第二話「後悔と懺悔の記憶」
僕はテレビの電源を切ってから立ち上がると、部屋の窓を開けて外に顔を出した。
そして空を眺めながら、彼女のことを思い出す。
「あの時──。どうして僕は、彼女の味方になってあげられなかったんだろう?」
僕はあの日のことを、ずっと後悔して生きてきた。
この十年間──
ずっと後悔して生きてきたのだ。
人によっては、ほんの些細なことだと笑うかもしれない。
考えすぎだと、あきれかえる人もいるだろう。
もしかしたら、当の本人である彼女ですら忘れていることかもしれない。
それでも僕にとっては、後悔せずにはいられない過去となってしまったのだ。
少なくとも──
あの時の彼女が僕に見せた絶望に満ちたような表情は、今でも忘れることができない。
そしてその記憶が、彼女──
『アイドル秋月ひかげの自殺』という現実に起こってしまった事件とリンクして、僕の中にあった罪悪感がこれまでにないほど大きく膨れ上がっていったのだ。
あの時。彼女はいったいどんな気持ちでいたのだろうと考えると、今でも胸が痛くなる。
過ぎてしまった時間は戻らない。
後悔しても、もはや手遅れなのだ。
すでに過ぎ去ったことに対して、いくら綺麗事を並べたところで、そんなものはただ自分が自己満足するためのエゴでしかない。
そんなことは自分でもよくわかっている。
それでも──
僕は懺悔したかったのだ。
あの時の君に。
あの日。
彼女が傷ついているのではないかと思っていたはずなのに、何も行動できなかった自分の弱さ。
いや──
『行動できなかった』のではない。
『行動しようとしなかった』のだ。
それどころか逆に、彼女を傷つける行為に加担すらしてしまったと思う。
僕は──
我が身可愛さに彼女を見捨てたのだ。
価値観は人によってさまざまである。
あの時の出来事は、関わっていた多くの人間にとって『ただのおふざけ程度のこと』だったのかもしれない。
そのくらいイジメというには微妙なラインの出来事だったようにも思う。
でも僕には、少なくとも彼女が楽しんでいるようには見えなかったのだ。
そして────
あの日を境に彼女の顔から笑顔が消えた。