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鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜  作者: 犬斗
第六章

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第100話 緊急討伐

 その日、俺は冒険者ギルドに呼び出されていた。

 支部長室でリチャードから話を聞く。


「アルよ。先日の砂潜竜(サンキロス)捕獲から帰還したばかりで申し訳ないが、またクエストを頼みたい」

「クエストですか?」

「そうだ。お前は王鰐(ルクコス)を討伐したことはあるか?」

「ルクコスはまだないです」

「至急で討伐依頼が来てるんだ」

「ルクコスか。俺一人で大丈夫ですかね?」

格付機関(シグ・エイト)はAランク三人以上と判断した」

「Aランク三人! それはまた大物が相手ですね」

「ああ、このルクコスはすでに農村を襲っていて犠牲者も出ている。急いでいるから、Aランクを三人も集めてる余裕がないのだ」

「実害が出てるんですか?」

「そうだ。もう数人の死者が出ている。ここだけの話、研究機関(シグ・セブン)がネームドを検討しているレベルの個体だ」

「そうなんですね。分かりました。やるだけやってみます」

「うむ、ありがとう。しかし無理だけはするな。今回は至急案件で特殊な状況下だから、もしクエスト失敗でも成績上は不問にする。安心しろ」

「ありがとうございます」


 クエストは失敗すると報酬が支払われない。

 しかも、三回連続で失敗すると理由に関わらず冒険者ランクは降格する。

 今回はそれを不問にしてくれるそうだ。


 リチャードからクエスト依頼書をもらった。


 ◇◇◇


 クエスト依頼書


 難度 Aランク

 種類 討伐

 対象 【至急】王鰐(ルクコス) 

 内容 ルクコスの討伐

 報酬 金貨九十枚

 期限 二週間以内


 編成 Aランク三人以上

 解体 ギルド負担

 運搬 ギルド負担

 特記 出現場所は指示書参照 詳細は契約書記載 冒険者税徴収済み


 ◇◇◇


 俺はギルドを出て、オルフェリアの元へ向かった。

 オルフェリアはシグ・セブンで解体学の講師をしている。


「こんにちは、オルフェリア」

「アル! 今日はどうしたのですか?」

「またクエストの解体を依頼したいんだ」

「今回のモンスターは?」

「ルクコスだ」

「ルクコス! もしかして、今話題になってるルクコスでしょうか?」

「ああ、実害が出ているらしい」

「分かりました。念のために聞きますが、今回もアル一人ですか?」

「そうだよ」

「わ、分かりました。ちなみに、そのルクコスは相当危険ですからね。シグ・セブンではネームドの検討をしているそうです」

「リチャードさんから聞いたよ。絶対に無理はしない。オルフェリアを危険な目に合わせなから安心して欲しい」

「フフ、アルとならどこへでも行きますよ。それに私も解体師ですから、危険は覚悟してます」


 オルフェリアが改めてルクコスの説明をしてくれた。


 ◇◇◇


 王鰐(ルクコス)


