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島を支配する海賊と不可解な死

 私は船を降り、グルースミルに入国し、ある酒場で情報収集の休憩がてら食事を摂っている。

 近くのテーブルで二人組の男性が樽の形をしたジョッキ片手に酒を呷って赤ら顔をして出来上がっていた。

 昼前から何杯も酒を呷っている彼らだった。

 その内の一人、短い金髪を逆立てている中年男性が酔いながら呂律の怪しい調子で気になる話題を話していた。

「今の時代ィ〜あぷぅっ……最強は誰だと思うよゥ〜うひぃ……けぷぅっ……そりゃ〜ポート・タイノを拠点にしてる海賊の船長《血塗れ》のワフラン・ロアーノだぁ〜〜コラソンんんーー!!!」

「うっせぇ、ダリンダぁ!!軽々しくその名を口にすんな!!!オメェのせいで周りの連中から睨まれてんじゃねぇーか、糞爺ィ!!さっさと酔い醒ませやァ、ゴラァ!!会っただけでも糞ォ漏らしちまうぐれぇやべぇヤツの話題をこんなとこで出すやつがあるかぁ!!何人か吐いてんだろ、うぇー臭ぇ……出禁にされちまったら怨むぞ、オメェ!!」

 確かに周囲で食事や酒を楽しんでいた何人かがテーブルや床に嘔吐して吐瀉物で汚していく。

 酒場から逃げ出す客まで現れた。

「耳許でうっせぇぞ、コラソン〜おっぷっ……うぁひぃ〜なぁんだぁ周りが騒々しいなぁ〜……てめぇりゃあうっへぇじょーッッ!!!」

「オメェのせいで騒いでんだよ、呑んだくれ爺がァァァ!!!」

 ジャッキを離すことなく胸ぐらを掴まれたまま酒を呑み続けるダリンダと呼ばれる中年男性。彼に苦笑する私だった。

「臭ぇよゥ、姫君ぃ〜!さっさと金払って、宿に戻ろうやぁ?」

「ミッシェル、そうしたいけど……あの人に聴くことだけは聴いときたいから待って」

 鼻を摘んで顔の周りを飛び回るミッシェルを制して、壁際に避難してコラソンという青年の怒りが落ち着くまで待つことにした。


 コラソンが吐瀉物で汚れた床にダリンダというお爺さんを投げ付け、ため息を漏らしているところに近づいて行く私。

「あ、あのぅ〜コラソンさん……でしたか、貴方に伺いたいことがあるのですが……宜しいですか?」

「ぁあ〜なんだお嬢ちゃん?まぁ、構わねぇけどよぅ……なんだい、俺に訊きたいことってぇのは?」

「ありがとうございます、コラソンさん。先程ご友人が話していた最強が誰かという——」

「ありゃ友人なんてもんじゃねぇ!そんなもん聴いて、お嬢ちゃんの暮らしになんか影響すんのかい?まぁ話せってぇんなら、聞かせねぇこともねぇがね……」

 コラソンは後頭部を片手で掻きながら話し出した。


 コラソンが言うにはこういうことだった。

 この時代で最強と恐れられる人物は七人で、七人の内三人が海賊で一人は先程聴いた《血塗れ》のワフラン・ロアーノという海賊の船長でポート・タイノという港町を拠点にして破壊活動を行う残忍で冷酷な人物である。舶刀(カットラス)で戦闘にあけくれるとの事。

 残る二人の内、情報を開示してくれた海賊の一人は、モントバース・ミングという海賊で彼も船長との事だった。

 彼は女や賭博、酒に興味を示さず、ある人種だけを殺すことに執着するイカれた海賊との事。彼もワフランと同じくバッカニア族の生まれでトルトゥーガ島を主に拠点とする海賊らしい。


「有難うございました、コラソンさん。これからの旅で役立つ情報をくださり、助かります。あのもうひとつ、最後に聴きたいのですが……《蒼禍(そうか)の忌み()》と呼ばれる人物なんてご存じで——」

「あぁ、大したことな——ひっひぃぃいいぃぃ!!!おぉっお嬢ぅ……ちちぃ、ちゃんっっ!?そんなものぉぅっっ……どどっどこで……あの御方の……使者かおぅっまえ、さんは?でっでもぅっ……めっ滅亡してるはずじゃ……あぁっありえない……しぃっ知らないぃいぃぃ〜〜ッッッ!!!ハァハァ……たぁ……たぁすっ、助けてくれぇ〜〜ッッッ!!——ブハァッッ、ァアァアアッッ!」

 コラソンが《蒼禍の忌み児》と聴いた瞬間に身体を震わし、その場に尻もちをついて怯えだし、要領の得ない言葉を呟いて逃げ出すが、果物を売っていた露店の前に彼が着いたなり多量の血液を吐いて石畳に倒れて息を引き取った。

「アチャー、あの小僧は運が無かったみてぇだ。あの爺さんが特殊なんだよ、これで判ったか姫君?」

 ミッシェルが私の耳許で呟いたのは薄情なものだった。

 ミッシェルが言う爺さんというのは、グルースミルに入国する前に通った森で出逢ったやけに仰々しく接してきたぼろぼろのコートに身体を纏った爺さんのことである。


「殺すつもりじゃなかったのに……」

(あいつ)は結局ゥ下等な生物(もん)だったってわけだ、あははっっ!」

「嗤わないであげて、ミッシェル。ごめんなさい、コラソンさん……行こう」

「姫君、似たようなもんですぜぇ妾と。宿かい?」

「……知ってるんじゃないの、ミッシェル?」


 コラソンの亡き骸に近付くことも触れようともせずに立ち去るトニッシュとミッシェルだった。



※バッカニアはあくまで現実の方です。

あちらの方ではないことをご理解ください。


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