第七話「祝福に隠された狂気」
◇ ◆ ◇
あっという間に午前中の授業も終わり、校内は昼休みに突入していた。
僕は須藤さんの様子を伺いながら弁当を食べている。
すると須藤さんのもとに一人の女子が近づいてきた。
水森だ。
「ねぇ! 聞いたよ、心春ー! アイドルになったんだってぇ!?」
案の定、彼女は須藤さんにアイドル合格の話題を振ってきた。
(ここまでは記憶通り──)
いったい水森がどこから情報を得たのか知らないが、そんなことは今どうでもいい。
僕がやらなきゃならないのは、このあと話がおかしな方向へ発展していくのを阻止することだけだ。
「まさか心春がアイドルとはねぇ……! 恐れ入ったわ!」
「え……? あ……。朱音ちゃん……その……あ、ありがと…………」
なんだ、この違和感?
それに──
須藤さんの様子がどこかおかしい。
この二人……親友じゃなかったのか……?
十年前の僕は気づかなかったが……実は須藤さん、水森のことが苦手だったとか……?
「あはは! なぁに? 感謝の言葉もまともに返せないワケぇ? そんなんでアイドルやっていけんの……ねえ?」
「…………え?」
「……っていうかさぁ! 心春がアイドルとか、マジちょーウケるんだけど!」
「そ、そんなにウケるかな?」
須藤さんを……煽ってる?
水森朱音──
こいつ……もしかして須藤さんがアイドルになったことが気に入らないのか?
「ウケるよー! ……ねぇ、みんなぁ!」
「……え?」
次の瞬間。水森の声に反応したクラスメートたちが、つぎつぎと須藤さんの周りに集まってきた。
すでに須藤さんは、十名以上のクラスメートに囲まれている。
「ああ! 須藤、アイドルのオーディションに合格したんだってな!」
「マジすげぇじゃん! がんばれよ!」
「いやぁ。それにしても今朝、水森から聞いたときにはびっくりしたけどな!」
「っていうか、学校どうすんの?」
一瞬にして須藤さんの周辺が賑わいだした。
それに気づいた別のクラスメートたちも、さらに須藤さんのもとへ集まっていく。
(そうだった。このあたりのタイミングで、当時の僕も気付いてこの輪に入っていったのだ。)
須藤さんも顔を強張らせて固まってはいるが、この時点ではまだ大丈夫。何も問題はない。
僕が十年前に体験したときも、確かにこんな感じだった。
(問題は、ここからだ────見極めろ!)




