05.古代樹ダンジョンと宝箱
この状況を受け止められるのは、ブラック企業で散々、理不尽なことを言われ慣れてきたせいか。
あんな経験でも、少しは役に立ってんだな。
池田部長にはお礼はしたくないがな。
「ソースケ。私のことはシルフィさんじゃなくシルフィって呼んで。訳があって封印されちゃって、今はできないことが多いけど、基本的にこの私にわからないことは無いのである!」
だから、体の割に大きな胸を
いちいち突き出してエッヘンじゃないんだよ――。
2回もそのノリはいらない。
真面目に答えてほしい。
それに封印されるってよほどのことだろ。
何があったのか聞き出したい。
「ソースケ。細かいことは追々説明するわ。
まずはここにあるもう1つの宝箱をあけるわよ」
「おっと忘れるところだった。ところでシルフィ。
この宝箱、開けた瞬間に食べられないよな?」
「どこの漫画で読んだのよ。そんな古い仕掛け。第一、世界で最も攻略が難しいといわれてるこの『古代樹ダンジョン』にそんなちゃっちい罠なんか無いわよ」
「『古代樹ダンジョン』?ここはカプセルホテルの中じゃないのか?」
「本来人間は元居た場所で目が覚める予定だったんだけど、ソースケは何らかの不具合で『古代樹ダンジョン』に、それもゴブリンの姿になってしまったようね」
いやいやいや。おかしすぎるだろ。いろいろ間違ってる。それに、世界で最も攻略が難しいってことは強いモンスターたちが、うようよいるんじゃないのか?!
極真空手やボクシングの経験はある。ただ、殺し合いにどこまで通用するのか疑問だ。そもそも格闘技がモンスターに通用するのか?
疑問だらけだが、とりあえず責任者探して一発殴りたい気分だ。
「ウダウダ言っててもしょうがない。まずは宝箱をあけよう!」
最初とはうってかわって、宝箱を躊躇なく開ける。
「ギイイイ・・・」
宝箱の中には、野球ボールサイズの黒い玉が置いてある。
恐る恐る持ち上げようとすると・・・。
「消えた?」
「消えたんじゃないわよ。私のスキルが関係してるけど今はいいわ。ステータス画面を見てみて。」
言われた通りステータス画面を見てみると
『スキルオーブ(黒)』と表示されている。
「スキルオーブ(黒)が入ってたのね。これは期待できるわよ~。スキルオーブは白・金・黒と色があって白は★1~★2、金は★3~★4、黒は★5かユニークスキルが入っているの。だ・か・ら、このスキルオーブは相当ラッキーよ。さっそく使ってみて。ガチャみたく運だけど、黒のスキルオーブに外れは絶対ないの。」
どれだけすごいことかイマイチわからないが、ステータス画面に触れる。
「スキルオーブ(黒)を使用しますか? Yes/No」
もちろんYesにタッチ。
すると突然ステータス画面が輝きだす。
「うおっまぶしい!」
目が開けられないほどの光が収まると画面に変化が。
◆――――――――――――◆
名前 :ゴブリンX
ランク :G
装備 :使い古した服★1
New! シルフィの指輪★5
スキル :『心眼』Lv1 ユニークスキル
『パリィ』★5 Lv1
New!『ゴブリンパワー』Lv1種族特有スキル
加護 :―
ポイント:0
◆――――――――――――◆
『ゴブリンパワー』という、いかにもハズレなスキル名に不安を抱きながら画面をタッチする。
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『ゴブリンパワー』
種族特有スキル。体が疲れづらく、ケガの治りが早くなる。1日2時間程度の睡眠で活動可能。
戦闘スタイルによって、スキル進化時の能力が変動する。
――――――――――――
「まさか『ゴブリンパワー』を当てるなんてね。ソースケ喜んでいいわよ。種族特有スキルは世界最強を目指すうえで欠かせないスキルの1つ。現時点ではさほど強力ではなくても、スキルが進化した時は相当強いスキルになるはずよ。こんなに良いスキルを引き当てるなんて――。よっぽど前の世界で苦行を積んだのね(涙)」
・・・なんか勝手に同情されている。
「まあ良いスキルだけど、ソースケの行動次第では、使えないスキルになる可能性もあるから、ミッチリ鍛えるわよ~。おっと。忘れるところだった。ソースケのステータス画面を常時管理するから、リンク設定をお願いできる?」
どうやらシルフィが封印されていた、この『指輪』をステータス画面に重ねるようにすると、シルフィが自由にステータス画面の情報を確認・操作できるようになるようだ。
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