 階級 Aランク

 分類 四肢型爬類


 体長約十メデルト。

 大型の爬類モンスター。


 水辺や沼地に生息し、短い手足で地上を這うように移動する四足歩行のモンスター。

 気温の変化に弱く、常に水や泥の中にいる。

 普段の動きは遅いが、獲物を見つけた時の瞬間的なスピードは速い。


 口だけで三メデルトほどの大きさがあり、咬合力は四肢型モンスターの中で最強を誇る。

 獲物に噛み付くと、そのまま身体を高速回転させる死の輪舞曲(デスロンド)で仕留める。


 鱗は非常に硬く竜骨型に近い。

 竜骨型から派生したという説もある。


 ルクコスの革は鎧や高級バッグなどで使われるため、高値で取引される。


 ◇◇◇


 今回は至急案件なので、翌日にクエストへ出発することにした。

 運び屋はトーマス兄弟に依頼。


 いつものように、ウグマの郊外に集合。

 しかし、集合場所の様子が変わっていた。

 早朝にもかかわらず、冒険者らしき人たちがいる。


「おい! アル・パートのパーティーだぞ!」

「あいつ、って、一人で槍豹獣(サーべラル)を討伐したらしいぞ。それも一撃で」

「あのオルフェリアって解体師が凄いらしい。シグ・セブンで解体学の講師もしてるらしいぞ」


 トーマス兄弟が教えてくれたのだが、俺たちがクエストへ出発する時の集合場所にしたこの場所を、他の冒険者が真似しているそうだ。

 さらに目ざとい商人たちが、飲食や道具を販売する屋台を出店。


 そもそも俺とオルフェリアがこの地を選んだ理由は、冒険者に忌み嫌われている解体師や運び屋と一緒に、市街地からクエストへ行くことができなかったからだ。

 それが今や、この出発地点を真似するパーティーが出てきている。

 しかも俺たちのように、解体師と運び屋を含めたパーティーを組んでる冒険者もいるそうだ。

 少しずつ悪しき習慣が変わってきているようで、俺もオルフェリアも喜んでいた。


 ――


 今回の討伐地はウグマから五日の距離にある。

 移動中、俺はオルフェリアやトーマス兄弟と何度も打ち合わせを行った。


 通常の冒険者は出発前に作戦会議を行う。

 しかし、このパーティーは移動中に作戦の詳細を詰めることができる。

 これにより、クエストの準備期間が大幅に短縮可能だ。

 今回は実害が出ている至急案件ということもあり、このパーティーの強みを存分に活かせるのだった。


 また、今回は素材採取の必要性はなく、討伐だけが目的だ。

 どんな方法でも討伐さえ達成できればいい。

 そのため、討伐スピードを重視することにした。


 とはいえ、素材はギルドが使用したり販売するので、綺麗なまま残した方が喜ばれる。

 俺は可能な限り素材も残せるように、討伐しようと考えていた。


 予定通り五日が経過し、王鰐(ルクコス)が出現する農村に到着。

 さっそく村長に挨拶。

 ここ数日の出現状況を聞いた。


 ルクコスは、水田用の大きな溜め池に現在も居座っているらしい。

 当初は家畜を狙っていたが、ついに人間にも被害が出たそうだ。

 これから水田の収穫期に入るので、その前にどうしても討伐したいとのことだった。


 その話を聞いて、俺はこのまま討伐に入ることにした。

 太陽は頭上を過ぎ、まだ昼の時間帯だ。

 夕焼けはまだ始まらないが、できれば今日、遅くとも明日には討伐したい。


 農村で餌となる動物を購入しようとしたところ、村長が甲犀獣(ケラモウム)を提供してくれた。

 農作業に従事していたが、つい数日前に寿命で死んだそうだ。

 本来はしっかりと弔うのだが、状況が状況だけに村のために使用するとのこと。


 ケラモウムは運び屋の荷車を牽引することで有名な、Eランクモンスターだ。

 体長は五メデルトほどある。

 硬い甲羅のような鱗は鉄と同じくらいの硬度を誇り、非常に防御力が高い。


 ケラモウムの体重は千キルク以上と重い。

 運び屋の荷台にある滑車を使い、溜め池の畔に配置。

 さらに生きた獲物も一緒に配置する。


 生きた獲物とはすなわち……俺だ。


 今回は危険を承知で、俺自信が囮となった。

 オルフェリアには止められたが、村人に被害が出ている上に、水田の収穫期のことを考えると少しでも早く討伐したかった。


「レイがいたら……怒るだろうな」


 そんな事を考えながら、餌となるケラモウムと一緒に池畔でルクコスを待つ。


 しばらくすると水面が不自然に波打つ。

 そして、薄っすらと影が見え始めた。


 俺は黒爪の剣(レリクス)抜き構える。

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