07.ゴブリン VS ミノタウロス
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牛頭の人型モンスター。
――それが今戦っているミノタウロスである。
身長はおよそ3メートル。
当たれば体のいずれかが、切断または潰されそうな巨大な斧を振り回している。
ミノタウロスの上段からの振り下ろし攻撃をギリギリで避け、即座にジャンプする。
ゴブリンの体は人間だった頃よりも、身体能力が高くなっている。
『ゴブリンパワー』のおかげもあるのか、まるでワイヤーでもつけているかのように、軽々と頭の位置まで到達する。そして、金砕棒をお返しとばかりに振り下ろす。
ミノタウロスの頭に金砕棒がめり込み、
鈍い音を出すが、さすがにランクAのモンスターだ。
左手で頭を抑えるだけで、すぐに戦闘態勢をとる。
「はあ、はあ、はあ・・・。」
ランクAがどれだけ強いかわからないが、金砕棒を10回ヒットさせても倒れる気配がない。
シルフィからモンスターの特徴や戦闘方法をレクチャーされながら戦ったが、体の節々が悲鳴をあげている。
体感時間でいえば1時間ほど戦っているだろうか。
実際は十数分程度なのか。わからない。
『心眼』のおかげで、素早いとされる相手の攻撃を見切ることができ、『ゴブリンパワー』のおかげで避けきることができている。
『心眼』や『ゴブリンパワー』、ゴブリンの身体能力が無ければ、出会った瞬間に瞬殺されているだろう。
どうして、こんな凶悪な格上モンスターと戦う羽目になってしまったんだ。
――言い訳はしたくないけど、これ俺のせい・・・だよな?
ほんの10分前にあった出来事を、遠い昔のことのように思い出す。
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ここは【古代樹ダンジョン】世界で最も攻略が難しいといわれている場所らしい。
何階層あるか不明で、今何階にいるかもわからない。
わかっていることといえば、ランクA以上のボスクラスモンスターが大量に出現する、鬼畜ダンジョンとのこと。
シルフィからは
『ここにいるモンスターと戦うな。逃げろ。気づかれるな。』と、凄みをきかせていわれている。
「ソースケ聞いてる?何度も言うけど、絶対にここの敵には勝てないと思ってね。ランクA以上のきちんと自分のスキルを理解し、経験を積んだ猛者が挑んでも奥へ進めないほど、強力なモンスターがうようよしてるんだから、絶対に戦いを挑んだらダメよ!」
「わかってるよ。そう何度も怖がらせなくても、俺はもともと臆病だし自分に自信を持ってない!」
「そんな堂々と言われても・・・。まあ変な自信は無いようね。ゆっくりかつ、早く上につながる階段を見つけてこのダンジョンを抜け出すわよ!」
「了解」
そんな会話をしているとT字路にさしかかる。
まずはモンスターが通路にいないか、慎重に確認しようと通路を覗いたところ・・・。
「ガゴンッ!」
え?
「うわあああああーーーーー!!!!!落ちる、落ちる、落ちてる~!!!!」
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「ドンッ!」
「痛てててて」
どうやら落とし穴のトラップを踏み抜いたようだ。
――ここはどこだ?
小学校の体育館ほどのスペースがあるようだ。
ん?
何か動いたか?
牛?
・・・。
「――ソースケ!早く逃げて!ミノタウロスよ!!」
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あんなトラップ誰もわかんないだろ!
って言い訳しても始まらない。
このままだと殺される!
最初は避けるばかりだったが徐々に慣れ、今では攻撃を避けて一撃入れることができてきている。
何度も攻撃を当てても倒れる気配がしない。
俺が弱いからなのか、相手が格上だからなのか。
まったく勝てる気配がしない。
そう考えていると、ミノタウロスはこちらに向かって走り出し、その巨体ごとタックルしにくる。
ミノタウロスの体が当たる寸前に左横に飛び、避ける。
すぐに起き上がるが、斧を右横からフルスイングする行動予測ができた為、慌てて伏せる。
「ブンッ!」
通りすぎる巨大な斧に、冷や汗をかきながらすぐに体制を整える。
まずはこの巨体に似合わない機動力を削ぎたい。
とくれば・・・足!。
左横から繰り出される斧を、しゃがみ込みで避ける。
斧の振り回しから続けざまに、ミノタウロスが踵を相手の腹に突き出す右後ろ蹴りを繰りだしてくるが、左斜め前に飛び出し避け、軸足となる左足スネに金砕棒を叩きつける。
「ブヴォォォォォォォ!!!!!」
ここにきて初めての手応えだ。
痛さのあまり左スネを抱えしゃがみ込むミノタウロス。
このチャンスは絶対に逃さない。
すぐさまミノタウロスの頭上へ飛び上がり、落下しながら金砕棒を振り落とす。
「ズドンッ!」
さらに攻撃をつなげようとするが、無理やり起き上がり起き上がるミノタウロスに防がれる。
斧をもっていない左手でストレートを放ってくるが、左手の手の甲辺りに金砕棒を合わせてパリィする。
パリィしたことで体制を崩すミノタウロスの左腕を踏みつけ、飛び上がり顔面にドロップキックをおみまいする。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・。」
初めての戦闘。
初めての命のやり取り。
こんなヒリヒリすることは今までなかった。
アドレナリンがドバドバ出てる気がする。
どれくらいの時間戦っているのだろうか。
おそらくだが、あと数分で『心眼』が使えなくなりそうだ。
スキルが持続使用できないのは『心眼』のレベルがまだ1だからなのか?
『心眼』が使えていなければ、こいつの攻撃を避けられず殺されるだろう。
どうすれば・・・。
どうすればいい・・・。
こんなことは学校や池田部長からも教えてもらってないぞ。
――そんな余計なことは考えるな。
少しの隙が命取りになる。
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