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密入界

「ヴォラババババ、そんなに溺愛してんたーぁ旦那にしちゃ珍しいじゃねぇの!?デレデレじゃないですかい!!そーォとっっ蜜酒(ワイン)まだまだありますからガバガバいっちゃってくださいよぉ〜うぅべへへ……うっへぇ〜羨ましいやーぁ……うっぷぅ〜」

「そりゃあ可愛いぞ、俺の愛娘はぁ〜!!!そぉ〜かぁなら……遠慮なく戴くぜ、神界(こっち)の蜜酒ゥゥを〜〜〜グハハハ、相変わらずオメェは下戸だなぁ〜〜……なんかここんとこぉ、あったとか——」

「ええ、ええガバガバ呷ってしまってくださぁ〜〜いよぉお〜〜うぅっぷぅ、おぅぶっ……あぁあーーうっぶぷっ……ノルンの奴ぁーぅう、来たっけなぁ此処にぃ〜……?旦那ァ、下界(した)で大人しく子作りしてるのに、バカが来て焦りましたぜぇ……またやらかしたかビクビクしてたら息子のこと聴いてきて、旦那の所在(いどころ)をきちぃ〜形相で聴いてきてよぉ……まぁなにも言わずに追い返したがぁ〜あぁ……まぁ知らなかったですし」

「あの馬鹿が辺鄙な土地(ここ)にだぁ??まったく彼奴(ノルン)はどの面ぁして来やがったッッ!!ヘェイスぅぅ……可哀想だ、あぁー可哀想だ」

 西雲土(にし)の外れに追いやられた数少ない友神であるヘパイストスに同情して声を荒げ、涙を流し、嘆くロキだった。

「アァ……おれぁ辛ぇ、女房(つま)は抱かせてもくれず荒くれ(もん)のとこへ入り浸り帰ってこない……顔かぁ、結局顔で決まんのかァッッ??えぇーッッ!?俺だけだよ、神ん中で醜いのはよぉ〜!!あのッッ……(アレ)には拒絶され……散々だぁ、俺の生活ァァよぉ〜〜!!!」

「ヘェイスの苦しみは俺も理解してる……もうじきヴェルが下界(あっち)でいう大人になるんだ、もう少しの辛抱だ……ヴェルをお前に逢わせられる、そのときまで待てるか?」

「お嬢さんに会わせてくれるのか……?でも神界に人間は入界出来ないんじゃ?」

「あの占い婆がハズすわけゃねぇ!ヴェルは来れる、神界にな!俺が考えなしに下界に降りて、人間と子供を作るわけねぇだろ!最高神(アレ)に対するいくつかの切り札だ……でよぉ、友神のヘェイスに——」

 俺はヘパイストスに耳打ちしてある物を作成してもらう依頼をした。

最高神(とうさん)にって……そんなので良いのですかい、旦那?任せてくだせぇ……そう言えば確か……存在(かげ)の薄い……えぇーむすぅ……いやぁ、お嬢さんが居ませんでしたか?」

「あぁあ?居ねぇよ、ヴェル以外に娘はよぉ。つまらねぇこと聞くな、蜜酒が不味くなるッッ!!!」

「すいやせん!!さぁさぁ吞みなおしやしょう」

 (ジョッキ)に蜜酒を注ぎだすヘパイストスだった。


 俺はヘパイストスに注がれた蜜酒を呷り、家を出ていったかつての馬鹿娘について思い出そうとした。

 第4婦人との間に産まれた娘がロキには居る。……居た。

 メノベェールを産む前に確かに神族との間に産まれた一人の娘が居た。

 彼女はある日、俺の前から消え、家を飛び出した。その日以来、その馬鹿娘とは会えていない。


 俺はメノベェールを彼女の母親の故郷である村に送り出し、一人で畑を耕し小さな村で暮らしている。

 娘にもしものことが起きても死にはしない。

 寂しいのだ。

 寂しさを紛らわす為に、ヘパイストスの自宅兼鍛冶場の工房に見せかけている建物に押しかけている。


 ロキは神界に密入界していた。



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