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地に堕ちた暮らし

 四肢を僅かでも動かせば、背後の壁と枷を繋ぐ鎖がジャラジャラと物音をたてる。

 私の両腕の手首と両脚の足首には体温を奪い続ける金属の枷が嵌められている。

 以前の贅沢な生活が恋しい。腹が空けば、腹が満たされるまで食事を摂れた。汗をかいても不快感を感じる前に沸かされた湯が満たされた浴槽に首まで浸かれた。


 陽光を浴びれず、不自由な生活(にちじょう)がこれほどに身体がこたえるとは……

奴隷らはこんな苦痛を味わい、死ぬまいと生きているのか……


 私は、自身が思っていた以上に脆かった。

 僅かな明かりも差しこまれない暗闇に包まれた地下——には私、トニッシュ・アルダニアしかいない。

 見張りの兵もつけずとも逃げ仰せられないことを承知で、娘を暗く陰気な地下牢に幽閉した父を訴えてやりたい。

 訴えるもなにも、父が誰からだろうと訴えを起こされても罪に問われない。

 何故なら、父はアルダニア王国の王——ヴェルッソ・アルダニアそのひとなのだから。


 何日飲まず食わずの生活を強いられているのか、私には分からない。頬はげっそり痩せこけ、四肢は布を絞られたみたいに細くなっているのを暗闇でも感じられた。艶のあった髪はベタついて気持ち悪いものになっていた。髪の色もくすみきっているに違いない。

 上半身を守る麻の生地の衣服は、肌触りからして気に入らない。普段から身に纏っていた肌触りが良い衣服は、剥ぎ取られ裸足だ。

 ザラザラとした石の感触は、私には悍ましいものだ。

 死刑を待つ重罪人か、奴隷のような暮らしを身をもって体験して、シャバに出て太陽の陽射しを浴びたいと願う。



 カツンカツン、と私が収監される地下牢へと階段を下り、近付いてくる足音が聞こえてきた。

 項垂れた頭を上げれず、瞳は足もとを捉える。

 視界の端にぼんやりと揺れ動く淡い明かりを捉え、全身の筋力が衰えているのを実感しながらもぐぐぐっと頭を上げていく私。

 片手で鉄格子を掴み、見窄らしく変わり果てた私を見下ろす深くフードを被ったマントの人物。

「クゥッフフッ、随分と変わりましたね。お美しい顔が、これほどに……た〜あぁああぁぁあぁまりませんなぁ〜!」

「……っ!……ろ、すぅ……っ」






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