第十三話「過ちを犯したその果てに」
せっかく信頼を取り戻したと思った須藤さんとクラスメートたちの絆に、再び亀裂が入ってしまった。
「おまえ……いったいどっちの味方だよ!」
「どっちの味方とかじゃない……! 私は────!」
突っかかってきたクラスメートに向かって、須藤さんは想いをぶちまけるかように声を荒げた。
「私は、ただ……みんなに笑っていて欲しかっただけなのにっ…………! 朱音ちゃんにも──!」
そう言って、須藤さんは両手で顔を覆って泣き出してしまった。
ボロボロになった水森が、教室の隅で唇を噛みしめながら、無言で須藤さんの言葉を聞いていた。
その顔からは、後悔の気持ちが見え隠れしているように感じる。
辺りは静まり返り、須藤さんのすすり泣く声だけがわずかに響いていた。
僕は知っている。
須藤さんがアイドルになりたかった理由──。
初めて彼女がアイドルになりたいと言った日に、僕は『なぜアイドルになりたいのか』と彼女に訊ねたのだ。
その時、須藤さんは何の迷いもなく答えた。
『アイドルになって世界中の人たちを笑顔に変えるんだ』と────。
だから僕は、さっき彼女が口にした言葉の意味を誰よりも深く理解しているつもりだ。
そして──
だからこそ僕は、どんなことがあっても彼女の夢を応援してあげたいと思うのだ。
この須藤さんの想いが水森にも届いて欲しい──
そんな想いに駆られてか、僕は思わず彼女へ助け舟を出すことにした。
いくら水森が過ちを犯したとはいえ、まるで公開処刑のような……こんなやり方を見て見ぬふりをするわけにはいかなかったからだ。
何より──
もう僕は、未来で自分の行動に後悔などしたくない。
「なあ──水森。おまえ、何がしたかったんだ?」
「…………っ!」
僕が言葉を発すると、水森は身体を一度びくんと大きく痙攣させ、その顔を強張らせた。
一瞬、僕に責められるとでも思ったのだろう。
僕は慌てて言葉を付け足した。
「何か…………理由があったんじゃないのか?」
だがそれでも、おどおどとした様子で僕の方を確認している水森。
もう周りの人間がすべて敵にしか見えなくなっているのかもしれない。
僕は彼女を怖がらせないように、出来る限り落ち着いた口調で話しかけることを心掛けた。
僕も彼女に信じてもらえるように──。
「何の理由もなく、ただ単に須藤さんを傷つけたかったわけじゃないんだって…………僕も信じたいんだ」
すると突然、僕の言葉を聞いた水森の目から涙があふれ出し、その左頬を一筋の涙が伝って流れ落ちた。
そして次の瞬間、水森は須藤さんと同じように両手で顔を覆って、そのまま泣き崩れてしまったのだ。
「ごめんなさい……! ごめんなさい……!」
そう────
何度も謝罪の言葉を口にして、ただひたすら泣いていた。




