15.戦闘訓練×デカント大平原②
――ふと左前方を見ると、3体の4足歩行の黒い虎がこちらの様子をうかがっている。
シルフィによるとあいつらは見た目通り『ブラックタイガー』というらしい。
素早く鋭利な攻撃と連携攻撃がやっかいな敵だという。ランクはワーウルフよりも上のDの為、要注意だ。
Eランクよりも上のDランクの敵が3体同時か。
――『できるか、できないか』じゃない。『やるか、死ぬか』だ。
『下剋上』の効果なのか、先ほどよりも身体が軽くなっている。
加えてシルフィが『スロウ』のスキルをかけたことで、相手の動きも遅くなっているようだ。
目の前にいるブラックタイガーが正面から飛び掛かってくる。同時に残りの2匹も左右から時間差で向かってくる。
『スロウ』がかかっている上に『心眼』を使用している為、3匹によるほぼ同時攻撃にも冷静に対応できる。
まずは正面からだ。赤く光る眉間に上段から金砕棒を振り下ろしタイミングよく叩き込み一撃で瞬殺する。
続いて若干早く飛び掛かってきた左側の敵の鼻下に、左足による前蹴りを当てる。前蹴りによって後方に飛んだ敵を横目に、右側からきたブラックタイガーの右前足による切り裂き攻撃を金砕棒でパリィする。
パリィしたことでブラックタイガーが体勢を崩す。その隙だらけの胴体に向かって、右斜め上から金砕棒を叩き込む。だが一撃では死なず、俺から距離を取る為、後ろへ下がって威嚇している。
急所攻撃でないと、1発で倒すことができないようだ。
グルルルルと声を出しながら様子をみる2匹。
今度はこちら側から仕掛ける。前蹴りを当てた虎に向かって駆け出す。
『下剋上』や『ゴブリンパワー』によって身体能力が上がっている為か、ブラックタイガーも反応が遅れる。
驚愕の表情を浮かべ逃げ出そうとしているブラックタイガーの眉間へ右ストレートを叩き込み、光の粒に変える。
その場から動けないでいるもう1匹にすぐさま向き直し、一足飛びで金砕棒を眉間に振り下ろす。
「――ふう。ブラックタイガーがどれくらい強いかわからないが、前の世界じゃ虎なんて殺せやしなかっただろうから、少しは強いのか俺は」
「そうね。ソースケは今はまだヒヨッコだけど、この最高に美しくてかわいい女神シルフィちゃんとタッグを組んでるんだから、あと10年も修行すれば『3帝』に傷をつけられるくらい強くなれる可能性があるわよ」
「傷をつけるくらい簡単じゃないのか?それに『3帝』ってなんだ?」
「そっかそっか。この世界では子どもでも知ってることだけど、わからないわよね。『3帝』というのは、この世界の中で最強の3匹と言われるモンスターのことよ。
具体的には、
『龍王ヴリトラ』
『神威の黒虎ゾイド』
『無尽のロビンフッド』
のこと。
3匹ともこの世界でもっとも強いブラックランクに位置するの。たった1匹で、国さえ滅ぼされるほどの圧倒的な力を持っているのよ。今のソースケだと瞬殺されるわ。」
「俺は10年修行しても『3帝』に傷をつけられるくらいしか成長しないのか・・・?」
「何たいしたこと無さそうに言ってるのよ。傲慢もいいところよ!この世で3帝に傷をつけられる人間、獣人、魔人はほんの一握りだけよ。そこに仲間入りできれば、ランクはシルバーランクくらいになってるわよ」
シルフィがギャーギャー騒いでいると、多くのモンスターが四方から寄ってきている。
前方からは体長およそ5メートルはありそうな『グリズリー』、向かって左からは『ブラックタイガー』、右側からは『ワーウルフ』後ろからは二足歩行の豚『オーク』が3体ほど待ち構えている。
次から次へとモンスターが湧いてくる。普通なら絶対絶命のピンチだ。この世界になるまでの俺では考えられないが、絶望的なこの状況が楽しい。たまらない。
あいにくこいつらを一掃できるスキルはない。
1体1体楽しませてもらう。
いくぞっ!
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