45.龍王の大洞窟―『最深部』―
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『神秘の聖水』を使うと身体が光輝く。
光が収まると、その人は話始める。
「はあ~~・・・。生まれ変わったようだわ・・・。見て・・・あたしの肌。赤ちゃんみたいにもちもちよ。心も体も清々しいわ。やっぱり見た目からよね。ゴブリン、いやソースケ。ありがとう」
先ほどと打って変わって優しい話し方になり、拍子抜けする。
名前を言った覚えはないが、急に上機嫌になった目の前のオカマ?さんは満面の笑みでこちらを見つめてくる。
「いえいえ。喜んでもらえたようで良かったです」
「あたしはね。これでもドラゴン界隈じゃ義理堅さで有名なの。あたしにできることは何でも協力するから何でも言ってちょうだい!今日からあたし達はマブだちよ。あたしのことはヴリちゃんとか、ヴーちゃんって呼んで」
・・・
「や、やっぱり・・・!!」
横を見るとシルフィが青ざめた顔で口を押えている。
「やっぱりって、何がやっぱり何だ?!」
「こいtu・・・いや目の前にいるこの人こそ3帝の『龍王ヴリトラ』よ・・・」
衝撃の事実に、ヒカリちゃんと俺は揃って声を上げる。
「「えええーーーーーーーーー!!」」
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『龍王ヴリトラ』はもっと厳かで無口な4つ足のドラゴンをイメージしていたが・・・。
目の前で喋り続けるこのオカマが・・・。まさか3帝の『龍王ヴリトラ』だとは思っても見なかった。
「ということは、ここが洞窟最深部なのか?!」
そうシルフィに話しかけたつもりが、ヴーちゃんことヴリトラが返事をしてくる。
「そうよソーちゃん。見たところあなた達相当疲れているようだし、マブダチなんだから何百年でも泊まっていきなさいね。自分の家だと思ってくつろいでちょうだい」
いやいや、龍王基準で考えられても・・・。それにソーちゃんって十中八九、俺のことだよな・・・。
無言のままシルフィとヒカリちゃんを見る。
目が合うが2人とも早く返事をしなさいと言わんばかりの強烈な目力で返してくる。
「あ、ありがとうございます。ヴリトラ様・・・」
「やーね!そんな堅苦しく話さないで!私のことはヴーちゃんよ!それに次敬語使ったら、デコピンしちゃうからね~。あはは」
「あ、あはは・・・」
乾いた笑いをしながら、背筋が凍る。ふざけてでもデコピン何てくらった日には即死決定だ。
全力の『ファイナルブリッド』で対抗しても、滲み出るオーラから負ける気しかしない・・・。
龍王ヴリトラとの会話は生死をかけた戦いのように、1つのミスもできない。そう考え、背中や額に汗をかきながら会話を続ける。
「ソーちゃん。御礼と言ったらなんだけど、外の連中が欲しがっている宝箱欲しい?あたしには何の価値はないから、『神秘の聖水』の御礼に好きなだけ持っていきなさいよ」
「本当にいいんで・・・いいのか?!!」
「オカマに二言はないわよ。ソーちゃんは分かってないみたいだけど、『神秘の聖水』は私にとっては宝箱だけじゃ釣り合わないくらい貴重なアイテムなんだから、他にも欲しいものがあれば持って行っていいわよ。もちろんヒカリとシルフィも好きにしなさいね」
ヴリトラが別人のように優しい・・・。
「あたしはちょっと、古くからの友達と約束があるから一度ここを離れるわよ。私はいないけど気にせずゆっくり見て行ってちょうだいね。宝石や金銀、武器はあたしのコレクションだから、宝箱とかそこら辺に落ちてるスキルオーブだけね~」
そう言うと、人型から4足歩行のドラゴンに変身し、空を飛ぶとあっという間にこの空間からいなくなってしまった。
***
「ソースケ。こんなチャンス滅多にないことよ。ヴーちゃんの機嫌が変わらないうちにもらえるだけもらっておきましょう」
「そうだな・・・。そうしよう」
「ソースケさん。私も貰って本当にいいんでしょうか・・・」
「ヒカリちゃんも大丈夫だって言ってるし、好きなだけ貰っちゃおう!」
そう言うと改めて辺りを見渡す。
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