死の確認方法を知ってるか?」


 シドが奇妙な質問してきた。


「不老不死の確認方法? そ、それって……ま、まさか」


 少し考えると想像できた。

 しかし答えたくない内容だった。


「君は賢いな。そうだ、本当に殺すのだ。私は何度も殺された。それこそ、この世の全ての拷問を味わった。地獄を超えた地獄だったよ。不老不死でも痛みはある。人間という生き物は歴史上最も残虐な生き物だ」


 想像通りだ。

 この世の全ての拷問。

 しかも痛みがある状態。

 まさに地獄だろう。


「肉を削ぎ落とされ、手足はちぎられ、ギロチンも串刺しも火炙りだってされたよ。それはもう悲惨だった。地獄だった。奴らは私のために数々の拷問器具を開発してくれるのだから」


 話を聞き、恐ろしくて震える。


不老不死の石パーマネント・ウェイヴスで不老不死になると、身体欠損も修復される。生き返るたびに拷問だ。数年間は生き返るたびに拷問は続いた。当初は不老不死を確認するためだったが、いつしか狂った為政者たちの玩具にされていたよ。本当に死にたかった。次から次へと新しく開発された拷問が待っていたからな」


 現存する拷問器具は、全てシドのために開発されたとのこと。 

 その全てを経験したそうだ。


「当時の私は復讐を考えていた。だが、奴らは寿命で勝手に死んでいったよ」


 思い出したくない記憶だろう。

 シドの声が少し震えていた。


「だがな、そんな地獄よりも恐ろしい地獄があることを知ったのだ」

「全ての拷問よりも恐ろしい地獄?」

「ああそうだ。君に分かるかな?」

「い、いや……。分からない」

「ハッハッハ、そうだろうな。それはな、私を知る者が全員死んでいくことだ。私は常に取り残される。いつしか私にとって、生きるということは最大の地獄になった。奴らは死にたくないと喚いていたが、寿命で死ぬということは幸せなことなのだ。私にとって、エルウッドだけが救いだったよ」


 シドに寄り添うエルウッド。

 そのエルウッドの頭を撫でるシド。

 二千年もの間一緒にいた絆だろう。


 言葉が出ない。

 シドの身体の痛みも、心の痛みも分からない。

 あまりに現実離れした内容だ。


 しかし、俺はふと我に返った。

 なぜシドは、そんな世界を震撼させるほどの話を俺にしているのだろう?


「ま、待って! な、なんで俺に秘密を?」

「アルよ。君は自分の身体に疑問を持ったことはないか?」

「え? 疑問?」

「そうだ。あまりにも人間離れしてるだろう?」

「そう言われれば、確かにそうだけど……」

「君はエルウッドと一緒に育って、紫雷石も持っていた。影響がないとでも?」

「な! バカな! お、俺も?」

「安心しろ。不老不死ではない。しかし、その影響はある。君の寿命は伸びているだろう。どれだけ伸びたか分からんがな」

「お、俺の寿命が?」


 突然の言葉に俺は混乱した。

 だが、ここまできてシドが嘘を言うわけがない。


 俺は自分の両手を見つめる。

 この身体がそんなことになっていたなんて……。


雷の道(ログレッシヴ)はな、徐々に人体構造を変えるのだよ。バディから、エルウッドと紫雷石を近付けるなと言われていなかったか?」

「た、確かに! 父さんから、絶対に近付けるなと言われていた!」

「君も見ただろう? エルウッドの角に紫雷石を近付けると発生する雷の道(ログレッシヴ)を」

「ああ。小さな雷が発生していた」

雷の道(ログレッシヴ)はバディも見たことがある。ただの雷だと認識していたがな」


 父さんも雷の道(ログレッシヴ)を見たことがあったのか。


「しかしな、バディは気付かなかったようだが、同じ家の中の距離程度なら目には見えない薄くて細い雷の道(ログレッシヴ)が発生するのだ」

「え?」

「君の人間を超えた肉体は、長年エルウッドと一緒にいた影響だ。雷の道(ログレッシヴ)に触れ続けると、心臓の鼓動が極端に少なくなる。だから九千メデルトの世界でも生きていけるのだ」

「な、なんだって!」

「ちなみに、不老不死の石パーマネント・ウェイヴスはさらに特別でな。これを飲んだ時点で、細胞と呼ばれる身体を作る組織の老化が止まり、破壊されても勝手に修復するのだ。ただし、不老不死の石パーマネント・ウェイヴスでも全ての人間が不老不死になれるわけではない。むしろ不老不死になれる確率はごく僅かだ」


 自分の肉体の秘密を知った。

 心臓の鼓動なんて気にしたこともなかった。


「それと、君は怪我をしても治りが早くないか? エルウッドは怪我をしてもすぐに治るぞ」

「そう言われれば、医療機関(シグ・シックス)の先生に治りが異常に早いと言われた。確かにエルウッドもそうだった……」

「私以外で、君は最もエルウッドと長くいる人間だ。恐らく不老不死の石パーマネント・ウェイヴスの効果も少し出てるようだ。君は不老不死になれる肉体を持っているのだろう」

「不老不死? エルウッドを犠牲になんてさせない!」

「もちろんだ。エルウッドは私にとっても大切な家族だ。だが君は私と同じで、この世でごく僅かな不老不死になれる肉体を持つということだ」


 正直混乱している。

 何が何だか分からない。

 不老不死に興味なんてない。

 一生懸命生きて、人生を全うしたい。


「寿命が伸びたって本当なのか?」

「ああ、そうだな」


 頭の中は真っ白になっている。

 そこへ光が差すように、レイの顔が頭に浮かんでいた。

 俺にとってレイは希望。

 生き方を示してくれた大切な存在だ。

 そんなレイとの別れが確実となってしまった。

 シドの言う通り、取り残されるのは確かに辛い。


 シドはそれを二千年も耐えてきたのか。

 そしてこれからも……。

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