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鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜  作者: 犬斗
第八章

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第127話 呼び出し

「ああ、麗しきレイ殿、いつ私と結婚してくれるのですか?」


 ギルマスがレイを見つめながら、両手を左右に広げ、背筋を伸ばし姿勢良く発声する。

 張りのある声と相まって、まるで歌劇を観ているようだ。


「ええ、ギルドマスター様。あなたが亡くなって、五百回生まれ変わった来世のそのまた来世で、もしかしたら塵の如き僅かな可能性があるかもしれません」

「な、なんという素晴らしい可能性! 一ミデルトでも可能性があるならば、このシド・バレー、喜んで死にましょう!」

「喜んで! 今すぐ死んでください!」


 こんな言葉使いのレイは初めて見る。

 シド・バレーと呼ばれたギルマスは、レイの言葉を聞いて満面の笑みを浮かべていた。

 だが、レイは心の底から呆れたような表情だ。


「ねえ、シド。私ももう二十三歳なのよ? お願いよ。本当にやめてくれる?」

「レイ殿が十四歳の時に結婚を約束したではありませんか!」

「あなたが勝手にね。本当に殺すわよ?」

「ああ、レイ殿に殺されるなら本望です!」


 レイが俺の顔を見た。


「アル、ごめんね。この男は昔から本当にこのままなのよ」

「レイ殿、その男は従者ですか?」


 閃いたような表情を浮かべるレイ。


「ああ、マスター様。紹介させていただくわ。こちらが私の伴侶、アル・パートです」

「き、貴様がアル・パートか! 報告は聞いていたが、ま、まさかレイ殿の伴侶だと?」

「ええ、私たち愛し合ってますの。近々結婚しますわ。お祝いしてくださるかしら?」


 レイが俺を見てウインクしている。

 話を合わせることにした。


「は、始めまして。レイのパートナーのアル・パートと申します。レイと、け、結婚します」


 ギルドマスターの表情と声質が急変した。


「貴様、殺してやろうか」

「シド様、言葉遣いが……」


 ルイスがたしなめる。


「こ、これは失礼した。アル・パート殿。レイ殿の伴侶とは羨ましい限り。ハッハッハ」


 ギルドマスターが涙目になっていた。


「ルイスよ、私はレイ殿の結婚を聞いて頭痛が酷くなってきた。後のことは君が全てを行え。なんならアルを殺してもよいぞ」

「ハッ、かしこまりました」

「ハッハッハ、アル殿。生きていたら、また会おう」


 レイがギルマスに向かって怒りを向ける。


「ねえ、本当に殺すわよ?」

「ハッハッハ」


 ギルマスは部屋を出ていった。


「ちょっと、ルイス、あいつ本当にどうにかならないの?」

「そう言われてもなレイ。シド様は昔から変わらんよ」


 俺とオルフェリアは全く話についていけない。

 そんな俺たちを気遣ってか、ルイスが切り出す。


「さて、君たちは長旅で疲れているだろう。ギルドの客室を押えてある。三人とも滞在中はそこへ宿泊してくれ。使用人も付けるから、何かあれば言うといい。何でも揃うぞ」

「ありがとうございます」

「明日の朝食後、迎えに行く。用意しておいてくれ」

「分かりました」


 俺たちは城内の宿泊施設へ案内された。

 城の高層部にあり、窓から帝都が一望できる。

 素晴らしい眺めだ。

 俺とエルウッドは同じ部屋で、レイとオルフェリアはそれぞれ個室に案内されている。

 レイが先に客室へ入ると、廊下に残ったオルフェリアが声をかけてきた。


「あ、あの……。アルはレイと結婚するのですか?」

「え? い、いや、あれはギルマスを欺くとための方便というか、なんというか、その……」

「フフ、レイは本当に美しいし、二人はお似合いですものね」


 先ほどレイが咄嗟に言った結婚のことを、改めて突っ込まれしまった。

 もちろんレイのことは好きだが、結婚となると話が飛躍しすぎているような気がする。


 オルフェリアと別れ、部屋で少し休憩。

 内装はイーセ王国の王城の客室にも引けを取らない豪華さだった。


 その後、ギルド内の豪華な一室に案内され会食。

 まるで王城へ招待されたような感覚だった。

 サブマスターのルイスと、数人のギルド役員と食事をした。

 夕食後はまた部屋に戻り、俺はエルウッドとくつろぐ。


「ふうう、ギルマスって若くてビックリしたよ。俺と変わらない年齢だと思うんだよな。あの若さでギルマスって凄いね」

「ウォウウォウ」

「ん、エルウッドの印象は違った?」

「ウォウォ、ウウォオン」


 エルウッドが何か言いたげだった。

 その時、ノックの音が聞こえたので出てみると、メイド服を着た女性が立っていた。


「アル様、エルウッド様。マスターがお呼びです」

「ギルマスが? しかもエルウッドも?」


 俺たちはその女性について行き、客室がある階層から何階か階段を上がる。

 恐らく次が最上階というところで女性が立ち止まる。


「この上が最上階で、マスターのお部屋です。私たちはこの先に入れません。アル様、エルウッド様、どうそお進みください」


 俺は女性にお礼を伝え、エルウッドと階段を上がる。

 最上階に到着すると、目の前には扉が一つだけがあった。

 どうやら、最上階は全てギルマスの部屋のようだ。


 入り口の前に立つと、観音開きの大きな扉が自動で開く。

 俺は驚いたが、扉の内側を見ると滑車や重りがついていた。

 この装置で開くようになっているのだろう。


 中に入ると正面にまた一つ扉があり、これも自動で開いた。


 そして、長い廊下を歩く。

 二十メデルトほど進むと、突き当りとなりまた扉だ。

 恐らくこれが部屋の入り口だろう。


 自動で開く扉を抜けると、広大で荘厳な部屋に出た。

 数々の美しい調度品や美術品は、まるで宮殿のようだ。

 俺に価値は分からないが、きっと恐ろしく高価なのだろう。

 その中で一枚の絵画が目に留まる。

 レイに似ている美しい女性の肖像画だった。

 

 そして、部屋の中心に立っている一人の男性。

 ギルマスだ。

 俺がギルマスの前まで進むと、声をかけてきた。


「アル。改めて自己紹介しよう。私がギルドマスターのシド・バレーだ」

「ア、アル・パートです」

「疲れてるところ呼び出してすまないな」

「い、いえ。とんでもないです」


 先ほどのレイに求婚してた印象とは大違いだ。

 見た目の若さと裏腹に、迫力というか圧倒的な存在感を感じる。

 ギルドの各機関の局長たちは優秀で化け物揃いと言われているが、それを束ねるのがこのシドだ。

 これほど若くしてギルドのトップになったということは、シドはそれ以上に優秀なのだろう。

 俺がシドを観察するように見ていると、シドはエルウッドに向かって話しかけた。


「エルウッド、久しぶりだな。元気だったか?」


 エルウッドが答える。 

 

「ウォン!」


 エルウッドがシドに近付いていった。


 エルウッドの頭を撫でるシド。

 二人の仕草はとても自然だった。

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