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14.戦闘訓練×デカント大平原







――城下町『ダイバー』で身支度を整えてから5時間後。俺たちは戦闘訓練を目的にデカント大平原へ戻ってきていた。




すでに陽が沈んでいて、満点の星空が見える。




今は城下町から遠く離れた位置まで来ており、小さくみえる城下町は月と松明によって照らし出され、昼とは違った様相をしている。




日本の新宿で暮らしていた俺は、久しく見る星々に目を奪われていた。




昼とはうってかわって夜は暗い為、月と星の光を頼りに走ること10分。




ようやくモンスターのお出ましだ。二足歩行の狼が1体、棍棒を片手にこちらに走ってくる。




「シルフィ!あの狼はどれくらい強いんだ?」




「あれはワーウルフよ。1体の強さはEランク。ソースケなら問題なく倒せるわ。ただ普段は群れているみたいだから、仲間を呼ばれないように気をつけて!」

















ミノタウロスとの戦闘では何十発攻撃しても倒せなかった――。













――果たして俺はどれほど強いのか。











死の危険があるはずなのに、心のどこかで楽しんでいる自分がいる。ゴブリンになっているからなのか。




これがゴブリンの血によるものなのか。今はどうでもいい。




とにかく少しでも多く戦闘経験を積んで強くなる!




ワーウルフは強靭な脚力で一気にこちらに近づいてくる。だが『心眼』を使うと相手の動きが非常にゆっくりに感じる。




速度がゆっくりなことに加え、攻撃軌道が表示される。左斜め上段からの振り下ろしだ。




相手の攻撃に飛び込むように、左斜め前のスペースへ移動。攻撃をすれすれで避け、真っ赤に光っているワーウルフの鼻目掛けてすれ違いざまに金砕棒を叩き込む!












――すると、たった1発で光の粒になり消えてしまった。














「え?」












「・・・問題なく倒せるとは言ったけど、まさか1発で倒すなんてね。スキル抜きにしてもソースケはなかなかセンスの良い動きができてるわよ。元の世界での格闘技経験と、ゴブリンの身体能力があるからかもね」




「・・・このゴブリンの身体と、スキルのおかげだと思う。Eランクがどれくらい強いかわからないが、まだまだできると思う――」




「いくらEランクだからといって、ここまでできる人は稀よ。それに『心眼』と『ゴブリンパワー』は、私が知る限り戦闘スキルの中でトップクラスに優秀なスキルなの。『覚醒』すればさらに強力なスキルになるから、これから楽しみね♪」




褒められたことなんて、ここ数年。下手したら10年以上なかったかもしれない。




ほとんど毎日罵倒されたり、バカにされたりしていた。




その為なのか、とても嬉しく照れくさく『俺なんてセンスないよ』と否定したくなる。




まだたった2回だが、戦闘を通して自分の強さを実感し、感じたことのない高揚感、充足感、そして自信を得ている。




もちろん、一方で怖さや不安もあるが、それを忘れさせるくらい楽しんでいる自分がいる。




元の世界では、俺でなくても、誰でもできる仕事を繰り返す中で、生きる意味を考えたこともあった。




だけどこの世界では違う。ステータス画面で自分の成長が感じられる。戦闘を通して得るポイントで生活をしていくこともできる。生きていることが楽しいと思える。




――そして何より、俺を認めてくれるシルフィがいる。




さすがにゴブリンになったことには驚いたが、こうなって良かったのかもしれない。




元の世界にいたままでは、スキルを手に入れても結局俺は変わることはできていなかったのかもしれない。




あの環境に縛られ、自己肯定感が低いまま悩み続けて人生が終わっていたかもしれない。




この世界の神が世界をつなげてくれたおかげで。何かの間違いでゴブリンになったおかげで。シルフィと出会えたおかげで俺は本当の意味で変わることができるかもしれない。




「――シルフィ。ありがとう」




「――?。ソースケ何か言った?」




「いや・・・何でもない」




「訓練はまだ始まったばかりよ。もっと戦闘訓練を積めばまだまだ強くなれるから、こんなもんで満足しちゃだめよ」




「そうだな。これからサポートよろしく頼む。――さっそくだがシルフィ。悪いが『ハイヒール』で回復してくれないか?1回しか戦闘してないが身体がヘトヘトで」




「あいあいさー!」




警察の敬礼のような仕草をしながら『ハイヒール』をかけてくれる。




「スキルを使っていると、疲労感が半端ないな。皆これに耐えながら戦ってるのか?」




「ソースケが使ってる『心眼』や『ゴブリンパワー』は、非常に希少で有能なスキルなの。強力なスキルほど使えなくなるのが早くなるのよ。まあ使いすぎても死にはしないから安心しなさい」




「ちなみに使いすぎると、どうなるんだ?」




「単純にスキルが使えなくなるだけよ。それと極大の疲労感で動けなくなるわ。ちなみにスキルは使う時間と戦闘経験に比例して、Lvがあがるの。Lvがあがるほど、強く長く維持できるようになるのよ。普通ならユニークスキルや種族特有スキルのLvを1つあげるだけでも、気が遠くなるほどの時間と、たくさんの戦闘経験を積まないといけないんだけどね」




「なるほど・・・。早く強くなるにしても時間と休憩が必要ってことか」




「ふふふ。『普通は』ね♪この私のスキルを忘れたの?ソースケくん。『ハイヒール』をかけた後、身体の疲労感はどうなったかわかるでしょ?」




満面の笑みを浮かべながらどや顔で聞いてくるシルフィ。




「確かに疲労感が無くなっている。これってもしかしてエンドレスに修行できるってこと?」




「ふふふふふ~♪」




「チートじゃねえか!!」




例のごとく、身体の割に大きな胸を突き出し、腰に両手を添え、どや顔で俺の言葉を待っている。




つけあがるのが目に見えてる為、このまま何も言わずに待ってやろうかと思ったが、10秒ほどたっても目をつぶったまま偉そうにしているので、折れてやった。




「サ、サスガ超絶優秀、美麗ナ妖精様ダ・・・(棒)」




「フフフフフ~♪わかればよろしい。いくらでもスキルを使っちゃいなさい。私のスキル使用限度は相当数あるから安心しなさい!」




よしよしいい子だ。





そろそろおとなしくなろうな。




優しく頭を撫でると気持ちよさそうに目を瞑り、優しい笑顔になる。




元の世界で飼っていた柴犬を思い出したことは内緒だ――。




「さて、優秀な女神様がついてくれていることだし、このあたりのモンスター全部狩っちゃいますか!」















***






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