表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/18

第十二話「集団極性化の末路」

 しばらくすると、須藤すどうさんに群がっていたクラスメートの大半が、僕と水森みずもりを囲うようにして集まってきた。

 僕と水森の間に発生していた不穏な空気を察知したのだろう。


 その時だった。

 状況を理解したクラスメートの一人が、まるで汚物を見るような目で水森に罵声を浴びせたのだ。



「水森…………おまえ気持ち悪っ……」

「え……?」



 クラスメートの容赦ない言葉が水森を襲う。

 水森の目は大きく見開かれ、視線は宙を彷徨い、その瞳は小刻みに揺れている。


 すると、この行動に触発されたのか、次々とほかのクラスメートたちも水森を攻撃し始めたのだ。 



「まじで最低だな、水森。……クズすぎ」

「俺らまで巻き込むんじゃねぇよ……このカス!」

「私……。こういうやり方する人、生理的に受け付けないのよねぇ……」



 気づけば、この場にいるほとんどの者が、水森に対して心無い誹謗中傷を浴びせていた。

 まるで水森のすべてを否定するかのように────。



「お……おい、おまえら……⁉ ちょっと、ま───」



 僕がそう言いかけたその時だった。



「……痛っ!?」



 誰かが水森に向かって、黒板消しを投げたのだ。

 黒板消しが当たった水森のこめかみ付近が、チョークの粉で白くなっている。


 それを皮切りに、この場にいた大勢が水森に向かって色々なものを投げつけ始めた。

 ノートや筆記用具、教科書、さらには雑巾まで───



「痛いっ…………痛いっ……!」



 教室の隅に追い詰められ、頭を抱えるようにして、その場で亀のように丸くなる水森。

 だがクラスメートたちの攻撃が、止むことはなかった。

 そこら辺にあるものを手にとり、次々と水森に向かって投げつけていく。



「この性悪クソ女……! 食らえよっ……これが正義の鉄槌だァ!」

「おらぁ! 須藤に謝れよ、こらぁ!」

「そうだ、そうだ! てめぇみてえな救いようのねぇクズは生きてる価値ねぇんだよ!」



 その時だった。



「────やめてっ!」



 須藤さんの言葉だった。

 この一声によって、クラスメートたちによる水森への集中砲火が止んだのだ。


 須藤さんは、その目に大粒の涙をいっぱいためて震えている。



「な……なんだよ? 俺らは須藤のためにやってやったんだろ……?」



 クラスメートの一人が、不満気な顔で須藤さんへ正当性を主張した。

 すると須藤さんは唇を噛みしめ、涙を流しながら答えたのだ。



「私っ……! そんなこと頼んでない……! なんで……なんで、そんなことするの…………?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