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16.戦闘訓練と成長




***









「――『ハイヒール』!さすがに疲れたわね・・・」




戦いに戦いを重ね、本日何十回目かのハイヒールで回復してもらう。




四方を敵に囲まれた後も何十体、もしかすると50体以上、戦闘しているかもしれないが、とにかく連戦でヘトヘトだ。




シルフィのおかげで身体的な疲労感は無いが、精神的にこれ以上戦えない。




ここデカント大平原は広大な土地と豊富な恵み(えさ)がある為、様々な種類のモンスターがいるという。




特に中級者向けの『E~D』ランクが多く、今の俺にはうってつけの場所らしい。




冷たく少し湿った芝生に座り込み、両手を後ろにつく。空を見上げながら、荒れた息を整えステータス画面を確認する。






◆――――――――――――◆

名前  :ゴブリンX

ランク :E

装備  :使い古した服★1

     シルフィの指輪★5

     金砕棒★4

     呪いのネックレス★5


スキル :『心眼』Lv2 ユニークスキル

     『パリィ』★5 Lv3

     『ゴブリンパワー』Lv2 種族特有スキル

     『瞬歩』★5 Lv1


加護  :下剋上


ポイント:1,280

◆――――――――――――◆




Eランクモンスターや途中Cランクのヘルウルフという強敵とも戦った。




これだけたくさんの戦闘をしても300ちょっとのポイントか。




――『非』戦闘向きのスキルや身体能力だと、その日の食料確保もままならないな。




「ところでシルフィ。おそらく、かれこれ8時間くらい戦ってもうすぐ明け方だけど、あんまり眠くならないんだ。『ハイヒール』って眠気も無くすのか?」




「それは『ハイヒール』とは関係ないわ。おそらくソースケがゴブリンだからよ。その上ソースケは『ゴブリンパワー』のおかげで、1日2時間くらい寝るだけで活動できるはずよ」




なるほど。前の世界にこそ欲しかった身体だ。




ブラック企業には持ってこいの完全体。いや社畜体だ。




「それと常に『心眼』や『ゴブリンパワー』を使ってるけど、スキルレベルがあがる気配がないんだが、レベルが上がる条件ってあるのか?『パリィ』は徐々にレベルがあがってるんだが」




「前にも説明したけど、ユニークスキルと種族特有スキルは強力なスキルなのよ。そんなに簡単にレベルが上がらないわ。ただ自分よりも格上の相手と戦い続ければ、戦闘数は少なくてもレベルがあがるかもしれないわね」




「そんなにうまくはいかないか。『心眼』も『ゴブリンパワー』も強いスキルだもんな。『心眼』は相手の動きが極端に遅く見える上に攻撃軌道や弱点もわかる。『ゴブリンパワー』は人間の時よりも身体能力が高いゴブリンの身体を、さらに攻撃力・防御力・スピードが普段の2倍ほどは上昇している感覚だ」




「確かに優秀なスキルだけど、それを扱うソースケが良いセンスしていると思うわ。そこに見た目良し!頭脳良し!性格良し!の三拍子揃ったシルフィ様がいるんだから、将来安泰だね」


「そうだな・・・口はうるさいけど、優秀なサポートをしてくれるシルフィがいてくれるから、何も心配せず戦闘に集中できるよ」




「口うるさいは余計よ!ふんッ。」




口先では怒っているようだが、そっぽを向くその顔はどこか嬉しそうで耳は真っ赤だ。




こういう可愛いところがあるのが面白い。




「それにシルフィはこの世界のことを何でも知っていて博識だし、笑うととっても可愛いから一緒にいると気持ちが楽になる。本当に感謝しているよ。ありがとうな」




「――べ、別にそんなの当たり前なんだから。わざわざ言わなくてもいいんだからっ!!!もうっ!」




口からでる言葉と、嬉しそうで真っ赤な顔が、相反していて面白い。




白い肌をしている為、余計に赤い顔が目立つ。




恥ずかしさを紛らわせる為か、ほっぺたを膨らませている。




――かと思えば俺の胸まで来て、胸のあたりをポコポコと殴っている。




この世界に変わってから、信じられないことがたくさんあって、1人だったらすぐに心が折れていただろう。




こうやって笑いながら心が落ち着いているのは、シルフィのおかげだ。だからさっき言った言葉も本音なんだ。



――けどこれ以上言うと、恥ずかしさのあまりどこかに行ってしまいそうだから、辞めておこう。




ありがとうなシルフィ。これからもよろしくな。そう心の中でつぶやき、立ち上がる。




今日は戦いすぎて疲れた。シルフィもなんだかんだ、スキルをたくさん使いすぎて疲れていそうだ。




城下町からデカント大平原まで来たが、ここから戻るまでだいぶ遠そうだ・・・。




俺たちは城下町『ダイバー』から遠く離れ、巨山の(ふもと)に広がる森と、デカント大平原の境目近くまで来ていた。




「ここから戻るのは大変だけど、頑張って城下町へ戻ろうシルフィ」




そう元気よくシルフィに声をかけ城下町へ戻ろうとした時。巨山麓の森方面から、異様な雰囲気を感じ取り振り返る。







「ソースケ!戦闘準備よ!!」




見ると森側からヘルウルフが30体ほど、こちら側へ走って向かってくる!




ヘルウルフは普段は巨山の(ふもと)の森に生息している。




非常に戦闘力が高いが群れるのを嫌い、1匹ずつでしか戦闘にならない。




戦闘では、二足歩行で短剣2つを巧みに操り、その俊敏な動きも相まって『森の殺し屋』といわれるほどだ。




ヘルウルフとは1度だけ戦ったが、鎧のような硬さの毛、スピード、鋭い攻撃にだいぶ苦戦した。




ブラックタイガーは1発で倒せたが、ヘルウルフには金砕棒を何度か叩き込んで(ようや)く倒せた。




そのヘルウルフが30体。しかも四足歩行で走っている。




どこか、何かを恐れているかのような表情をしている。




あっけにとられ、戦うか逃げるか迷っていると、急にその場に止まるヘルウルフ達。




――どうしたんだ。まさか俺の強さにビビってるのか。いや、そんなはずはない。さすがに30体の群れを相手に戦えば死ぬだろう。




だが俺を見て恐怖の表情を浮かべている。




よし、ここは大声を出して威嚇してやろう。









戦わずに森へ帰してやる。










大きく息を吸い込み大声をあげる。




















「ガルルルルルルルル!!!!!!」



















そう。ガルルルルルルルル!って












――え?!










突然背後から凄まじい声が響く。








いつの間に後ろに??!









声の勢いに押され、前のめりに倒れ両手を地面につく。















――恐るおそる首だけ後ろを向ける。




で、でかい・・・。黒い虎だ。

ブラックタイガーの5倍は大きい。




それになんだこの圧倒的な強者感は。見ただけでわかる強さ。




こいつから発せられる威圧のせいか身体が重い。

重力が2倍になったようだ。




動きたくても身体が思うように動かない・・・。




















――動けずにいると、そいつはゆっくりと近づいてくる。







逃げなきゃ殺される。








急に脈動をうつ心臓。










ドクドクドク!!!














いま動かなきゃ死ぬ!















継続的に小説を書く原動力になるので

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